第四十三話 現れた訪問者
「……負け惜しみね」
リュージュはパチリ、と指を鳴らす。
と、同時にオリジナルフォーズが唸る。
それは振動となり、大地を揺らす。
「……おお……! さすが、さすが『オリジナルフォーズ』……神をも封じることの出来なかった……この力!」
「……そんなのに、適うのかしら?」
リュージュは笑みを溢して言った。
「……ああ! きっと勝つ!」
フルはシルフェの剣を、もう一度構える。
「シルフェの剣……。大賢者シルフェ・スタンドアローンが自身の魔力を糧にして作ったとされている……でも」
「なにが大賢者によって作られた剣? そんなのまやかしにきまってるわ。バルトたちを倒せたのも所詮“運”よ。彼らは“運”が悪かったから死んだ」
リュージュはスラスラと言った。
「仲間が死んだ事を苦と思っていないのか」
フルが言った。
「苦?」
リュージュはあっけにとられたように言った。
「苦になんて思うわけないじゃない。確かに彼らは私の下僕として、とても優秀に働いてくれたわ……」
「……死ぬまでもが計画のうち、とでも!」
メアリーは叫んだ。
「ええ。私は私の野望を達成させるためになら、なんでもやるわ」
同時に、足音がきこえる。
フルの背中が、冷たい汗が伝う。
「お兄ちゃん!」
フルはその声に聞き覚えがあった。
「……え?」
フルは後ろを振り返った。
そこにいたのはオレンジのワンピースを着た、中学生ほどの少女。
「……なんで、ここに……?」
「お兄ちゃんこそ、なんでここにいるの? こんなところにいないで帰ろうよ」
少女はフルの袖を引っ張る。
「……いいかげんにしろ」
「え? お兄ちゃん、何?」
刹那、シルフェの剣が彼女の肩を切り裂く。
「……うっ……いったぁ……なにすんの! お兄ちゃん!」
「おまえは……妹じゃない」
「な……何言うの! 私は……」
「知ってるか? 俺の妹は……右目の下に泣きぼくろがあるんだよ!」
「……」
すると今までとは全く違う音域、表情、口調で言った。
「……やはり『見たことのないもの』をコピーするのは無理……だなぁ」
「……かなり早くバレてしまったな。流石だ」
リュージュは不敵な笑みをこぼす。
いつの間にか、あたりに煙が立ち込める。
しかし、それは冷たい。煙ではないようだ。それは少女の顔をすっぽりと被った。
「……覚えているかな? 予言の勇者、フル・ヤタクミ」
それはゆっくりと歩きだす。
「……お、お前は……」
「……覚えてくれていたか。そうだ。私はハイダルク国軍第一近衛師団長、」
「ゴードン・グラムだ」
※執筆当時は某錬金術漫画にはまっていたころでしたね。連載終了後の盛り上がりも相まって。




