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HELD  作者: 恋夢
中盤
19/19

彼の決意(2/2)

洞窟の奥へと進んでいると少し先に明るくなっている所があるのが見える。

そこに近づくにつれて何やら騒がしくなり、断末魔のような叫び声が響いてくる。

何が起こっているのか確認するべく明かりの先まで走った。

そこはかなり開けた場所で、天井には不自然な穴が空いていた。

地面には何体もの山賊種(ゴブリン)の死体が転がっていた。

 そして俺は、見覚えのある吸血種をみつけ怒りが込み上げてきた。

「なぜお前がここに居るんだ」

「君、誰?」

「は?」

「は、じゃないよ。 僕は君なんて知らないよ」

怪物曲芸(モンスターサーカス)のあの夜。 俺たちのパーティーを壊滅させた張本人がしらないだと?!」

「うーん。 あ、あぁ……あのときのつまらない男か。 あまりにもつまらない男だったから忘れていたよ」

 吸血種(ヴァンパイア)の男はジルを馬鹿にするかのように見下し、笑っていた。

「そのふざけた面を、今すぐにぶった切ってやる!」

 ジルは吸血種の男に向かって一直線に走り出した。


属性付与(エンチャント)――爆破》


大剣に属性付与をし、男に向かって力任せに振り下ろした。

しっかりと的をとらえた。が、吸血種の男はたやすくその大剣を受け止めた。

 触れた瞬間に発動した爆破を受けてもびくともせず、陽気な表情で、見つめていた。

「全くいきなり失礼だなぁ。 いきなり攻撃してくるなんて、失礼だと思わないのっ?」

「がはっ」

 溝を蹴られ、吹き飛び、勢いよく壁に衝突した。

今にも内蔵が出てきそうな痛みが腹部に走る。

しかし、ジルは痛みを気にもせず男に再び飛びかかった。が、男はノーモーションで蹴りを入れ吹き飛ばした。

何度蹴りを入れてもジルは止まらず、男に飛びかかった。

身体がとっくに限界を迎えていることはわかっていた。

だが、ここで奴を仕留めなければ次はいつ奴と出会えるかわからない。

奴を仕留めることが無理だとわかっていても、もう身体が言うことを聞かなくなっていた。

何度も何度も吹き飛ばされ、その度に意識を失いかける。

これで死なず、ましてや意識を失わずに動けていることに男は驚く。

そして、その驚きこそが一瞬の隙を生んだ。

痛々しい拳が男の頬かすめた。そして、始めて男が一歩後退したのだった。

 ジルは拳を振りかざした勢いで地面に倒れ込み、身体が一切動かなくなってしまった。

「くそおおおおおおおおおおおおお」

「ねぇ、君そろそろ鬱陶しいんだけど」

「俺はお前を殺さなきゃならないんだっ!」

「はいはい。 そー言うのはいいからさっさとくたばれよ」

「ぐあぁ」

 まだ、立ち上がろうとするジルを男は無慈悲に蹴り飛ばす。

 男がとどめを刺そうとしたときに少し奥から何かが近づいてくる音が聞こえる。

「リューもう辞めて!」

 朦朧とした意識の中で聞き覚えのある声がした。

ルネミアだ。

聞き間違えるはずが無い。

ぼやけた視界に写るのは俺よりも小さい少女が両手をひろげて男と俺の間に割って入っている姿だった。

白く長い髪が光の加減で眩しく見える。

 ルネミアはリューと呼んだ吸血種の男に対して喋りかけていた。

「もう、たちが上がることさえ出来なくなってるじゃない! もう、これ以上攻撃する必要はないでしょ」

「僕はこいつを殺らなきゃ行けないんだ。 そこをどいてくれるかな?」

「いやよ。 絶対にどかないわ。 私とリュルがどうなってもいいなら無理矢理にでもどかしなさいよ」

「はぁ……。 ルネミア、僕にそんな脅しが通用すると思ってるのかい?」

「少なくとも私の身体とリュルは大切なはずでしょ?」

「それはそうだね。 でも、このまま抵抗するならルネミアは無傷じゃ済まないよ」

「私は覚悟の上でここに立ってる。 それに、もう少しすれば私の仲間が来る。 それまで、耐えれば私の勝ちよ」

「流石に四人はキツいなぁ。 わかったよ。 僕の負けだ。 今回は引くとしよう」

「良かった。 私は今リューと争う気は無いの」

「そう。 そこの男名前は何て言うの?」

「ジル……、ジル・ルディアだ……。 覚えておけ」

「ちょっとジル! 動いちゃダメよ。 意識があるだけでも奇跡なんだから」

「ジルか、覚えておくよ。 僕はリュー君の姉を殺した吸血種さ」

 リューはそう言って飛び去って言った。

程なくしてリアとリミルが到着する。

意識を失いかけ、瀕死寸前のジルを三人で担ぎ洞窟を後にした。


三人運ばれながらジルは、リューの事を考えていた。

リューは俺の姉を殺した男だと言った。

確かに、ライナはあいつに殺された。

俺が見たのはほんの一瞬。

その一瞬で、ライナはやつに殺されたのだ。

俺が巨人種と戦っている間、奴とライナは一体何をしていたのか。

今思えば不思議だ。

リューは何か隠している。 そして、それはライナが深く関係している事なんじゃ無いかと思う。

ただの考えすぎかもしれない。

だけど、やつの最後の言葉には何か意味があるような気がしていた。

俺はそれを知らなくてはならないのかもしれない。

そこで、俺の意識は途絶えた。

はい恋夢です!

こちらも、久々の投稿になります。

長年探し求めた相手を逃すことになったジル。悔しさは残るものの、新たな目標が出来ました。

今後どうなるのか楽しみに待っていてください!

それではまた次の作品でお会いしましょー!


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