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十人の英雄と女神様


「うわあ……」


「おぉ……」


神殿の中は、外からの無骨な見た目とは裏腹に、綺麗なつくりをしており、ぼんやりとした光に包まれていた。


「ふむ、君たちで最後だな」


神殿の奥には、九人ほど、人がいた。

彼らは、皆、ディミヌと同じようにいかにも戦います、といった格好をしている。

その中の一人、全身に白を基調とした鎧をつけた青年が、俺たちに声をかけた。


「あの、ここは?」


「さあ、まだ、詳しい説明は受けていない。十一人揃ってからと、告げられてね」


「誰に?」


「ここの、神に」


その時、神殿の光が、強まり、激しい光に目をくらました。


光が弱まると、神殿の石は全て、光を反射するクリスタルになり、

神殿の奥には、光り輝く椅子と、

後光を放つナニカが座っていた。


十人が、それぞれ、自分の武器を構え臨戦態勢をとる。


すると、ナニカは、穏やかに微笑み、口を開く。


「あなたたちを、この世界に呼んだのは私です。私は、この世界の神の一人、智を司る女神ミリシア」


「なぜ、俺たちを呼んだ」


「この世界を、救うため」


「……救う?」


「ええ、この世界は、今、滅びの危機に陥っています。力を司る神ジェスタと暴の柱ドリスティンが、我々に反旗を翻しました。彼らは、現界を滅ぼすことで、他の神を堕とそうとしているのです」


「神同士のいざこざってわけか」


「ええ……彼らは手下の魔物を作り、他の世界から強大な力を持つものを呼び寄せることで、現界に干渉しています。神は、直接、現界に干渉することができないから」


「それに対抗して、俺たち、か」


「彼らを、止めるために、私は神の代表として、あなた方を召喚しました。あなた方はそれぞれが、それぞれの世界を救った、強大な力を持つ戦士です」


「へえ、こいつらが……」


「元々の世界とは、この世界は法則などが違いますが、あなた方は元の力を存分に振るうことができます。どうか、その力でこの世界を救ってください」


「断ることは?」


「自由です。しかし、元の世界に帰りたいのなら、この世界を救うしかありません」


「……ッチ」


「あなた方にも、多少なりとも、メリットはあります」


「それは?」


「あなた方のさらなる伸び代を知ることと、この世界の力を得られることです。手のひらを上に向けて、そこに力を集中してみてください」


戦士たちは、言われた通りにする。

すると、手の上に、ゲームのステータス画面のようなものが浮かび上がった。


「それは、あなた方の力を客観的に記したもの。あなた方の、力や技能、特殊な能力、それらのレベルや、詳細な説明が記述されています。極めたことのない、項目などもあるはずです。それが、あなた方の知らなかった、伸び代」


「なるほど……」


「へえ、面白いな」


「そして、この世界には、この世界独自の技能や、魔法などが存在します。それを身につけるのも、いいでしょう」


戦士たちは、渋々といった形で納得をしている


「また、それぞれの戦士たちと連絡を取ることも可能となっていますので、どうぞ、連携をしてください。それでは、これからの、あなた方の歩みの方針をお話しします」


それから、しばらく、この世界のことや、敵の神のことなどを聞く。


「最終的には、彼らの軍勢の、頭となる召喚された者と作り出された魔王を打ち取っていただければ、あなた方の役目は終わりとなります。なにか、質問は……?」


戦士たちは、なにもないのか、決意を込めた顔をしている。


しかし、俺にはあった。

どうしても聞きたいことが。


「あの……」


「はい」


「俺、英雄とか戦士とか程遠い存在なんですけど、何で呼ばれたんですか?」


そう、俺はただの、高校生。

こんな、英雄たちのオールスターバトルに呼び出される筋合いはない。


「あなたは……私たちの切り札です」


「はあっ?」


「あなたは、十の世界の英雄、全ての力をその身に宿すことができます」


「なっ……」


「ほぉ……」


「……フッ」


「いいね」


戦士たちは、その言葉を受けて、驚くもの半分、ニヤリと笑うもの半分。


俺は、もちろん、驚いている。


「一子相伝の力でも、その世界の人特有のエネルギーも、身につけることができます。しかも、超短時間で」


えっと、それは……


「あなたは、最強の戦士候補で、最高のお弟子さんです」


戦士たちのほとんどが、ニヤリと笑いながら、俺のことを見つめる。


えっと、つまり……俺って、チートキャラに、これからなるのかよ。


……………


なんだよそれ、面白そうじゃねえか!



神は、その姿を消し、十の英雄と英雄候補と、そして、聖域だけが残される。


「さて、この少年……えっと、カナタの面倒は、だれが見るか、だな」


ステータス画面で、全員の名前が見れるようだ。

白い鎧の戦士、アルディナが、周りに促す。


「いくら強くなるっていっても、一人前になるにはしばらくかかるんだよね」


獣耳の斧を持った少女、アーシャ。


「僕たちの力を身につけられるってのは、魅力的だけど、僕たちも世界を救うために旅に出なきゃならないしね」


頭に小さな王冠をつけた戦士、ギリシャ。


「まっ、十人もいるんだし、急がなくてもいいんじゃねえか?どのみち、カナタを鍛えた方が、効率はアガんだろ?」


大量の武器を体に身につけた戦士、オーゼル。


「私は、移動とか遅いから、後続組的な感じになってもいいけど……」


ローブを体に巻いた魔法使いの少女、リーリア。


「移動か、早めに世界の各地に散るのが一番、世界の人を守りやすいのか?」


黒いロングコートに剣のつかだけを持った戦士、コクラン。


「国の中枢に入るというのも、また手だとは思うがの。あぁ、ワシの戦闘スタイルは身につけたければ、後にした方がいい。初心者向けとは言えん」


特大のハンマーを担いだ老戦士、ファゼル。


「まっ、二人組あたりが、最適な人数じゃね?ひよっこは、ひよっこと師匠二人の三人組で」


スーツ姿で二丁の銃を持った戦士、アクセラ。


「ところでさあ、俺の武器と服はどうすりゃいいのー?ずっとこれは辛いぜ?」


上半身裸の素手の戦士、マキシム。


「ステータスの機能で、自分の道具は取り出せるはずだよ。ミリシアの話、聞いてなかったの?」


銀髪の王国騎士、ディミヌ。


「ふむ、まあ、それぞれの戦闘スタイルや、技量を知るために、一つ、腕試しをするか。この聖域は、絶対に壊れないらしいし、ここでのダメージは全てなかったことになる。それに、他の世界の英雄というのが、どの程度のものか知りたいしな」


アルディナが不敵な笑みで告げる。


「そっすねー、その方が、コンビも組みやすいだろうし」


「カナタにも、選ぶ権利があっていいと思うしな」


「そうだね……でも、遠距離型の魔法使いと、近距離型の剣士とかが戦うのはどうなの?」


「それくらい対応できるだろ、英雄なら」


「まあ、うん」


「では、始めようか、まずは、私が戦おう」


「では、ワシがやってやろうかねえ」


こうして、カナタを置いて、戦士たちは戦い始めた。


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