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アクセラ「ディミヌちゃーん、ちょっと敵の数多すぎない?」

翌日、道中は魔物に遭遇することなく、俺たちは街にやってきていた。


街に入るとマキシムはまず、ギルドに行くと言った。


魔物の討伐依頼やその報酬はギルドに登録することで得られるらしい。

マキシムとリーリアはあらかじめ、登録されているので、今日訪れたのは俺の登録のためだ。


ギルドは国で管理されているので、このギルドに登録するだけでも、他の街で適応される。


「はい、ええ、わかりました。本日は、ギルドの登録ですね。紹介は、マキシムさんからということで、はい、わかりました」


マキシムが、受付の人と段取りを済ませてくれている。

ギルドへの登録は、すでに登録されている人からの紹介が必要なのだ。


マキシムは、道端で助けた加盟者から紹介されたらしい。


「では、カナタさん、こちらへ」


受付の人に呼ばれて前に出る。


「では、こちらのロールから、あなたのロールを選んでください。それをギルドカードに刻んで、依頼などの参考とさせていただきますので」


「ロールって?」


「魔導師とか、剣士とか、そういう役がらのことです」


「俺は、格闘家がねえから、剣士を選んだぜ」


「私は、回復術師と魔導師を選びました。この世界では、回復魔法と攻撃魔法は別ジャンルなようです」


ゲームで言うところの、ジョブ的なやつか。

どうやら、複数選択もできるらしい。


「じゃあ、俺は剣士と魔導師と回復術師でお願いします」


そういうと、受付の人がイラっとした顔で固まる。


「どうかしましたか?」


「あまり、冗談はやめてください」


「いや、冗談じゃないんですけど」


「はぁ……リーリアさんの回復魔法と攻撃魔法の両方を扱うことだって、本来何十年も修行した天才くらいでしか、ありえないことなんです。それに、さらに剣まで扱うなんて、ふざけているとしか思えません」


「えっと……」


言い淀んでいると、マキシムが助け舟を出してくれた。


「こいつ、俺とリーリアの弟子なんだよ。剣の腕は俺が保証するし、魔法の方は」


「私が保証します」


「お二人がですか…………」


リーリアとマキシムは、この一年の間で割とギルドから実力を認められているらしい。

暇を見つけては、依頼をこなしていたそうだ。


「……はぁ、わかりました。お二人を信じましょう」


「おう!ありがとな!」


「ありがとうございます」


受付の人は、残りの作業を終わらせて、俺にギフトカードを渡す


「では、こちらが、ギフトの加盟の証、ギフトカードです。これを持っている限りギルドがあなたの身分を保証します。そのかわり、しっかりと世のため、人のためとなる働きをすることを誓いますか」


「誓います」


「分かりました。ようこそ、コーリウス王国ギルド第15支部へ」


ギフトへの登録を済ませた俺たちは、依頼の貼られたボードを見に向かう。


「ふん……なんか、依頼多くねえか?」


「そうですね、以前来た時よりも多いように思われます」


「そうなのか?」


「ああ……」


「おっ、マキシムさんじゃねえか!」


ボードを見つめていると、近くにいたおじさんが話しかけて来た。


「ん?おぉ!ガルダ!達者か!」


「まあまあだな!この頃、依頼が妙に増えてよ、ギルドが働け働けとうるせえんだ」


「おー、そのことなんだが、どういったわけなんだ?」


「さあな、俺なんかしがない剣士だからよ、理由なんてわかりゃしないわ。ただ、聞いた話によると、西の方で魔物が大量発生して、それが、こっちの方まで漏れて来てるらしい」


「西の方?」


「ああ、あっちには、国境があるからな。魔物がいっぱい出るわけよ」


「国境があると、魔物が出るんですか?」


「あぁ?なんだ小僧、そんなことも知らねえのか……こいらはマキシムのツレか」


「ああ、ここずっと、俺とこの嬢ちゃんでこの小僧を鍛えてたんだ」


「なるほどな。小僧。このコーリウス王国はな人間の支配する最西端にある国なんだ。んで、西側の国境の向こうには、未開の地が広がっていて、そこには魔物がうじゃうじゃいるわけよ」


「へえ、そいつは知らなかった」


「なんだ、マキシムも知らなかったのか。お前らどこ出身よ。常識だぞこんなの」


「いやあ、小せえときから山籠りばっかしててな」


「なるほど!マキシムらしいや!じゃあ、俺は働いてくるわ!またな!」


ガルダは、剣を担ぎながらだるそうに去っていった。


「未開の地、ね」


「やはり、怪しいですね」


「うん。それに、おそらくディミヌさんたちは国境にいて、ギリシャさんたちはその向こう側にいる」


「この広い世界で、同じような場所に、英雄がそんなにいるなんて、どう考えても、なんかありますって言ってるようなもんだよな」


「早く、ディミヌさんたちのところに向かって、加勢するべきでしょうか」


「そうだな、そうした方が、ここの被害も減るだろうが……」


「怪しいんだろ、この街も」


「怪しいっつうか、なんか臭うんだよな」


すると、突然、ギルドの扉が開かれて、慌てて人が走りこんで来た。


「緊急発令を要請する!」


受付の人が駆けつけて、今にも倒れそうなその人に、肩を貸す。


「どうしたんですか!」


「魔物だよ!大量の魔物の群れが、この街に向かって来てる!」


「なんですって!数は、数はどのくらいですか!」


「んなもん、知るかよ!いっぱいだ、いっぱい!早くなんとかしねえと、街がやべえぞ!」


「わかりました」


受付の人は、ギルド内にいる人全員に、聞こえるように話す。


「みなさん!今の話を聞いてましたよね!この街の危機です!ギルド加盟員、全員、門に向かってください!」


一連の様子を見て、マキシムさんはどこか訝しげな表情をする。


「マキシム?行かないのか?」


「ん?あぁ……おめえら、先に行っててくれ、俺はちょっと」


「え、どういうことだよ」


「わかりました。じゃあ、お願いします、マキシムさん」


「おう」


「行きましょう、カナタさん」


リーリアは俺の手を無理やり引っ張り、走り出す。


「え、ちょっと!」


そのまま、俺は門の方まで、リーリアに引っ張られて行った。


全てのギルド加盟員がいなくなった、ギルド内には、マキシムと、先程駆け込んで来た人物のみが残されていた。


「さて、お前は、なにものだ」


その言葉を聞き、駆け込んで来た人物は、ニヤリと笑う。


「何のことか、さっぱり。あなたは、行かないんですか?」


「ああ、あっちはあの二人いりゃ何とかなるだろ。それより、お前だ」


「私が、なにか?」


走り疲れてヘトヘトだった様子の、その人物は気づけば、平然とした顔で立っている。


「臭えんだよ、お前。バレねえとでも思ったか?」


「そんなに、臭いますかね。野生の勘って、やつですか?」


「あぁ、まあな」


「私にも色々とやることがあるんですが……見逃してもらえませんか?」


「ありえねえな」


「そうですか。では……」


だんだんと、男の骨格が変異していく。

服が裂けて、口が裂けて、目尻が裂ける。


「それがお前の姿か……」


「ええ」


身長は先程よりも格段に伸びて、体を黒い体毛が覆う。


「……ッチ、ギルティアは元気か?」


マキシムは、苛立ちながらその魔人に問いかける。


「ええ、それはもう。いやあ、まさか、あなたがこの街にいるなんて思っても見ませんでしたよ、マキシム様」


「ああ、てめえもな。グリーディアス。なんだよ、生き返ったのか」


「ええ、神の力でね」


「はぁ……だりいな、もう一度、あの世に送ってやるよ」


「こんどは、私も負けませんよ」


「ぬかせ」


マキシムは、ステータスカードから、グローブを取り出し、手につける。


「おや、聖具まで持ち出してもらえるのですね。光栄です」


「生き返ってまで、人類に仇をなすのなら、容赦はできねえからな」


「なるほど」


二人の化け物は、戦闘を開始した。

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