目が覚めたら、銀髪美少女が目の前にいた
「……ぉ……おぃ……」
なんだよ、うるさいな。
「……おい……おーい」
もうちょっと寝かせてくれよ。
まだ、目覚ましだって鳴ってないだろ。
てか、なんか、布団かたくね?
「おーい、起きてよ……ねえ!」
「うわっ!」
俺に声をかけていた人物は、寝ている俺の肩を急に揺さぶった。
流石に、俺も驚いて目を覚ます。
「やっと起きたね」
「そりゃ、起きるよ……」
俺は、眠りから半覚醒な状態で応対する。
ぼんやりした視界をはっきりとさせるために、目をギュッとつむってから、パッと開く。
開いた視界には……
太陽をキラキラと反射する長い銀髪の美女が写っていた。
「……は?」
見間違いかと思い、もう一度目をつむり、開く。そして、念のため、ほっぺも引っ張ってみる。普通に痛かった。
「ん?どうかしたの?」
「いや、えっと…… どちら様ですか?」
「あー、私?私はディミヌ、自警団『アポロン』のリーダーで王国特級騎士のディミヌだよ」
ディミヌは、朗らかな笑顔で答える。
言われてみれば、ディミヌは軽装だが、体の各部に鎧らしきものをつけており、肩からは剣の柄がのぞいている。
「君は?」
「俺は……奏多です。日本の高校生三年生の奏多です」
「カナタね。それに、えっと、コウコウサンネンセイ?あー、よくわかんないけど、よろしく!」
「よろしくお願いします。えっと、つまり、俺は学生で日本は出身国です」
「あー、なるほど!学生ね!ニホンってのは知らないけど、まあ、そんなこと気にしてる場合じゃないよね」
「え?」
「ここ、どこなんだろうね」
ディミヌは周りを見渡す。
俺もそれに倣い、周りを見渡した。
すると、そこにはもちろん俺の布団はなく、俺の家もなく、知っている街並みもなく、ただ、石畳が広がっていた。
そして、少し先には、いくつかの柱と、神殿らしきものが構えている。
「……さあ?日本じゃないことは確かですね」
「私の知ってる場所でもないね」
状況を整理しよう。
俺は、目が覚めたら、突然、知らない場所にいた。
目の前には、見知らぬ女性。
その女性は、日本人ではなく、何処かの王国の騎士で剣を所持している。
この展開から、考えよう。
一番有力なのは、
「異世界召喚……かねえ」
それが、一番ロマンがあっていいな。
「じっとしてても埒あかないね。とりあえず、あそこ、入ってみる?」
「そうですね」
そして、俺たちは、謎の神殿へと足を踏み入れた。