第二十三話 三人の合流
「メアリー!」
フルとルーシーは同時に叫んだ。
「良かった…」
その時。
パチパチパチ
拍手が鳴り響いた。
「いやぁ、よくここまで辿り着けたねぇ。」
「誰だ!」
フルは後ろを振り向く。
そこには見覚えのある、銀髪の男。
「バルト・イルファ…!!」
フルはその名を叫ぶ。
「お前の仕業か…!!」
フルは剣を構える。
「やっぱりこの場所が分かってしまったんだね。証拠隠滅兼実験体の為に村人をこっちに連れて来たはいいけど、僕は守護霊の消去に関しては専門外だからねぇ。やっぱ、ここに来るのは時間の問題、だったのかな」
「う…うるさい!!」
フルは剣をバルト・イルファに刺す…しかけた。
フルの構えたシルフェの剣が、何かによって弾かれたのだ。
「な……」
「君たちはね、組織の事を知りすぎたんだ。だから、死んでもらうよ」
「フル!!逃げて!!」
ボォォォォ
バルト・イルファが放った炎がフルを包む。
「フル!!」
「ハァッ!!!!」
フルは剣を一振りした。
するとシールド的な物が出来、炎を破った。
「フル、大丈夫!?」
「あぁー。ちょっと火傷した。」
「まぁ、あれでしない方がおかしいけど…」
「ククク…。流石は伝説の勇者。やはり…これを使うしかなさそうですね。」
パチン
バルト・イルファが指を鳴らすと後ろから男が出てきた。
「…?」
「彼もメタモルフォーズです。ま、実験体ですけどね」
すると男は手で円を描き始めた。
そして、
ボォォォォ
バルト・イルファは再び炎を放った。
「無駄だ!」
フルは手を合わせ、放った。
しかし、そこに出来るはずのベールができなかった。
「な、何でだ!」
「ククク…。君は魔術を手にしたばかりでまだ知らないのかもしれないけど、魔術にもちゃんと原則はあるんだ。」
「彼は…もう何のメタモルフォーズか分かるよね?」
「…空気、ね」
メアリーが言った。
「ピンポン。ご名答。でも、それが分かっただけで僕には到底勝てない!!」
ドガァァァン
ドガァァァン
よけ続ける内に、メアリーは思った。
(魔術師はいくら高名でも精神力─その魔術の源、には限りがあるはず…。なのに、なぜ、)
(バルト・イルファは打ち続ける事が出来るの!?)
「ククク…どうせあなた方は僕がなぜ魔術を打ち続ける事が出来るのか、なんて思っているんだろうね…。」
「いいよ。隠す事もない。教えてあげよう…」
とここまでバルト・イルファが喋った、その時だった。
「もうよい、バルト・イルファ」
「はっ」
ジジジジジ…
バルト・イルファの奥から人が出てきた。
フルとルーシーは見覚えがある。
そう、リュージュだった。
「リュージュ…!!」
二人はその名を叫んだ。
「ちょ、ちょっとどういう意味?!私にも話なさいよ!!」
メアリーはちんぷんかんぷんだ。
「ほう…メアリー、そこにいたのか」
ゾクッ
「な…なんで知ってるのよ…?」
メアリーはフルから全てを聞き、リュージュに対しそれなりの対応をとった。
「…まだ、教えないでおこう。バルト・イルファ、もう帰ってよろしい」
「ハッ…」
ヒュン
バルト・イルファは闇に消えた。
「さて、予言の勇者、フル・ヤタクミ。私を倒したければ南国『レガドール』に来い!私はそこで待っている!」
「ま、まて!」
ブウウウン
「消えた…」
ドガァァァァン
突然、研究所が爆発を始めた。
空気のメタモルフォーズはおろおろしている。
フル達は大急ぎで外に出た。
ガガガガガ…
ついには研究所は崩壊した。
「南国…『レガドール』、か…」
その頃、どこかの研究所。
コツ、コツ、コツ
「おや、リュージュさま。どうなさいました。」
「なに、"アイツ"の様子を見に来ただけだ」
「様子は良好で御座いますよ。もう少しで完璧なものとなります。」
「実質、どれくらいだ」
「二ヶ月、位ですが…一応訓練をしてから、となるので三ヶ月先になるでしょう」
「頼むわよ。ドクター・シャドウ」
「はい、お任せ下さい」
リュージュの目の先には巨大な水槽があった。
そしてそこには、巨大なメタモルフォーズがぐっすりと眠るように目を瞑っていた…。




