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カナタ「だめだこいつら、ついていけない」

結局、それぞれがそれぞれ、自由に戦い、その結果、俺は置いてけぼりになった。


正直言って、未だ一般人である俺には、最高峰たちの戦いから見て得られるものはほとんどなかった。

というか、ほとんど見えない速さだった。

あるとすれば、ほんとに異世界に来てしまったのだなぁという実感を得たくらいか。


何時間も戦い続けた結果、英雄たちはやっと満足したのか、戦いをやめ……聖域を立ち去った。


えっ!?


ちょっとまって、俺の師匠の件とかどうなったの?

なんでみんなすがすがしい顔で行っちゃうんだよ。


えー……。


俺が、唖然としていると、魔法使いの少女、リーリアがトテトテと走って俺の下まで戻ってきてくれた。


「えっと……忘れてたわけじゃないんですよ?ほんとですからね!」


そう、慌てながら弁明をしている。


「えっと、リーリア、さん。あなたが俺の師匠、ってことなんですか?」


「ええ、はい。あっ、リーリアで、いいですよ。多分、私のが年下なんで……」


リーリアが、ローブのフードを脱いで、髪を整える。

露わになった、姿を見ると、確かにどこか幼げだ。

俺よりも、二歳か三歳かそのくらい下かと思われる。


「私が、カナタさんの師匠に任命されました!大賢者リーリアです!よろしくお願いしますね!」


リーリアは、大賢者、という部分で胸を張りながら、誇らしげに挨拶わわした。


「うん、じゃあ、よろしくなリーリア……えっと、師匠役って二人にするとか言ってなかったっけ?」


「あっ、それなら、あちらの方に……」


リーリアが、指をさした。


その方向には……


床に大の字になってノビている、上半身裸のおっさんがいた。


「おうっ!誰がおっさんじゃ!」


突然そういって、おっさんこと、マキシムさんが起き上がってこちらに来た。


「俺はな!これでも、まだ25なんだよ!チーットばかし老けて見えるが、それは、あれだ、修行の成果だ!」


「はあ……」


「おう!俺はマキシム!格闘家!大地を切り裂く男マキシムだ!よろしくな!あー……小僧!」


「よろしくお願いします、マキシムさん。えっと、俺はカナタです」


「おう!よろしくな!小僧!俺にも、そんなかしこまった言葉はいらねえから、気楽に仲良くしようぜ!」


「えっと、わかったよ、おっさん」


「お前、また……せめて、兄ちゃんとか、アニキ、とかじゃダメなのか?」


「じゃあ、アニキで」


「おう!そっちの、嬢ちゃんも、俺にはフランクに接してくれよな!」


急に話を振られて、リーリアは慌てふためきながら話す。


「え!えっと、あの、私は、その、これが、基本スタイルのフランクなんで!このままで、お願いします、マキシムさん」


「ほー、そうなのか。まっ、無理強いはしねえから」


「それで、どうして、リーリアとアニキが俺の師匠に?とても、あの戦いの中で会話してるようには見えなかったけど」


「それはだな!戦うことで、みんながみんなお互いの戦い方とかを把握してだな、適材適所というやつだ!」


「え?」


「あのね、私が選ばれたのは、魔法は専門の魔法使いに教わるべきだってことで……要は、いろんなスタイルを学ぶための、土台づくりに最適だって、采配」


「そうそう、俺は、見ての通り、剣でも拳でも、なんでもいけるし。ほら、俺格闘家じゃん?だからさ。てえことで、肉体担当は俺」


「魔法担当は、私って、こと」


「旅するにしても、新米の小僧連れてくなら、近距離と遠距離のスペシャリストが一緒にいた方が、安定したパーティーになるだろ」


「なるほど……」


意外と理にかなっていた。

ただ、戦っていただけで、ここまでの段取りをすませるとは、さすが英雄。


しかし、俺には、ずっと気になっていることがある。


「あの」


「なんだ?」


「どうして、ずっと裸なんですか?」


「裸で転送されたからな、服も剣もそこらへんに一緒に転送してくれればいいのにな!」


マキシムはそう言って、ガハハと豪快に笑う。


「さっき、ディミヌさんがステータスから服も剣も出せるって、教えてくれたよな!」


「ん?覚えてねえや!ガハハ!まあ!とりあえず、聖域を出ようぜ!」


そう言って、マキシムは、堂々たる足取りで、神殿から出て行く。


上半身裸のまま。


「あの!服を!」


「おう!ありがとよ!」



感謝の言葉を述べるが、一向に服を着る気配がない。


それに、ため息をつくと、よこで、リーリアが苦笑いしていた。


「あはは、これから頑張ろうねカナタさん!」


……。


俺だけでも、リーリアを困らせないようにしよう。


この子は、困らせちゃいけない、そんな使命感が、俺に押し寄せた。


神殿を出ると、最初はただの柱だったものが、今は、荘厳なゲートになっていた。


「ここを、くぐると、ワープするみたいだね。場所は危険すぎない場所にランダムって言ってたけど」


「ふぅん、とりあえず、食料と生活資金を確保しないとな。まっ、しばらくは持ち前のアイテムで生活出来るから、小僧をある程度育ててからでいいだろう!ほれ!」


マキシムは、ステータスカードから、干し肉を取り出し、俺とリーリアに投げた。


「ありがとうございます」


「おう!」


「ありがとう……なあ、アニキ」


「なんだ?」


「ステータスカード、使いこなしてないか?」


「おおぅ!これが、ステータスカードだったのか、ナチュラルに使っててわからなかったわ!……おお!あったぞ、俺の服に、俺の武器コレクション!いやー、よかったよかった」


これで、やっと、服を着てくれるはず……。


「よし!じゃあ行くか!」


そう言って、景気良く、一歩を踏み出して言った


「だから、服を着ろって!」


俺も、それに続く。


「ワープか……面白いかも」


リーリアも、好奇心旺盛な顔で、何かを考えながら、続いた。


こうして、俺たち三人は、旅を始めるのだった。


旅の目的は、


一つ、俺を強くすること


二つ、困っている人々を助けること


三つ、敵の神の使いを倒すこと


この三つだ。


詳しいところはよくわからない。


でたとこ、勝負というやつだ。

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