表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ODD  作者: 巫 夏希
10/53

第七話 予言の勇者

 サリー先生が言うには、まだ皆旅から帰って来ないので、三日程授業はない、とのこと。

 学校は先生たちとフル、メアリー、ルーシーのみとなり、学校は静かだった。

 何をするにも、誰も居ない。ただ、じっとするしかなかった。

 フルは屋上で空を眺めていた。

 そしてボソッと呟いた。


「…元の世界に…帰りたいなぁ…。」

「?」


 フルは気配に気付き、振り向いた。

 メアリーだった。


「…メアリー。どうしたの?」

「…いや…暇だからさっ」


 明らかに何かを隠したような口調だった。


「…ところでさ」


 フルが話を切り出す。


「なに?」

「君は何故日本語が喋れるか、は聞いた。でも、『何故僕が日本語しか喋れない事』が分かってたんだい?」

「…こう言っちゃアレだけどさ」

「夢を見たのよ。」

「夢?」




 それは、フル・ヤタクミがこの世界にやって来る一週間前の事だった。

 メアリーは寝ていた。


「メアリーよ。起きなさい。」

「メアリーよ。起きなさい。」

「う、う~ん…。」

「やっとお目覚めになられましたか。」

「あなたは…?」

「あなたの遠い先祖です。」

「…ハッ!もしかして…」

「ガラムド!?」

「そうです。しかし最近の者は信仰心が無くて、この私でさえ呼び捨てにする…。困ったものです。」

「それだけを言いに来たなら寝ますけど」

「いや?本当の用件はこれからですよ。」

「?」

「『予言の勇者』を、守ること、それをあなたに任せたい。」

「『予言の勇者』?」

「数ヵ月前、テーラの弟子が『第二のガラムド現る』と予言したのです。そしてその人は近い内にあなたの側に現れます。」

「…分かりました」

「ありがとう。…じゃあ、あなたと本当に会える日を楽しみにしています!」


 その言葉を喋った直後、メアリーは寝ていた。


「寝ちゃったの…。」


 チラリ。

 時計を見ると午前一時を回っていた。

 メアリーの隣にいるとき、ガラムドは考えていた。


(絶対に、絶対に予言の勇者を守り通して下さい。)

(さもないと、この世界が生まれないかもしれないからね…。)

(メアリー。あなたに希望がかかっている。)

(神の子孫のあなたに…。)





「そうだったんだ…。」

「えぇ。」

「…待てよ。って事はメアリーは…」

「えぇ。校長先生が言ったでしょ?左利きが神の子孫の証、って。」

「…ん?でも、日本語が喋れる…よ…ね?ってことはガラムドは…」

「いや?実際は神ガラムドの母と父が世界を浄化する為に異世界から来て、ガラムドが誕生した、って聞くけど。なにしろ、2000年以上前の話だからね。」

「う~ん…。そっかぁ…。」


 三日後。

 通常なら授業が始まる筈なのに、

 この日まで帰って来いと言われていたのに、

 アルケミークラスはフル、ルーシー、メアリーを除いて、誰も帰って来なかった。


 カチャ。


「授業、始めるわよー。席につきな…あれ?」


 サリー先生が異変に気付いた。


「あれ…他の皆は…?」

「いや…見てませんけど?」

「おかしいわね…。今日までに帰れ、って言ったのに…。」

「ちょっと、待っててね」


 ガチャ。


「…まさか」


 フル、メアリー、ルーシーに一つの事が考え付いた。

 みんな、拐われてしまったのだろうか…。






〔校長室〕


 コンコン。


「どうぞ」

「失礼します。」

「サリー先生。授業中の筈だろう?」

「そっ、それが…」



「なに、アルケミークラスの殆どの生徒が帰って来ていない、だと?」

「えぇ。一応寮の部屋も見てまいりましたが…やはり誰も…。」

「そうか…。」

「…………」

「サリー先生。」

「なんでしょう?」

「どうやら、テーラが予言した『世界の終末』が近づいておるのかもしれませんぞ。」

「えっ……。」

「考えてみなされ。サリー先生。我々も気付かないように敵が入り込んでいたんだ。ということは奴らも目を付けている事になる。」

「まっ、まさか、ヤタクミ達に旅をさせようと言うのですか!?あんな危険な目に合わせておいて!?」

「これからもっと危険になるのはあの三人は百も承知だろう。」

「で、でもっ…それは…。」

「大丈夫。」

「わしに任せておけ。」

「は、はぁ…。」



〔A-1教室〕


 ガチャ。


「…今日は…休講です。」

「!?」

「ただし、」


 サリー先生は一息おいて、言った。


「フィールドワークをしてもらいます。」

「えっ」

「えっ」

「ええ~っ!!!!」


 三人と先生しかいない教室に三人の悲鳴が響いた。

 これが壮大な冒険の始まりだとは…

 誰も知る至はなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ