第四十四話 歴史の大見出し
「ゴードンさん…… あなたまでも……」
フルはゴードンを見て、悲しげに言う。
「そんなに憂うことではないよ、ヤタクミ君。大きな勢力の中では、誰かが裏を引いている。世界なんて所詮そんなものだ」
「そして、人類の歴史に大見出しを加えるのよねぇ。でも、今回ばかりは私が皆殺しにしちゃうから意味なんてないけどね」
ゴードンの言葉にリュージュが続ける。
リュージュの表情は、子供が新しいおもちゃを得た時のように、満面の笑みで覆われていた。
「なんかもう飽きちゃった」
しかし、リュージュの笑みが一瞬で般若の面に変わる。
「いい加減死ね」
先ほどと同じ、幾重の魔法球がフルたちを襲う。
「死ね」
爆風が起きるまもなく、リュージュは次の球を放つ。
「死ね」
三度目の球を放つ。
「死ね死ね死ね死ね!死ね!死ねぇぇええ!!」
何度と放つ。
爆風で飛び散った砂が、嵐のように宙を舞う。
その砂嵐で、隣の人の顔が識別しづらくなるほどに視界は悪化していた。
そんな中で、サリーは感じた何かの気配と、勘をたよりに蔓をリュージュの目の前に伸ばす。
キィン、と鉄の交わる音。
リュージュは目の前の光景に、今まで見せたことの無かった驚きの表情をして、絶句していた。
代わりに、サリーがこう一言。
「やはり、あなたという人はとことんしぶといのですね。」
何かの風圧でリュージュの目の前は砂嵐がすっかり晴れ、そこにはフルが剣を構えていた。




