第十七刀 大きな買い物済ませたあと〜解放日記1〜
今回うちに来ることとなった人達を紹介しよう。
まずは俺&広人ペア。
西北万里。全身の筋肉が白筋、つまり凄く瞬発力のある21歳だ。父親の友人が夜逃げしたため連帯保証人がどうのこうので売られてしまったと言う、泰氏曰く良くある話だと。
益田桃華。特に目立った所は無かったが白井先輩の様なオーラがあった為連れてきた。こちらも同じ様な経緯があったらしい23歳。
上中智子。事務的な事が出来る資格を持っているが騙されやすい。(本人曰く)人が疑えないらしい22歳。なんやかんやで騙されて気づいたら売られていたと…
続いて泰氏&千条院ペア
三島成実。犬の耳、尻尾を持つ18歳。
島里美波。猫の耳、尻尾を持つ20歳。
北島祥子。狼の耳、尻尾を持つ21歳。
獣耳っ娘がこの世界にいるのか!?と思った人も多いだろう。(俺も思ったよ)物の怪の最高権威の先生曰く何らかの形で物の怪の力と融合してしまったらしい。ただ希な症状でも無いらしいが一般人より強靭なためよく売られてるとのこと。
最後に萌&琵琶子ペア
これが心配してた通りの事をやらかした…
中学2年生の少女。記憶喪失らしい。
南東鈴谷。12歳。
東益撫子無邪気そうな10歳。
完全にアウトだろーが!
だってこの年で奴隷なんて可哀想そうじゃん。が萌の談。
分かるよ。俺だって助けたいし言ってることも分かる。けどなんで俺の名義で買ってるんだい?俺を社会的に殺したいの?
まあ済んだことは仕方ない(泣)そして少し前に9人と言ったことを訂正します。余った金を合わせたら1人分になったのでもう1人我が家に招待しました。
三上響。特に特徴はないのだが一応この世界でタメになる子もいたほうがいいと思い招待した。
なぜ男性がいないかというと女性よりかは少しお高い。というのともともと今回の目的は(萌の願望で)ターゲットを女性に絞っていたから。
貴族田中家宅
この世界は科学と魔法の両方が発展している。魔法は基本的に科学的事象を霊力を使って無理矢理に引き起こすというものだ。一般人にもある程度は使えるらしいが火種を作ったりする程度で全く使えない人もままいるという。さっき言った通りこの世界の魔法は科学的事象つまりほとんどが物理現象を認識し、それを霊力により自分のイメージを上書きするということになる。要するに物理量の演算。この処理能力が高いと簡単な魔法なら一瞬で行使できる。この前比叡さんが敵を縛り付けたように。
なぜこんな話をしているかというと奴隷の大移動を公共交通を使うわけにもいかない(黙認されているだけで非合法ではあるのだ)。そのためここで魔法が役に立つ。
今その魔法を管理している大元はうちの学園を経営している「禁架」なのだ。この謎組織(比叡さん創立)禁架が魔法を開発、発展させてきたのだ。禁架が認可なしで使用することを禁止している魔法は全部で200個。それらをすべてを使える人は物の怪討伐部隊の中にも片手の数がいるかいないからしい。
たまに生まれついて魔法を使えるものがいるらしく一定範囲の空間を数値化しその数値をいじることで空間転移が可能な魔法があった。その魔法は汎用性が少ないため一部の人しか使えない魔法だからあんまり意味がないらしい。
というわけでそんな便利なものがあって使わないわけはないと千条院さんに頼んで使ってもらった。
そして…
「さてと… まず風呂に入って着替えてきてくれ。萌案内頼んでいいか?あと千条院さんは萌と付き添いで子供のお世話してもらっても?」
「ええ、いいわ。」
「そんで琵琶子はみんなの服を。あと泰氏、広人は俺と昼飯の準備だ。」
「「「了解 (だよ)」」」
30分後
食堂に全員が集合しているがみんな戸惑っている。それもそうだ。奴隷として売られたのに扱いは予想外の普通。それなりの覚悟をみんなしていたのだろう。だがそんな日ももう終わりだ。
今まで食堂の長テーブルの端っこに4人で食べていたのに今やほぼ満員。位置は今までの位置に俺、萌、広人、琵琶子、その隣に千条院さん、泰氏が向かい合って座りその奥に10人向かい合わせに座ってもらっている。俺は立って今日来てくれた人たちの方に向かう。それに反応してみんな少し顔を伏せる。まあそりゃそうだわな。みんな、いくら待遇が良くても奴隷という立場に立っていると思っているんだ。
「えーと、そこまで緊張しないでもいいんだけど…まあいいか。みんな聞いてくれ。俺たち田中家は君たちを手放す。」
は?と頭を傾げた後青ざめた。
「あー、言い方が悪かった。別にそこらへんにほっぽりだそうってことでもましてや奴隷として転売なんかしない。俺たちは貴族でも奴隷制度反対派だ。みんなを開放するために来てもらった。」
さらに?をつけるみんな。
「お前達はもう奴隷じゃない。好きなように生き、好きな事をする。そんな当たり前ができる一般人では無かった。けどそれも今日までだ。しばらくはこの家で家事とか手伝ってもらうけど後々は自立して貰いたいと考えている。ここまでで質問あるか?」
恐る恐る手を挙げているのが二人確か名前は上中と三島だ。俺は先に近くだった上中を指名する。
「あの…その…手伝うって…どの…範囲までですか?」
「あくまで俺達が学校に行っている間に買い物に行ってもらったり風呂の掃除を手伝ってもらうとか本当にただの家事。夜に部屋に呼ぶことはないし俺達4人の付き人になれって言うものでもない。」
それを聞いて少し安心したのか顔を上げるものがチラホラ。そしてもう1人、三島の方の質問を聞く。
「2つ聞きたいんですけど…、いいでしょうか?」
「そんな遠慮しないでくれ、今の俺達は家族だと思ってくれ…って言っても普通思えないよな。」
「いえ、そう言う訳じゃなくて…」
「?どうした。」
「自分達とはちがう身分なので少し…」
しまったな。先に自己紹介しとくべきだったかな?
「あー、その点については後々話す。先に質問聞いておこう。」
「あっ…はい。先ほど俺達4人がと言ってましたが何故今は6人何でしょうか。あとお仕置きとかはない…んですよね?」
「やっぱり先に自己紹介しとくべきだったな…、悪い。あとさっきも言ったけど俺達は家族でここはお前達の家だ。気に入ったなら住んでもいいし、逆に出て自立してもいい。お前達は自由だからな。」
「正也、そろそろご飯冷めちゃうよ。早く食べよ。」
「空気読め、アホが。まあいいや、自己紹介は後にして先に昼食にしよう。市場でみんなの今までの食事を考慮して少し胃に優しいものにしたんだ。食べてくれ。」
メニューは生姜とネギのお粥に梅干し、薄めの味噌汁、デザートにはリンゴ(ちなみにウサギリンゴです)とゼリー。
今まで粗末なご飯しか口にできなかったからかみんな涙ぐんでいた。
さらに30分後
デザートのリンゴを食べてるとき
「さてと自己紹介をしようか。俺も君たちのことは書類上の文字でしか知らないから。まずは俺から。田中正也、高校一年生だ。一応元平民の貴族で田中家の家長になっている18歳だ。」
「次、私ね。」
と言いながら萌が手を挙げる。
「私は、桜谷萌。この家に住んでいて、正也とは幼馴染で一応許嫁なんだ。「おい。」田中家とは親戚になる桜谷家の家長をしてます。あと子供が大好きなんで鈴谷ちゃん、撫子ちゃん困ったら何でも頼ってね。」
と、子供たちにウィンクまでした。けど今時そんな挨拶みたことねーわ。
次は正面の広人に目線を送る。
「じゃあ次は僕かな?僕は永山広人田中家の親戚の永山家家長で正也の幼馴染なんだ。僕もこの家に住んでいるので困ったことがあったら聞いてね。あとトランプとか花札とかカードゲームが好きなんで付き合ってもらえる人がいたらうれしいかな。」
そういってマジックでどこからかトランプを一枚出した。というか広人ってトランプそんなに好きだっけ?
と一瞬疑問に思ったことが顔に出たのか広人がこっちを向いてにこにことしていた。
なるほど。みんなが食事により警戒心が解けてもまだ完全に安心しているわけではない。おそらくみんなの心を開くためにあえてトランプと言ったのか。広人の空気を読むスキルは本当に脱帽だよ…
「最後は私ですね。私は八百万琵琶子。正也さ…正也とは高校の同級生で田中家の親戚なので私もここに住んでいます。とにかく人としゃべることが好きなんでよろしくお願いします。」
その口調前にもやめろっていったのに…
まあ緊張していたから仕方ないか。
「俺たち4人がこの家に住んでいるんだ。さっきも言った通り俺たちはもともと貴族じゃなかったんでけどとある事情で貴族の称号をもらったんだ。だから気を楽にしてほしい。」
といってもやっぱり少しは警戒心残るよな…
「それじゃあ泰氏と千条院さん、お願いします。」
「岩貞泰氏です。ここには住んでないけど正也とは親友なんでよくここにきています。僕もちょっとした事情で貴族になったんだ。気軽に泰氏って呼んでもらえるとありがたいかな。堅苦しいの抜きで。」
真面目君か!!もうちょっと砕けた言い方なかったのかよ!みんな少し警戒したぞ、おい。とそこで千条院さんのご登場。
「千条院サーシャよ。この子たちの一つ上で私自身は貴族じゃないわ。それと犬と猫が大好きなのよ。というわけで三島さん、島里さん、北島さん…」
ごくりと三人がつばを飲む。
「…耳触らせて。」
三人が耳を隠した。なぜに?
「この子たちは耳を触られるとくすぐったい、というか人間の性感帯に近いらしい。特に犬は耳がいいから敏感なんだ。」
と俺の二つ隣の泰氏が小声で教えてくれる。
向こうも自己紹介してもらったけど書類に書かれていたこと以外はわからなかったな。今度好きな食べ物とか聞いてみよう。
「さてと、最後の自己紹介なんだけど…」
そう最後の子は記憶喪失の中学生。どうしようか。
「できないならしなくていいぞ。」
「…」
無反応。困るな、このシチュエーション。
「よし、名前をまず決めよう。と言ってもなー、すぐには…」
俺は途中で口をつぐんだ。理由としては急に頭痛がしたからだ。そして、目の前が真っ暗になった。
読んでいただきありがとうございます。
最近空き時間に筆(というかキーボードですが)を取れるようになりましてスピードが上がりかけています。
まあこんな話は要りませんよねー。
前回、今回は本当に失礼しました。9人登場予定が名前を作ってる段階で数え間違ったので10人になってしまいました。無理矢理感があるとおもいますがご了承ください。
とまあ堅苦しいのはここまでにしましょう。
この物語結構暗転しますねー。書いててそう思っちゃいました。さて正也はどうなるんでしょうか。次回「大きな買い物〜解放日記2〜」です。
それでは桜の降る季節に
(1回言ってみたかったんですよ(笑))