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宝物の彼女  作者: 近江 由
手を取り合う
16/135

陰謀の足音

 

 騎士団団長の部屋では、書類仕事をしているジンと、その少し離れた向かいで明らか手持無沙汰にしているヒロキがいた。

 もちろん書類仕事をしているジンは包帯を取っている。


「団長指名だったんじゃないですか?」

 ヒロキは眉を顰めて文句を言いたげにしていた。


「精鋭なら大丈夫だろう。…アレックスとサンズが居ればな。あの二人は若い奴と違って戦場で隣国の者と競り合ったことのある奴だ。」

 ジンは持っていたペンを持ち上げて、意味ありげに笑った。


「内容は聞いているんですか?」


「お宝様の一族が何やら訴えたいことがあると言っていた。それしか聞いていないが、一族が絡むことは、他国も絡んでくる可能性がある。どこの国も鑑目は欲しいのだろうな。」

 ジンはペンをヒロキに向けた。


「訴えたいことですか。一週間後の儀式を知ったのですかね。」


「元々王家に非協力的だからな。もうすぐ次のお宝様が選ばれて王城に連れて行かれる。今のお宝様が嫁いでからだがな。」

 ジンはペンでヒロキに手招きをした。


「王族の力が弱まっている。俺に泣きついて来るくらいだからな。」

 ジンは皮肉気に笑った。


「お宝様の血を王家に取り入れているのだから、王家は強く出てもいいと思いますがね。」

 ヒロキは諦めたような顔をして、ジンが仕事をしている机に寄った。


「なんの因果かわからないが、王家の血と混じると鑑目は消える。王族にこれ以上力を持つなという作用なのかわからないがな。普通の男との間なら鑑目はでるのにな。」

 ジンは歯ぎしりしながら歪んだ笑みを浮かべた。


「それでもあんたに泣きついて来るほど、王族は力を弱まっているのですか。時間稼ぎに俺の剣舞をねじ込むほどの発言力と権限をあんたが持つほどにか。」

 ヒロキは机に手を置いた。


「それは俺が見たいからだ。それではなく、警備についても口を出せるほどだ。今回俺を王都から出そうとしなかったのは、王族ではなく別勢力だ。俺が王族とつるんで何かしないか目を離さないためだ。」


「あー嫌だ嫌だ。汚いですね。そんな政治の駆け引きに使われる若者が可哀そうですよ。だいたい、あんたは人前じゃあ包帯を巻いているから見えないですよね。」


「今日のように練習を見ている。安心しろ。お前の剣舞は間違いなく人目を惹く。可哀そうな若者を助けるのに役に立つ。」

 ジンは頬杖をして、ヒロキを見た。


「…可哀そうな若者ね…それには、あんたも入っているんじゃないですか?」

 ヒロキはジンを憐れむように見た。


「はは…」

 ジンは笑って


 ダン

 机を叩き、ヒロキの顎と頬を掴んだ。


「…」

 ヒロキは驚く様子も見せず、掴まれたまま抵抗もしなかった。


「お前のその口はたまに疎ましいな。」

 ジンは歯ぎしりをしてヒロキを睨んだ。


「本当のことを言われているからじゃないですか?」


「その憐れむ様な目も、疎ましい口も憎らしいほど美しい。…お前じゃなければこの場で殺している。」

 ジンは掴んだヒロキの顔をそのまま力ずくで自分の方に引き寄せた。


「ちょっと、首抜けます。」

 流石にヒロキは焦って、間に置いている机に乗り上げた。


「お前が心配している部下たちは大丈夫だ。俺が認めた精鋭たちだ。」

 ジンはヒロキを宥めるように言った。


「急に何ですか?」


「お前は俺が危険な任務にあいつらを向かわせてしまったと考えているかもしれないがな、あの精鋭は俺が純粋に強さで選んで集めた。」

 ジンは不敵に笑った。


「純粋にね…それでライガが入るのは、何か思いがあってですか?」

 ヒロキは責めるような目をジンに向けた。


「部下を分かっていないのはお前の方だ。ライガは強い。俺が強さを考えずにいれたのはお前だけだ。」

 今度はジンがヒロキを責めるよう目を向けた。


「じゃあ、因縁ですかね…」

 ヒロキはまた、ジンに憐れむ様な目を向けた。


「今更何も言わん。ただ、お前は俺を裏切らなければいい。」

 ジンは諦めたようにヒロキの視線を受けて溜息をついた。


「裏切りませんよ。」

 ヒロキは机の上に安定した姿勢で座り直した。


「行儀が悪いな。」

 ジンはヒロキの様子を見ておかしそうに笑った。




 

 ライガはとにかくお宝様と同じ一族の男達をアレックスが戦っているところから離そうとした。


「あの…帝国騎士の方ですか?」

 一族の男の一人が訊いていた。


「はい。安全なところに送ります。」

 ライガは男の腕を掴んで、詰め所の方に向かおうとした。


 ヒュッ


 という何かが振り下ろされる前の音が聞こえて、男を地面に押し付けて剣を抜いた。


 ガキィィィン


 剣と剣がぶつかった。


「…お前…」

 ライガに剣を振り下ろしたのは、案内をしてくれた騎士だった。


「思ったより強いな…」

 騎士はライガに歪んだ笑みを向けていた。


「まさか、お前が情報を他国に…」


「さあ?」

 騎士は意味ありげに笑った。


「何者だ?…」

 ライガは騎士と距離を置いて、一族の男達の状況を横目で確認していた。


 精鋭であるライガと張るような剣筋だった。

 この実力なら名が知れていると思ったが、目の前の騎士をライガは知らなかった。


 アレックスやサンズも反応していなかった。


「…帝国騎士団じゃない。」

 ライガは目の前の騎士だと思っていた男に向けて剣を構えた。


「隣国の話は知っているか?」

 騎士だった男は今まで見せていた弱気そうな顔ではなく、歯を見せて自信のある表情をした。


「…皇国か。」

 ライガは教育されて知っている程度の隣国を思い浮かべた。


「そうだ。皇国軍の「アシ」だ。」

 そう名乗った騎士だった男、アシは、窮屈そうに鎧を脱ぎ、向こうでアレックスと戦っている者と同じような服装になった。

 アシは褐色の肌をしており、暗闇の中だとグレーの目がギラギラと光って映える。

 大きい目と大きい鼻だが、なだらかな顔の造りをしている。


「…何の用でここに…」

 ライガが質問すると

 アシはすぐにライガに向かって行った。


「答えはお前の横にいるだろ?」

 アシはライガの横らへんにいるお宝様の一族を指した。


 キイン


 ライガはアシの振り下ろした剣を思いっきり弾き飛ばした。


 どうやら大きな剣は使い慣れていないようで、弾かれるとすぐに懐から小刀を取り出した。

 剣を弾かれても動揺せずに直ぐに向かってくるところからかなり戦い慣れしている。


「何で俺らを呼んだ?」


「不穏分子を取り去る。儀式の時に守りに着くのは精鋭でない方がいい。」

 アシはライガに小刀を向けた。


「儀式?…婚礼のことか。」

 ライガはミラの婚礼のことを思い浮かべて胸が締め付けられる思いになった。


「違う。その前にあるだろ?」


「え?」


「王家もお宝様も出てくるチャンスを騎士が把握していないだと?」

 アシは信じられないことのように言った。


「だから何だ?」

 ライガは何やら胸騒ぎがした。




「ライガ!!」

 マルコムの声が響いた。

 そして、彼の扱う槍がアシのいた場所に飛んできた。


 アシは咄嗟に避けた。


 マルコムは投げた槍を気にする様子も無く、もう一本持っている槍を構えた。


「こいつ。皇国の人間だったんだね。」

 マルコムは鋭い目をアシに向けていた。


「距離のある武器使いか…」

 アシは厄介そうな目をマルコムに向けた。


 マルコムはライガの前に手を差し出した。

「俺がやる。相性は俺の方がいいからね。」

 マルコムはライガにそれだけ言うとアシに向かって行った。


 アシはマルコムの懐に潜り込もうとした。

 マルコムは右手と足で安定させて槍を振り回し、左手で懐を守った。


「こいつ。」

 アシは懐に潜り込めないと察するとすぐに槍の届かない距離まで離れようとした。


「皇国のコソ泥が。」

 マルコムは足で槍を弾いて浮かせて、槍を両手で持ってアシに向かった。


 マルコムは槍使いだ。

 彼は、身長はそこまで高くない。

 というよりかは、筋肉をつけすぎたせいでもう伸びないらしいのだ。

 小柄だが、決して細身ではなく、槍を二本扱え、両足も器用に使える。

 腕相撲がサンズと張るほどの力を持っている。


 アシが弱いわけではなく、中距離を取れるマルコムの戦い方と相性がすごく悪いのだ。


 防戦一方になったアシがアレックスと戦っている者たちの方を見た。


「うおりゃあ!!」

 気が付いたらアレックスの横にはサンズが並んでいた。


「遅いぞ。」


「すまんな。アレックス先輩。」

 サンズは嫌味のようにアレックスに言った。


「くそ…こんなはずじゃ…」

 アシは戦っている仲間を見た。



「ライガ!!こっち!!」

 ミヤビがライガを詰め所の方に呼んでいる。


「わかった。」

 ライガは一族の男達を連れて詰め所に向かった。



ライガ:

帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。


ミラ:

「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガとは相思相愛。


ジン:

帝国騎士団団長。最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。王族の人間。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。ライガとミラの関係に好意的。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。弟。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。兄。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。


アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。長い金髪と緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。



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