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L  作者: さくなり
4/11

冷蔵庫

 キッチンから部屋を見渡す。冷蔵庫の横に小さな棚がある。これだろうか。棚にかかっている布をめくってみた。ビンゴ、これだ。白い比較的大きめの皿を出す。先生はこの皿で何を食べていたのだろうか。このキッチンで何を思い、何を作ったのだろうか。そんなことを思うととてつもなくゾクゾクする。興奮、狂気、全てが全身を駆け抜ける。立ち上がり、皿を濯ぐ。皿を振って水気を切って肉を盛り付けた。美味しそうだ。フライパンに残った油と肉汁というのだろうか、それらに醤油と塩こしょうを加え、塩コショウの横にあった砂糖瓶から砂糖を加えた。ソースの出来上がりだ。焼肉のたれでもよかったなと思い、焼肉のたれも加えた。それを皿に盛った肉にかけて先生のステーキの出来上がりだ。

ナイフとフォークはあるのかな。先生、ちゃんと持ってるよね。もう一度食器棚に行く。三つある引き出しを順番に開けた。一番目は割り箸とストローだ。あまり使われていない。二番目はお箸とスプーンとフォークが入ってた。爪楊枝やピックも入っている。お弁当の中に入れるカップやバランも入っていた。主婦か。三番目には布巾しか入っていなかった。無駄に整理されている。しかも、色分けまで。女子力は確実に負けた。先生のくせに、腹立つなぁ。

 ナイフは見つからなかった。ということは、先生ナイフを使うような料理を家でしなかったという事か。なにそれ、超可愛い。先生、生きてる時に私に「ササガワさん、家に俺の飯作りに来てー」とか言えば喜んで作ってあげたのに。何のために料理部所属してると思ってるんだ。まあ、先生に料理を作るためじゃないけど。あー、先生可愛いなぁ。形容する言葉は星の数ほどあるはずなのに、先生は可愛いでしか表現できない。決して私のボキャブラリーが貧困とかいうわけではないはずなのになあ。

 仕方なく、包丁で肉を切る。先生を殺した包丁で先生の肉を切るとかシュールだ。でも、これ以外の包丁はまだこれからも使うからそのままにしておきたい。水切りに入れておいた包丁を出す。皿の上で肉を切ったら皿が割れそうで怖い。フライパンにもう一度移そう。フライパンの中で肉を切る。予想通り、肉は硬い。綺麗に一口大に切ったステーキ肉。フライパンをコンロにかけ、弱火でタレと絡める。美味しそうな香りがする。しかし、やはり人肉なだけあってか微かに臭いが違う。もう一度皿に盛り付けた。サラダを作るのを忘れていたが面倒くさいのでまた今度にしよう。

 リビングの机に皿を置いたあと、目の前にある先生を見て思い出した。先生が既に肉っていうことは、ここに放置してたら腐っちゃうんじゃ・・・。

腕時計を見ようとしたが、血に染まって見えない。先生の腕を捌いたとき、時計はしていなかった。机の上には車の鍵とタバコと携帯とハンカチがある。ハンカチの間に何か光った。時計だ。なんでハンカチの間に挟んでいたんだろうか。先生の時計の針は8と3を指していた。殺してから1時間もは経っていない。まだ間に合うだろう。急いでばらばらにした体を集め、サランラップを探した。フライパンが入っていた下棚にあったような気がする。あった。残り少ないが仕方ない。

フローリングの上で出刃包丁を片手に先生を捌いていく。別に、裁かなくてもいいんだけど、肉を食べる時に一回一回解体ショーするのなんて嫌だもんね。なんて思いながら腕の皮を薄く剥ぐ。捨てるべきだろうか、いや、もったいない。後で焼いておつまみにしようか。ビールもあったし。甘辛いタレのほうが美味しいかな。その前に、毛を処理しないと。手際よくやっていくが、針はすでに6を指している。胴以外の皮を剥ぎ、サランラップに包み終わった頃には9を指していた。冷蔵庫にスペースがあったから入ったが、なかったら全て冷凍庫行きになっていただろう。胴体は仕方なく冷凍庫だ。ついでに、頭も。血で染まった手を洗う。忘れていたが、ステーキを食べていない。生暖かくなってしまったステーキを目の前にフォークを持って突き刺す。硬い。口に運ぶと肉の食感が広がった。


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