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マキシム「まあ、楽しかったぜ、小僧!」




「おおぅ!来たか!小僧!」


マキシムは、出会った時のスタイル、上半身裸で素手で待っていた。


一緒にいて知ったが、これが、彼の全力の戦闘スタイルらしい。


「あぁ、来たよ、アニキ」


「ガハハハハ。あの頼りなかった小僧が、たった一年でこんなになるなんてな。人生、何があるかわからねえもんだな!」


「アニキとリーリアのおかげだよ」


「そいつぁ、よかった。さて」


マキシムは、首を回し、屈伸運動をする。


「始めっか、カナタ」


そう言って、マキシムの世界の力、回転力を体に纏う。


体の中にあるエネルギーを、超速で回転させて、自身の身体を強化する奥義、回転力。


改めて対峙すると、とてつもない、圧力を感じる。


それを紛らわすため、自身も回転力を身に纏う。


「さあ!ルールは簡単!俺をこの円の中から外に出すことができたら、合格だ!」


そう言って、一度地団駄を踏むだけで、地面にマキシムを囲む半径1メートルの円が刻まれる。


「さあ!かかってこいよ!カナタ!」


その言葉とともに、マキシムは拳を振るう。


俺とマキシムの距離は、20メートルは離れているにもかかわらず、とてつもない力が襲いかかった。


「防御の陣!」


カナタの前に魔法陣が現れて、結界が発動する。


リーリアに一番初めに教わった魔法だ。


魔法を使うのには、回転力とはまた別の、魔力が必要だ。


回転力と、魔力は別の力なのだ。


そして、魔力も体に纏うだけで身体能力が上がる。


カナタの身体能力は、回転力と魔力、二つの力で強化されるのだ。


これが、カナタを、十一人目の英雄たらしめる、あらゆる技能を手に入れられる力。


まだ、マキシムに及ばない、回転力も、魔力と複合することで、彼の背中に手をかけることを可能にするのだ。


「魔力解放」


その言葉で、カナタは魔力を体に見に纏う。


「さあ、いくぞアニキ!」


「おう!」


「降雷の陣!圧水の陣!」


雷を射出する魔法陣と、大量の水を発生させる魔法陣を、形成し、マキシムに放つ。


「ハッ……」


しかし、マキシムには効かない。

マキシムは、回転力を纏うだけでなく、自分の周りにまで及ぼしていた。


回転力は、その時の通り回転する力。


マキシムの周りには、高エネルギーの回転する力が結界となり作用する。


「もちろん、効かないよな!氷結の陣!」


カナタは、放った水を全て凍らせ、谷の中を氷のフィールドとした。


「ほぉう!それで!どうするんだ!」


「こうするんだよ!氷使の陣!」


マキシムの背後に、氷でできたカナタが現れ、マキシムに氷の剣で切りかかる。


「おぉ、面白えじゃねえか?だが、お前は来ないのか?」


マキシムは、見向きもせず、氷の人形を殴り砕く。


「まあ、これから、これから」


今度は、数え切れないほどの、人形を形成し、カナタは自分の体を氷で覆って、その中に紛れた。


「攻撃の陣、展開!」


氷のフィールド全体に、大きな魔法陣が形成される。


攻撃の陣は、展開している限り、身体能力を強化する魔法。


カナタはそれを大きく展開することで、氷の人形全ても、強化したのだ。


「膂力の陣、腕力の陣、脚力の陣」


筋力の強化、腕力の強化、脚力の強化と、順に自分の体を強化する、


「じゃあ、行くぞ」


強化された氷の戦士たちが、数に物を言わせてマキシムに襲いかかる。


先ほどまでとは違い、強化された氷の戦士たちは、ほぼカナタと同じクオリティーで戦闘を行う。違いは、魔法陣を作れないことくらい。


マキシムは、円のなかから出る気配を全く感じさせず、氷の戦士たちを砕いていく。


しかし、マキシムの顔には余裕の笑みはない。


マキシムには及ばずとも、カナタは相当高レベルな格闘術を身につけている。


それと、ほぼ同クオリティーで襲ってくるのだから、一挙一動に神経を研ぎ澄ませて、氷を砕いていく。


「ッチ、やるじゃねえか」


「まあね」


瞬間、マキシムの眼前に、魔法陣が形成されて、氷の槍が射出される。


カナタは、氷の戦士たちに紛れて、魔法を行使したのだ、


こうすることで、マキシムに、氷の戦士が魔法を使う可能性を考えさせる。


マキシムは、卓越した反射神経で、それを躱すも、顔に焦りの色が一瞬浮かんだ。


「ふぅ……」


安堵の息を漏らしたのもつかの間、マキシムの足元から、氷の腕が現れて、摑みかかる。


「おぉっ!」


そして、動揺した隙に氷の戦士たちは襲いかかる。


「オーバードライブ!」


マキシムは、体の周りにまとっていた、回転力をさらに強めて、瞬間、エネルギーは刃となり、氷を切り裂く。


「(……なるほどね)」


この氷のフィールドは、ただ、氷の人形を効率よく大量生産するためじゃなくて、自由自在に、氷の人形を生産するためってわけか。


それで、砕いた人形も、魔力の消費をほとんどなく蘇るし、手だけの生産なんてことも行えると。


よく、考えられてんな。


だが……。


「これじゃあ、いつまでたっても、俺をこの場からは動かせないぜ!」


言ってはみたが、カナタだって、それは百も承知なはず。


これは、時間稼ぎ、か?


ならば、なにか、手のかかる魔法でも作っているのか、それか…いや、弟子の考えたことだ、その、策に乗ってやるのも、また一興。


まあ、容赦はしねえがな。


「回転する拳」


マキシムは、腕に回転力を大量に乗っけて、腕を振るう。


腕の勢いに乗せられた、エネルギーは大きな腕のように、振るわれ、氷の戦士たちをなぎ払った。


「ふむ……スッキリしたな」


脆い氷の戦士たちは、砕け、肉の体を持っていた、カナタのみがたっていた。


「よお、カナタ!さっきぶり!作戦はどうよ?」


「回転の陣……いまので、準備はできたよ。氷装の陣!」


カナタは、待っていたのだ。

マキシムが、細々しい戦いにしびれを切らし、大量の回転力を振るう瞬間を。


この時のために、作った魔法、回転の陣。


回転力を、吸収するために自作したオリジナルの魔法。


マキシムのアホみたいなエネルギーを吸収するために、複雑な魔法陣にする必要があった。だから、氷に紛れて、少しずつ魔法陣を形成していたのだ。


いま、回転力を吸収したことで、カナタの体に、マキシムの回転力も上乗せされる。


そして、発動させた、氷装の陣。


マキシムにひたすら、砕かせ続けたことで、氷のフィールドにも、マキシムの回転力を保存していた。


それを、カナタが身に纏う。


今、この瞬間、カナタの身体能力は、マキシムを上回る。


「なるほどな!そういうことか!ガハハハ!いいじゃねえか」


カナタは、超スピードで、マキシムに迫る。


身体能力の高さに身を任せ、マキシムと拮抗していたかのように見えたが、技術の差からか、だんだんと、劣勢になる。


「まだまだぁ!」


それでも、諦めず、カナタはマキシムとインファイトをし続ける。


戦い、


戦い、


戦い、


そして、戦った。


何時間が経っただろうか、ついに、カナタがマキシムの拳を受けて吹っ飛ばされる。


数時間の戦闘の中で、カナタの魔力も回転力も空っぽになっていた。


「はぁ、はぁ……あー、お前も頑張ったと思うぜ、だが」


俺の勝ちだ、そう、マキシムが言おうとした瞬間。


カナタの手元が、輝く。


「俺の勝ちだよ。遅咲きの陣、破壊。圧水の陣、展開×3!」


そして、押し寄せる、大量の水。

カナタは、遅咲きの陣という魔法で、圧水の陣の発動を延期していたのだ。

それは、あの氷の中に紛れているうちにこっそりとやっていた、最後の秘策。


マキシムは、最初と同様に、回転力を展開して、水を払いのけた。


しかし、だんだんと、その回転する力は、弱っていく。


氷との戦闘や、その後のカナタとの戦闘で、マキシムの回転力は、カナタと同じように尽きかけていたのだ。


だが、遅咲きの魔法は止まらず、マキシムを責める。


だんだんと、水を押しのけることができなくなり、水が少しずつ、マキシムの回転エリアに入ってくる。


そして今、ついに、回転が尽きて、水の圧力が、マキシムを覆い流した。


マキシムを、円から押し出したところで、水の勢いは止む。


カナタは、パシャリと、水の中に倒れこんだ。


「やるじゃねえか、小僧。お前の勝ちだ」


マキシムは、髪から滴る水を払いながら、得意げな笑みで、カナタに手を貸した。


「ああ、俺の勝ちだ!」


カナタも、同じように笑う。


「まっ、すっげえ、ハンデがあった上での、勝ちだがな!」


「わかってるよ。だから、いつか、お互い全力で、やって、勝つ」


「おう!」


二人は、拳を突き出し、お互いの拳を重ねた。


「約束だぞ!小僧!」


「約束だ!アニキ!」


こうして、カナタは英雄の道のスタートラインに立った。

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