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プロローグ
大きな魔法陣が、空に浮かび、爆音を轟かせて雷が無数に降り注ぐ。
「さあ!カナタさん!これが私の、最後の魔法です!」
ローブを着込みフードを深くかぶった少女は魔法陣の上に浮かび、雷の下にいる少年に向かって叫ぶ。
少年もそれに匹敵するほどの魔法陣を浮かべた。
全てを飲み飲む、渦巻いた激流が生まれ、雷を飲み込んでいく。
爆雷と、激流がせめぎ合う。
やがて、激流はその勢いを失い、終には雷に魔法陣を打ち砕かれた。
空を裂く雷が、少年を撃ち抜くかと思われた瞬間、少年の姿は霞に消えた。
「…………」
ローブの少女は、しばし、黙りこくった後に、フードを外し、ニッコリと微笑む。
「あなたの勝ちです、カナタさん」
そう言って、後ろを振り向くと
そこには先ほどの少年が、魔法陣を構え、佇んでいた。
「ああ、俺の勝ちだ!」
カナタと呼ばれたその少年は、心底嬉しそうに、笑って、魔法陣を上に向けて放ち、
そして、大きな、花火を空に咲かせた。
これは、カナタという、一人の少年が、
世界を救った、十人の英雄の弟子となり、
新たな十一人目の英雄譚を刻む物語。