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宝物の彼女  作者: 近江 由
手を取り合う
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荷台の中で

 

 ライガが乗った荷台は、勿論人が乗るために所ではない。


 ライガ一人が乗れればいい広さだ。

 それに加え、最低限の装備の予備が乗せられている。

 ライガは直接揺れるが荷台に寝っ転がった。


 本当に一人で考えたいことがあった。


 ミラが結婚することについてだ。


 誰にも言えるはずのないことだ。


 皆ライガがミラを幼いころから守る立場にいたことは知っている。


 ライガの父が騎士団長であったため、子供であるライガが選ばれた。

 お宝様であるミラのストレスを減らすために同年代の子供を選ぶのだ。


 それが、お互い想いを抱き合っているのは誰も知らない。


 お宝様の護衛に当たる子供というのは出世が保障されていることから、そのような薄暗いことを考えている者が多いため、なかなかこんなことにはならない。


 ただ、ライガの父はお宝様という存在が政治などの利害に利用されるのが嫌だったからライガをつけたのだ。


 誰もライガがミラと逢引きしているとは考えていないだろう。

 いや、ヒロキや団長であるジン以外は。


 アレックスやサンズは揶揄うことはあっても、あくまでも冗談だ。

 今までも騎士でライガと同じようにお宝様を守る立場にいたものがいたが、その人物も同じように揶揄われたようなのだ。要は伝統のようだ。


 ライガはお宝様護衛から外されることが多いが、その分大手柄を上げやすい仕事につけられる。


 それはどうでもいいのだ。

 ただ、ライガはミラが結婚することが嫌なのだ。


 自分以外の男のところに彼女が行き、さらには夫婦となることが。


 婚礼の日まであと数週間だ。


 ミラには否定されたが、一番の方法は王子を殺すことだと思った。

 何度が見たことがあるが、あんな男がミラを汚すと考えると怒りで我を忘れそうだ。


 いや、どんな男でも嫌なのだ。


 白い髪飾りをつけて笑うミラは本当に綺麗だった。

 守りたい、いや、自分と一緒にいて欲しい。


 彼女の幸せを願うことを思っていながらも、それ以上に自分が彼女と一緒にいたいという欲を優先している。


 壊れ物を扱うように彼女を労わりたいのに、それ以上に彼女を欲で染めたいという黒い想いもある。

 逢いたいのに逢うのが怖いのだ。でも逢いたいのだ。


 騎士として自分を抑える訓練をしたのに情けない。


 父が自分に教え込んだことは、ミラの前ではすべて無駄なのだ。

 いや、ライガがどう考えようとも彼女の前ではすべて無駄だ。


 婚礼の日の前に、彼女を攫うことは出来ないのか。


 忍び込んでいる中庭は、ライガは入れてもミラが出ることは難しい。

 ミラが外に出ることは無い。


 彼女が出る時を、狙うしかない。


 そんなことしたら騎士でいられなくなる。いや、殺されるだろう。


 それでも、そうするしかないだろう。


 その時、彼女は自分の手を取ってくれるだろうか。




 紅茶と甘いお菓子の時間は、侍女が傍にいてミラに紅茶を継ぐ時間だ。

 たしかに嗜好品はミラも好きだ。


 目を伏せた侍女がミラの持つティーカップに紅茶を注いでいく。


「…後は自分でやります。一人にしてください。」

 ミラは侍女が自分と居ることが苦痛なのだろうと思い、侍女を部屋から追い払った。


 実際、ミラも一人になりたかった。


 甘いお菓子は食べると幸せな気分になるし、温かな紅茶を飲むと安らぐ。

 今目の前にあるものは確かに幸せなものだ。


 それでも、ライガがいない、逢いに来られない、逢えない生活を考えると全て無味無臭に等しいのだ。


 温度という概念すら無くなったように心が止まる。


 昨日の夜つけてくれた白い髪飾りは、服の中に潜めている。

 この髪飾りを貰った時は幸せで仕方なかった。

 もう、ミラはライガと離れることは考えられなかった。


 直ぐに逢いたい。彼以外と一緒になることが考えられなかった。


 彼がしたように自分の肩を別の、あの王子が抱く日が来ると考えると、今すぐ舌をかみ切れそうだ。


 ライガが言っていたが、王子を殺せば結婚は無くなるのではということだが、それはない。

 別の王族との結婚になるはずだ。


 食事会の時の王子の視線もあるが、彼の周りで、順番待ちをするような面持ちの別の王族を思い出した。


 逃げ出したい。


 でもどうやって?


 一人で逃げられるのだろうか?


 中庭から出ることは騎士を伴わないとできない身分だ。


 逃げたいと言ったら、ライガは、彼は手を引いてくれるだろうか?


 自分と逃げてくれるだろうか?



ライガ:

帝国騎士団の精鋭部隊に所属する。小さいころからミラを守る立場にいた。短い栗色の髪をした茶色の目をした青年。


ミラ:

「お宝様」と呼ばれ、鑑目を持つ少女。真っ黒な髪と真っ黒な目をしている。王子に嫁ぐことが決まっている。ライガとは相思相愛。


ジン:

帝国騎士団団長。最年少で団長に就く。精鋭部隊の隊長でもある。栗色の長い髪を束ねており、瞳の色は顔にかかる包帯のせいで分からないが、色が白く線の細い輪郭をしている。王族の人間。


ヒロキ:

帝国騎士団副団長。精鋭部隊の副隊長でもある。長い濃い茶色の髪で切れ長の目をしている。全体的に細長い印象のある顔の造りをしている。ジンが気を許している数少ない人物。ライガとミラの関係に好意的。


マルコム:

精鋭部隊の一員。穏やかな青年。瞳も髪も茶色で中性的で幼い顔立ち。オールバックの髪型で、優し気な眉毛とたれ目をしている。


ミヤビ:

精鋭部隊の一員。隊の紅一点。赤みがかかった金髪で、目はグレーで中々の美人。厚みのある唇がチャームポイント。


アラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。リランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は黒。弟。


リラン:

精鋭部隊の一員。ライガの後輩。アランと双子。長い赤毛をポニーテールにして全部束ねている。瞳の色は茶色で髪を留めている紐の色は赤。兄。


サンズ:

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。硬そうな短い黒髪をして目も黒く、彫が深くて眉が太く骨骨しい輪郭をしている。


アレックス

精鋭部隊の一員。ライガの先輩。長い金髪で緑色の瞳で顔立ちがはっきりしている。



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