プロローグ
俺つよでもなく、特殊能力をもつわけでもない主人公を作りたくて書きました
あいつ怒るかな。
俺は暗くなっていく視界をくぐる幽かな点となった光に焦点を絞る。朧となる世界にはあいつはいなかった。あいつだけじゃない。俺が等しいと思っていた人々は誰一人存在しない。
「はは・・・こんな・・・もん・・・だな・・・俺の・・・人生」
かすれた声で途切れ途切れの強がり。自分でもわかるぐらい惨めだ。惨めな上に情けない。
しかし、仕方がない。
俺の人生は陽炎でできていた。熱された周りが作り上げた夢と理想を表現する空虚。
俺は嘘だ。
その最後で築き上げられた友情なんてものが、真実であるわけがない。
そして、そんな関係を俺はーー
俺は嘘で壊した。
信頼してくれたあいつも、学校の友人たちも、親しくしてくれた方々も、俺の陽炎はまるで罠のように理想と夢を餌に現実を食い荒らした。
その結果がいまである。
人生が終わる瞬間に訪れる孤独。
いや、それは間違いだ。
俺の人生は常に孤独だった。人に嘯き、自分に幻想を見せて、偽物を作り続けた。
「あ・・・あぁ・・・ダサいな」
頬を熱がゆっくりと降りていく。嗚咽とともにあいつの名前をこぼす。
あいつともっと笑いあいたかった。
あいつだけにはわかってほしかった。
嘘だらけの自分に真実をくれると信じたかった。
何もなくてもそばにいてほしかった。
そんな願いが、叶うことはない。
あいつは俺の嘘で死んだんだから。
そこで俺の意識は闇のなかに消えていった。