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L  作者: さくなり
2/11

殺人

 そっと呟く。

「先生、ごめんね。大好きだよ。今も、その前からも、これからも愛してる。だーいすき。」

呟いた言葉を一番に自分で聞き、満足する。

そう、私は大好きな人を殺したのだ。愛してる人を殺した。事実だ。初めての恋、初めての告白、そして初めての殺人。

 私に殺された不運な彼は山田久文。30歳。家族構成は母と姉。観忠町12区5番地シネラリアハイツ105号室にひとり暮らし。土日の過ごし方は家でだらだら。嗜好品は酒とタバコ。タバコの銘柄はマルボロ。

 講師で理科担当。ポストに空きがあるからってこの学校に来た。ここでは化学を教えているが前にいた高校では化学と社会・情報を教えていた。ちなみに、前の高校はちょっと変わった高校だったようで、そこでは担任だったそうだ。山田自体がちょっと変わってるから変な人をまとめられたのだろう。

5年ほど前までは一般企業に勤めていた。教師になる前は市役所で税務関係を何かしらしてたらしいんだけどね。それ以前は大学院にいて、修士までとっている。彼を知れば知るほど面白いと思い、楽しいと感じる。こんな気持ちになったのは初めてだった。

なのに、死んでしまった。正確には私が殺した。殺しても死ななさそうだったけど、やっぱり人間は死んでしまうものなのだ。

 人を一人殺したというのに罪悪感なんていう感情は全くもって出てこない。むしろ、欲を満たしたことによる満足感と、彼を好いているということによる愛しさしかない。

 目の前に転がる生温い先生の死体は、見る度に肌をなぞられ、中深くを突かれるような感覚になる。セックス以上の快楽だ。

余韻に浸っている場合ではないと気付き、手に持っていた包丁で彼の腕を切る。肘の関節のところをずらすように外した。丁寧に、且つ迅速に肉と筋を切る。包丁から伝わる鈍く重い感覚がまた私を快楽に陥れる。両腕を切り落とし、肩も切り落とす。足も同じように切り落として腰から足の付け根までをそれぞれ全てばらばらにする。胴と腰から下の一部だけになった先生も素敵だ。さすが先生。大好き。

 部屋を見渡す。前方は窓、後方は玄関までの廊下があり、右は6畳ほどの和室、左はキッチンと冷蔵庫がある。私は先生の右腕を持って左へ行った。


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