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HELD  作者: 恋夢
中盤
17/19

彼女の内にあるもの(2/2)

物音のする方へと走るが一向に物音との距離が縮まらない。

ただひたすらに同じ距離で聞こえてくる。

これは、一体どういった状態なのだろう。

もはや同じところで無限に足を動かしたんじゃないかと思ってしまう。

走るのを辞め、俯き、上がっている息を沈める。

どうするべきかと、顔を上げるとそこには私と全く同じ姿がそこにはあった。

金髪のロングにエメラルドの瞳。髪はツインテールにしている。

全く私と同じ姿だ。

「貴女は……誰?」

返事は無い。ただ、不気味な笑顔を私に向ける。

少し無言の時間が続く。

次に口を開いたのは相手だった。

「貴女こそ誰ですの?」

「私はリアよ。リア・フォースよ!」

「うふふ」

何が面白かったのかわからないが笑われてしまう。

続けて私は再度、問いかける。

「貴女は誰ですの?」

考える素振りをあからさまにする相手に私は腹が立っていた。

誰かわからない以上無闇に手を出せないのが心苦しい。

「私は貴女の内に存在する貴女ですわ」

一体どういうことなのか。理解に苦しむ。

と言うよりも信じがたい話し過ぎる。

と言うことはここは私の心の中になるって事なのだろうか。

「信じられないと言うような顔をしてますわね。でしたら、貴女に話して差し上げましょう」

私自身が一番わかっている、だからこそ言葉にして欲しくない。

「やめて……」

私の言葉なんて聞こえてないのかもう一人のリアは話し始める。


幼い頃、リアがまだストレフィア王国に居た頃リアは貴族として生活をしていた。

貴族同士の付き合いが苦手だったリアはこんな生活に嫌気がさしていた。

と言うのもリアの家は下位貴族という貴族の中で低い身分の家だった。

貴族の集まりやパーティー等で親の付き添いとして良く顔を出していたリアは上位貴族の子供達に下に見られ、蔑まれることが多い。

耐えなければと我慢し堪えるが人間我慢の限界が当然存在する。

しかし、ここでリア自身が問題を起せば家柄に傷が付くことになる。そうなれば私は姉と同じ様に家を出されるだろう。

小さい頃から姉の様にはなるな。と口酸っぱく言われていたリアはいくら我慢の限界が来ようと何も出来ず、ただただ部屋で泣くことしか出来なかった。

ある時、王族からの手紙が届いた。

内容は、ルネミアの誕生日パーティーに招待というものだった。

両親は王族からの招待状が届いた事に歓喜し喜んではいたが、リアは乗り気では無かった。

行けば、また蔑まれる。きっと王女様も同じなんだ……。

リアはそれが怖くて仕方無かった。

行きたくない。この気持ちでいっぱいだった。

しかし、リアが行きたくないと泣こうが喚こうが両親は関係無く私を連れ出すだろう。

当然のように連れ出され参加させられ、当たり前の様に上位貴族の子達に蔑まれる。

だが、ルネミアだけは違った。私と対等に会話をし、接してくれたのだ。

内にも外にも居場所の無かった私に希望を与えてくれたのだ。

こんな、些細なことで心が満足するほど私の心は荒んでいたのかと思うほどのものだった。

そんなリアに光を与えてたルネミアに私は溺愛してしまう。

そして、それが歪んだ愛情として心の中に現れてしまったのだ。

それが、今目の前に居るもう一人のリア。


「私はルネミア以外必要ない。ルネミア以外どうなろうと関係ない。私が、冒険者になると決めたのだってルネミアを殺した奴らを殺す為。でも、ルネミアは生きて私の前にいる。私はそれだけで十分。でも、やっぱり私だけを見て欲しい。だけど、それにはあの二人が邪魔なの、私とルネミアの間にあの二人は必要無い。リミルが居なくなった時は二人を殺すチャンスだったのに私はそれが出来なかった。折角、先に見つけて殺してやるチャンスだったのに……。でも、そんなことはもう考え無くて良い。だって今の私には呪術があるのだから。この世界に必要なのは私とルネミアだけで良い。他の皆なんて消えて無くなればいい。呪ってやる呪ってる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる……。あはははははははははははははは」


「もう辞めて!!」

リアの悲鳴が響く。

闇リアは止まらない。

呪ってやると連呼しながら笑っている。

ひとしきり笑って落ち着いたのか冷静に戻っている。

私はそれから目をそらし、耳を塞ぐことさえ出来ず泣き崩れてしまった。

そして崩れた私に闇リアは私の耳元で囁く


――みんな呪っちゃおうよ


そうだ、皆呪ってしまえばいいのよ。そして私とルネミアだけの世界を造るのだわ。

闇リアは満足そうに笑い、消える。

それと同時にリアは意識を取り戻す。


「ここは……?」

辺りを見渡すと白い空間にベットがあり、そこに私が寝転がっている状態だった。

身体を起すとそこには三人が立っている。

「リア!大丈夫?」

「うん……」

聞けば、三日もこの状態だったらしい。

私を心配してくれたんだ。あぁ、ルネミアはやっぱり優しいな。

こんな私を心配してくれるなんてルネミアだけだよ。

だから、ルネミア。私だけしか見れないようにしてあげる。

しかし、みれば二人だって心配している様子だ。

何かこっちに伝えようと口を動かしている。

何を言っているのか何故か聞こえない。

しかし、次第に耳に届く様になってくる。

「リ……ア。だいじょ……うぶ……だっ……た?」

途切れ途切れで聞こえる私を心配する声。

私はその言葉に揺らいだ。

「うわあああああああああああ」

突然悲鳴を上げるリア。

「リア?!どうしたの?」


「呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる呪ってやる」

「辞めて!」

「呪ってやる」

「辞めて」

「呪ってやる」

「辞めて」

「呪ってやる」

「辞めて」

「皆、呪ってやる。ルネミアだけで良い。私を見てくれるのはルネミアだけで良い」

「辞めて!辞めてよ。私の仲間を傷つける様なこと言わないで!」

「これは、私自身の思いよ。私に否定なんて出来ない」

「でも、私は今の仲間が大好きなの!大切なの!」

「今更きれい事なんて言わないで!私が私を受け入れることを拒んだ結果なのよ。私に今更きれい事を言う資格なんて無いわ」

「確かに昔は拒んだかもしれない。でも、今は違う。今なら私を受け入れられるよ」

「今更、遅いのよ。今更受け入れるなんて……。都合が良すぎるのよ」

「でも、こんな私でもやっぱり私が好きだから……。だから、受け入れるの」

「思っても無い事言わないで」

「思ってるよ。私が一番気付いていることじゃない。私こと私を拒んでるんじゃ無いの?」

「違う……。私はただ、私に認められたくて……」

「だったら、私ともう一度頑張ろうよ」

「でも……」

「私は私なの。だから二人で一つ。いいえ、私と私で私が存在してる。だから、私達でお互いを背負って行くの」

闇リアは黙って泣いている。

こんなことがあって良いのか。私にはわからない。でも、私が背負って行くべきものなんだと私は確信する。

これからは逃げたりなんかしない。

私が受け入れたことでリアは本来の自我を留める事が出来た。

しかし、その代償として綺麗だったエメラルドの瞳の色が片目だけ灰色のような色に変色してしまう。

視力が失われたワケではないが、これは闇リアの残留思念のような物なんじゃ無いかと思っている。

私と私が生きている証。そんな風に私は思っている。

そして、何故か呪術の知識が頭の中に流れ込んで来る。これは、闇リアが持っていた知識なのだろう。

この中にリネルを助ける方法は無かった。しかし、呪術によるものならばまだ希望はあるかもしれない。

私にはまだまだやることが沢山残っている。

四人で足並みをそろえてギルドホームに帰る。

三人は私の事について何も言わない。

きっと、理解してくれた上で敢えて何も言わないんだろう。

それで良いんだわかってくれているならそれでいい。

「早く帰ろ!」

三人の方を振り返って笑う。

「よし、じゃあ。競争だ」

「師匠私に勝てると思ってるの?」

「今度は勝つんだよ」

「私だって負けない」

「じゃあ、競争ですわよ!」

これからもこの仲間達と一緒に冒険がしたい。

はい、恋夢です!

いやもう、書いてて辛くなりました。

リアさん……。これからも頑張って生きて欲しいです。

さて、次からはジルのストーリーになります。楽しみししといてくださいね。

それでは、また次の作品でお会いしましょー!

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