壁
Tシャツにジャージのズボンという軽装で作業に取り掛かる。一通り拭かれた床と壁は消えない赤黒い色が染みていた。
この状況で窓を開けると道行く人にばれるかもしれない。シンナーの匂いに耐えて、壁を塗るしかない。
いそいで水色ペンキのふたを開け、壁に叩き付ける。シンナーの鼻をつくにおいが漂う。形振り構っていられないのだ。刷毛で伸ばし、色むらを少なくする。食卓に上り、天井近くも塗る。ものすごく臭い。血の付いたところや、明らかにおかしいところを重点的に塗り、何とかごまかせるほどまでいってから窓を開けた。
シンナー中毒になってしまうところだった。勘弁してほしい。これ以上悪い頭を悪くしてどうするんだ。
窓を開け、換気扇をつけた今でもシンナーのにおいが立ち込める。我慢して塗り続けなければならないこの辛さをいったい私はいつまで続けなければならないのだろうか。
全体的に水色がついた壁になった。もう日はとっくに落ちていた。窓に網戸があるおかげで、大きな虫は入っていなかったが、蚊がぶんぶんと飛んでいた。蚊がもう少し大きければ、堂々と殺していたのに。
速乾のペンキを買ったものの、完全に乾くのは明日の昼過ぎだろう。
この家はシンナー臭すぎて寝れねいからネカフェにでも行こう。
その前に風呂だ。本日二回目だが気にしない。いいんだ、そんなこと。
急いで風呂に入り、まともな服に着替えた後、ひさもんのカバンを漁り、財布を少しいじらせてもらった。数万円しか入っていなかったが、まあ、仕方ない。というか、これってひさもんにおごってもらってることになるんじゃないのかな!私すごい、これはなんかもう、すごい。