彼女達と鍋パしますが何か?
今回は鍋パ回です
ニート艦は基本的に食べるものも自由なんです!
では、どうぞ
「おい拓真。お前、自分の彼女達を呼んで来いよ」
「唐突すぎじゃね? 俺、食事中なんだけど?」
櫂のこの一言で思わず箸が止まる。人の部屋で鍋するような奴だから櫂の行動に理由を求めるのは無理だとしてもこれはあまりにも唐突だ。しかも、彼女達を呼んで来いだと? そうなったら俺は1時間は戻ってこないぞ? 彼女達に食われる的な意味で
「いや、俺も食事中だけど彼女2人を呼びに行くぞ? 1000年前にはこんな諺があったらしいぞ?」
「ほう、どんな諺か聞こうか?」
櫂が1000年前の事を勉強してるのは意外だったな。コイツは勉強してない奴だと思ってたのに……櫂! 勉強してたのね! お母さん嬉しいよ! 櫂、成長したね……あれ? 悲しくないのに何で目頭が熱いんだろう……?
「赤信号、みんなで渡れば怖くない」
「…………俺の感動返せ」
一瞬でも感動した俺がバカだったよ! バーカ! バーカ! ブァァァァァァカ! 櫂が勉強すると思ったぁ? 甘いんだよぉ! コイツが普通の勉強なんかするわけねーだろ!! 自分に都合のいい知識しか勉強しないんだよ! コイツは! 俺も勉強はできる方じゃないから人の事言えた立場じゃないけどな!!
「ん? どうした? 俺の諺に間違いがあったか?」
「間違いしかねーよ! それは諺じゃなくて1000年前の人達が赤信号を無視した時の言い訳の常套句じゃねーかよ! 諺でも何でもねーよ!」
どうして俺は飯を中断して櫂に突っ込みを入れてるんだろう? アホじゃないのか?
「あれ? 違った? まあいい。とにかく彼女達を呼びに行くぞ」
鍋の火を止めて俺と櫂は席を立ち、櫂は自分の部屋に、俺は自室の奥の部屋に行く。まあ、彼女達を呼びに行くのは俺も賛成だけどさ
「…………」
無言で部屋に立ち尽くす俺。これには原因がある。それは─────
「すぅ、すぅ……」
「むにゃむにゃ……」
彼女達の存在だ。状況を整理してみるげど、ここは俺の個人部屋で、彼女達が寝ているのは俺のベッド。彼女達の部屋は俺の部屋を挟んで左右にある。ここまではいい。問題はどうして個人部屋があるのに俺のベッドに潜り込んでるのか? だ
「起きろ。2人とも」
1回目は普通に声を掛ける。これが櫂なら即座に布団から叩き出すけど、女性に手荒な真似をするほど俺は外道じゃない。
「後50分……」
「ん~、あと5時間……」
2人とも後5分じゃないのな……って感心してる場合じゃねぇ!! 長いわ! 何だよ! 後50分と5時間って! 後5分じゃねーのかよ! 揃ってるの5だけじゃねーかよ! 後は全然合ってねーから!
「5しか合ってねーから!」
突っ込みは心の中のみと決めていた。しかし、あまりにも時間が長いのでつい口から出てしまった……俺もまだまだだな
「うるさいんだけど?」
「そうだよ! 拓真うるさい!」
人の個人部屋に忍び込んだ挙句、人のベットに潜り込んだ奴らには言われたくねーよ! 2人とも個人部屋あるだろ! どうして俺の部屋にいるんだよ?
「勝手に人のベッドに入ってる奴らには言われたくねーんだけど!?」
この分だと部屋の2人のベッドを俺の部屋に移す事も視野に入れないとな……
「それもそっか! さてっと、あんまり寝てると拓真がうるさいから起きますか」
「そうだね。本当はもう少し寝ていたかったけど」
何だかんだ不満を言いつつも起き上がる2人。いや、それ俺のベッドだから! 2人のじゃないから!
「最初から素直に起き──────」
ベッドから出た2人の恰好は───────水着だった。しかも、スク水……
「どうしたの? 拓真?」
「何? 何か変なものでも見た?」
「アホかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
思わず叫んでしまった……だが、叫んだ俺は悪くない!! どうして水着なんだ?寝る時の恰好に水着って……聞いた事ねーよ! 百歩譲って下着はわかる。それでもよくないけど! だけど、水着はねーだろ!
「───っ!」
「ううっ……耳がキーンってする……」
俺の目の前で耳を塞ぐ2人。いきなり叫んだ俺も悪かったけど、寝る時の恰好に水着はないと思う
「拓真、うるさいよ。お姉さんの鼓膜破く気?」
「たっくん! うるさいよ!」
「自分の彼女達がベッドから出てきたと思ったら水着だったら叫ぶだろ!? 美空! 美瑳!」
この2人は俺の彼女である天道美空とその妹である天道美瑳。歳は美空が19歳、美瑳が18歳、俺が17歳だから言うまでもなく俺が1番年下だ。だというのに、この2人は姉妹揃って甘えん坊なのはコロニーにいた頃に自分の両親に甘えられなかったのが原因だと思う。両親に甘えられなかった反動は理解できるよ?理解できるけど、姉妹揃って水着はねーだろ……
「拓真がスク水が好きだって美空ちゃんが言ってたから着て潜ってたのに……クスン」
「俺にスク水属性はない! 美空は誰から聞いたんだよ?」
「え? 私は櫂君から拓真はスク水が好きだって聞いたよ?」
ア・イ・ツかぁ~!! あの野郎ぉ~!! どうしてやろうか?彼女達にいらん事を吹き込んでやろうか?それとも、1日中勉強漬けにしてもらうように彼女達に言いつけてやろうか?
「俺はスク水が好きなんじゃなくて、スク水を着た美空と美瑳が好きなんだよ!」
付き合ってるし、同じ部屋に住んでるんだからその辺は察してほしい。でも、1つだけ言うならそうだな……実際に実行する奴があるかぁ!
「拓真、それならそうとお姉さんは早く行ってほしかったよ?」
「たっくん! 私も! 私も!」
「え? それって俺に最初に確認しない? 何で俺に最初に確認しないの?」
服装を含めて趣味って最初は本人に確認しない? 気のせい? どっちでもいいけどさ
「拓真は聞いたら素直に言ってくれるの?」
「たっくんは私達に嘘吐かない?」
そう言えば、この2人はコロニーにいた頃は常に周囲を警戒しながら生活していたって言ってたっけ?何でもいいところのお嬢様だとかで
「俺が美空と美瑳に嘘を吐くだなんて無意味な事するか!」
俺だって人間関係が上手くいかず、コロニーにいるのが嫌で同じような痛みを抱える奴らを募ったんだ。この艦に乗っている奴の中には騙される事にトラウマを抱えた奴もいる。美空と美瑳みたいにな。そんな奴らに嘘なんて吐くか
「そ、そうだよね……」
「最初に顔合わせした時にたっくん言ってたもんね。“俺は美空さんと美瑳さんに嘘なんて吐きません!”って」
最初に顔合わせした時の2人はそれはもう警戒心丸出しだったなぁ……初対面だった時は俺も美空と美瑳に敬語で話してたし……警戒心丸出しであっても初対面の時の美空と美麗はTHE、お嬢様! って感じだったのに、今ではその面影すらない。最初の美空と美瑳! カムバァーック!
「拓真、今失礼な事を考えたよね?」
「そうなの? たっくん?」
「い、いや、そ、そんな事はないぞ?」
美空よ、俺の心を読むな。俺にプライバシーは……ありませんでしたね。
「拓真?」
「たっくん?」
真顔でこっちを見るな。俺は疚しい事は何も考えてない! 美空と美瑳に小細工が通じない以上は仕方ない! 話題を変えよう!
「そ、そんな事より、櫂が鍋するって言ってたぞ?」
こんな時に櫂に助けられるとは……いや、鍋に助けられたな。
「そう。それなら早く行きましょう」
美空は早々に部屋を出ようとする。それに対して……
「うん! あ、私はちょっとやる事があるから先に行ってて?」
美瑳はどうやらやる事があるみたいなので先に行くように言ってきた。何だよ? やる事って? 俺の部屋にある秘密でも探ろうってか? そんなのあるわけないだろ?
「美麗がそう言うなら先に行くね?」
「あ、み、美空!?」
美空に強引に引きずられる形で部屋を出る。俺は子供か! 歳は俺が1番下だけどな!
「…………美空」
「…………拓真」
櫂が待っていると思って一先ず俺と美空だけでもと思い、個人部屋を出てきたが……炬燵は撤去され、1つのメッセージがモニターに映っていた。その内容とは─────
“ゴメン! 彼女達が鍋やりながら甘い一時を過ごしたいって言うから戻る!”
何ともふざけた内容だった。櫂も櫂だけど、彼女達も彼女達だ。今度からは部屋に鍵を掛けておこうかな? 今回は掛け忘れたけど
「拓真、戻るよ?」
「あ、はい」
“鍋パしようぜ!”って誘われて行ってみたらやってませんでした~。って事に対して美空は何とも思ってないのか?それとも、鍋パ自体に興味ないとか?
「ただいま、美瑳。準備できてる?」
「うん! 準備バッチリだよ! 美空ちゃん!」
何の話だ? 寝る準備か? それとも、風呂の準備か? まさか、鍋パの準備とか言わないよね?
「じゃあ、始めよっか。拓真」
「え? 何を?」
“始めよっか”って言われても何を始めるかサッパリだ。主語をつけなさい! 主語を!
「鍋パだよ! たっくん!」
「いや、何言ってんの?」
いきなり鍋パの話をされてもなぁ……嫌いじゃないからいいけどな!
「拓真はこれからお姉さん達と鍋パするの。OK?」
「別にいいけど、具材は?」
櫂の時もそうだったけど、鍋パするなら具材を隠すの止めない? 闇鍋するかもしれないってビビるから!
「お肉とお野菜と豆腐だよ! たっくん!」
「よかった……闇鍋じゃなくて」
闇鍋は1000年前から恐ろしい鍋として語り継がれている。だから、闇鍋だけは絶対にぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇったいに! 嫌だ!
「拓真はお姉さん達を何だと思っているのか1度ゆっくり話し合う必要があるようね?」
「ごめんなさい!!」
悪いようには思ってないけど睨まれたからつい謝ってしまった。だって、男の子だもん! 怖いものは怖いもん!
「まあいいよ。ちょうど炬燵もモニターもある事だし、何か見ながら食べましょ?」
「そうだね! 映画でも観ながら食べようか?」
「だな。その前に、広間の出入り口をロックするわ」
櫂が入って来ないように広間の出入り口をロックした。こういう時に全てがプログラム管理だと助かる。部屋を出る事なくロックを掛けられるからな!
今回は鍋パ回でした
ニート艦は基本的に細かい決まり事とかはあまり存在しません
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました