第四十二話 力の目覚め
フルの目の前、ちょうどリュージュの真後ろに、オリジナルフォーズが姿を現していた。
ハイダルクでも見たその巨躯は、体を支えている4本の足までも、様々な生物の面で埋め尽くされていた。
グゥオオオォォォオオォオオオ!!
大地までゆれる大きな咆哮。
それはオリジナルフォーズの、力の目覚めを示していた。
「これで完璧ね。ついに、オリジナルフォーズは完全に覚醒したわ」
リュージュは興奮したように、怪物の巨体を見上げて言う。
しかし、再び振り返って、
「フル・ヤタクミ、あなたにはいくらお礼をしたって足りないくらいだわ。だからこそ、お礼としてさっきの約束はちゃんと守りましょう。メアリー・ホープキンとルーシー・アドバリーは解放してあげる」
すると2人を宙に縛り付けていた蔓が解け、メアリーもルーシーも綺麗に着地した。
2人ともフルの元に駆け寄ってきて、リュージュと対峙する。
そこにリュージュが呟くようにこう言った。
「まあ、ここで殺しちゃうから意味ないけどね」
パチン
リュージュが指を鳴らす。
突然三人を、炎の、水の、電気の、木の葉の球が、当たれば瞬時に人を殺める魔法が全方向を覆った。
頭上まで覆われ、逃げる隙もない。
「フル・ヤタクミ、あなたの記憶はもう限界よね。これで、あなた達に邪魔されることはないわ。じゃあね、バイバイ」
リュージュが再び指を鳴らす。
魔法の球が三人に向かって高速で動き出す。
(できるのか? いや、やらなきゃ!)
フルは“ガラムドの書”に願いを乗せる。
『あの魔法から自分達を守ってくれ』、と。
「死んだわね」
着弾点には爆発の衝撃で砂埃が舞い、三人の亡骸は確認できないが、リュージュはそう確信してた。
「なんかあっけないものね。ぜんぜん楽しくなかったわ。そう思わない? サリー」
「そうでございますね、リュージュ様。それでも、世界に破滅をもたらすためには、ここで手こずっている暇はないのです」
「あなたの言うとおりだわ。さあ、地上に絶望を与えにいきましょうか」
リュージュはオリジナルフォーズを呼び出そうとする。
しかし、シュッとリュージュの頭めがげて何かが飛んできた。
サリーはすかさずその何かを手で取る。
「これは…… シルフェの矢……」
「まさかのまさかね…… やっぱりそうこなくっちゃ!!」
リュージュは鬼の形相で、魔法の着弾点に振り返った。
砂埃は見事に晴れ、殺したと思い込んでいた三人の姿がそこにはあった。
「ちっ…… はずしたか……」
「しょうがないさルーシー。相手にはサリー先生もいるし、今ので当たったら儲けもんってだけさ」
フルは頭を押さえて苦しい表情を見せる。
「やっぱり、もう魔法は使えなさそうだ…… ごめんよ」
「大丈夫よ。魔法がなくてもフルは十分強いもの」
そこに、リュージュが大声でこういう。
「なんか『勝てるぞ』オーラだしてるみたいだけどね…… このオリジナルフォーズがいる限り、あんた達に勝ち目はないのよ!!」
「そんなことはないさ」
フルはすぐさまそう言い返すと、シルフェの剣をかまえた。




