表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ODD  作者: 巫 夏希
41/53

第三十八話 火球と水柱

 瞬間、イルファ兄弟は空へ跳躍した。

 兄弟は、降下に転じたそのとき、ルーシーとメアリーに向かって必殺の魔法を放つ。

 もちろん、兄バルトは火の魔法を。

 妹ロマは水の魔法を。


「そんなの当たらないわよ! 水と火なんて相反する魔法、一緒に打ったら意味ないんじゃない!?」


 二人は左右に跳ぶ。

 空から落ちてくる小さな火球と、その周りを螺旋状にまとわりつく水柱は、ただ跳ぶだけで避けられるとメアリーは考えていた。

 しかし、その球は着弾と同時に、二人の予想を大きく上回る炎を生み出す。

 二人はその爆発に巻き込まれ、体を焼かれて地面に叩きつけられた。

 もがき苦しむルーシーは「そんな…バカな……」と微かな声で驚きを漏らす。

 爆発でできあがったクレーターに兄弟は着地する。

 するとロマは、地面にうずくまるメアリーの元に歩いて、思い切り鳩尾みぞおちを蹴った。


「ぐはぁ゛……」


 メアリーは地面を転がる。

 ゼェゼェと息を荒くして、とても苦しそうにしていた。

 しかし、そんな状況であっても、心は折れていない。

 ロマのことを、思い切り睨んでいた。

 イルファは、もう勝負ありと決め込み、着地点で妹を見つめていた。

 ロマはまたメアリーに近づいてきて、こう言った。


「リュージュ様の子供だからって、警戒なんかして損だったわ。ただのバカ砂利じゃないの」


 ふんっ、とメアリーの体を追い打ちをかけるように踏みつける。


「水と火は相性悪いですって?! 笑わせないでよね。水はいったい何でできてるのかしら? H2OよH2O。水素と酸素に決まってるでしょう。水素は火で爆発するし、酸素は火の燃焼を拡大させる。水そのままならまだしも、分解しちゃえば相性ばっちりなのよ! 私とお兄さまの様にね!!」


 今まで、冷たい水の様に冷静沈着だったロマは、明らかに熱を帯びていて、まるであふれ出す蒸気のように、次々言葉を放った。

 ロマの感情の高ぶりとは逆に、メアリーはニヤリと小さな笑みを浮かべてこう言う。


「たしかに、私たちもまだまだ読みが甘かったわ…… だけど、あなた達も、まだまだってことね」


 すると、メアリーの向かい側、イルファ兄弟を挟んだ向こう側で光が爆発した。

 いや、それは爆発ではない。衝撃も破壊もない、ただ、強烈な光が当たりに拡散し、素早くイルファ兄弟の視界を奪っていったのだ。

 兄弟は腕で顔を隠すも、怯み、一瞬の隙が生まれる。

 その一瞬に、何者かが大地をかけた。


「僕が魔法を使えることを、忘れてもらっちゃ困るな」


 ルーシーがバルトの耳元でささやく。


「しまった!……」


 さすがの大魔術師でも、隙には弱かった。

 ルーシーはバルトに攻撃するのではなく、その手に持っていた物を奪って、瞬時に距離をとる。


「そうか……守護霊使い、君は治癒魔法も使えるのか……」


 バルトは「クソッ」と罵倒を吐く。


「そういうことさ」


 そして、いつの間にかルーシーはメアリーも抱えて、フルの元にいた。


「ほら、君の剣さ」


 フルに、先ほど引ったくった“シルフェの剣”を渡す。


「ありがとう。これでやっと戦える」


 フルは立ち上がって剣を構える。


「2対2で舐められたもの? いや、舐めてなんかいないさ。旗からみてて、正直言ってかなうかどうか、ものすごく自信なかった。でも案外そうでもなかったね。メアリーとルーシー、力あわせての陽動。これで出し抜けて、互角に渡り合ってたんだから」


 そして、イルファ兄弟を睨みつけてこう言った。


「でも、これで3対2だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ