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海を歌う愉快な黒板

こんな夢を描いているから

作者: 海之本

いつか

いつかね


この足で


世界を

何年も

何十年も

何百年も

時間をかけて

旅をしたい


手には

お気に入りのノートとペン

それから

ほんの少しの着替えを持って


車も

電車も

飛行機も

乗りはしない

道なき道

この足で歩く


音楽が恋しくなったら

鳥や虫の声

風や波の音を聞いて

街の騒めきや鼻歌に

足取りを軽くする


お腹が空いたら

木の実を食べて

魚を釣って

時々

動物たちに分けてもらおうか

町に着いたら

優しいおばあさんの

手作りサンドやシチュー

無口な親父のホットパイ

垂れ目のあの子が作ったケーキ

お腹いっぱい

口いっぱい

頬張るんだ


綺麗な水辺

裸足で歩いたり


壮大な地平線

蜃気楼に騙されて


未踏の洞窟

行き止まるまで進み


そびえる渓谷

山々に名前をつけて


穏やかな海原

船を漕いで陸を目指し


清々しい朝日に

思いっきり伸びをして


柔らかな月光の下

大きな声で歌いたい


どこか

そこか

魅了されたら

大きな木の下

ハンモックぶら下げて

空を見上げながら

浮かぶ言葉をノートに綴り

町や村のはずれに

小さな小屋を建てて

窓辺でたくさんペンを動かす

そんな日々を過ごして

どこかが

誰かが

恋しくなったら

また旅に出かけるんだ


一人は怖くないかって?


この世界は

優しさと温かさで溢れてる


寂しくはないかって?


自然が心を揺さぶり

町に着けばみんなが抱擁してくれる


丘の上

真っ暗な闇が

優しく覆ってくれるから

空を見上げて

両手に抱えられない星々の

音のない瞬き

子守唄にして微睡む

朝は

眩い黄金

空いっぱいに輝かせ

世界の美しさを知らせてくれる

真昼の太陽は

背中を温めてくれて

歩調を緩やかに

楽しい思い出を誘う

そしてまた夜は

月の光に揺られながら

星の歌に目を閉じるんだ


ああ

きっとたくさんの詩が書けるね

そして思うんだ

あの山を越えたら

どんな町があるんだろう?

どんな人達が迎えてくれるんだろう?

どんな料理が待っている?


きっと

きっとね

いつものように

誰かが家に迎え入れてくれて

美味しい食事を用意してくれるんだ

風呂上がりには

自家製の果実酒なんて飲みながら

色んな人の色んな夢

たくさん話して

たくさん聞いて

書き溜めたものから

お気に入りの詩を贈って

誰かが持ってきた

ハーモニカやギターに合わせて

歌い 踊り 笑う

夜が更けたら

明日はどこに行こう?

まだこの街にいようかな?

そんなこと考えながら

心地良いベッドで眠るんだ


きっと

きっとね

ずっと ずっと

何百年も

旅を続けたら

世界を余すところなく行き巡って

いつしか

世界中

どこに行っても顔見知り

だからまた

あの人に会いに行こうって

旅を続ける


どんな詩が書けるだろう?

どんな歌が聞けるだろう?

どんな人に会えるだろう?


夜になれば

その辺りで野宿

風も土も闇も

何も冷たいものはない

だけど

誰かが見つけたら

毛布をかけてくれるんだ

それで朝になれば

珈琲を飲もうって誘ってくれる


たくさん感謝しながら

たくさん何かを手伝って

色々貰いながら

色々贈って

時々恋しくなったら

時々会いにいく


いつか

いつかね

この足で

こんな世界を

こんなふうに旅したいんだ


いつかね

いつかきっと

叶うかもしれないだろ?

だから

お気に入りのノートとペン

それから

ほんの少しの糧があれば

それでいいんだ

ずっと ずっとね

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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんは。 情景があざやかに浮かんで、言葉が胸にしみこんできました。 旅はいいですよね。
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