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調査(3)

「フリーの傭兵ですか?」


 僕は聞き返す。すると女スタッフはタッチパネルディスプレイの画面を何もない真っ白な画面に切り替えた。


「電脳掲示板を利用したことはありますか?」


「いえ、あまりそういうのは利用しませんから」


「そうですね。こういったものは便利な一方で信用が置けませんから、利用するのはなかなか勇気のいるものです」


 女スタッフは、「ですが」と前置きをしてから続ける。


「傭兵の中には今紹介したような企業に所属する人たちもいれば、フリーで活躍している人もいます。フリーの傭兵は雇われ傭兵と違って保険金もかかりませんし、値段交渉も直接本人とできますので、被雇用の傭兵よりも安く仕事を依頼できるというメリットがあります」


「フリーを利用するメリットはわかりますが、信用できない輩も多いのでしょ?」


 僕は突っ込みをいれるが、それは一笑にふされてしまった。


「お客様。この世界で信用ほどお金がかかるものはありません。信用できる人を雇いたいのなら高額の報酬がかかりますし、お金をかけたくないのなら信用できない人を雇うしかありません。お客様のご予算では当社の傭兵を雇うことは難しいので、フリーの傭兵を検討された方が良いかと思いますよ?」


 あまりにも真っ当な反論なだけにぐうの音も出なかった。


 裁判に勝つには、証拠が必要だ。それにはどうしてもクラウディアの家を調べておきたい。だが、それには費用がかかる。


 貧乏が恨めしい。いざというときほど金は頼りになる。


 電脳掲示板を利用すれば確かに安く仕事を請け負ってくれるフリーの傭兵は見つかるかもしれない。しかし、企業に雇ってもらえない傭兵というのは大概、脛に傷のあるような奴らばかりだ。


 詐欺まがいの連中もいれば、傭兵とは名ばかりのただの犯罪者もいる。確かにフリーの中には企業に契約料をピンハネされるのを嫌って独立をする強者もいるが、そのような有能な者は100人に1人いるかいなかの確率だ。


 ――こちらの分が悪すぎる。でも、他に手はないか。


「わかりました。では、電脳掲示板に傭兵募集の依頼を出していただけますか?」


「お任せください。当社の電脳掲示板はアクセス数が高いので、きっと腕のいい傭兵が見つかりますよ」


 

 女スタッフはそれだけ言うと契約書を二枚、カウンターの上に取り出した。一枚は会社用で二枚目はお客様控え用だ。彼女はペンを差し出して朗らかな声で言う。


「ではこちらにお客様の御氏名、住所、連絡先を記入ください」


 僕はペンを走らせて契約書にサインをする。最後に広告費として1万Gゴールド払って、一息ついた。



「ご契約ありがとうございます。では、ただいま手配をしますので少々お時間ください……はい、掲示板への投稿が完了致しました。では、ご応募の連絡があるまでお待ちください」


「あの、ちなみに応募まではどれくらい時間がかかりますか?」


「さあ?」


 女スタッフはまるで悪意のない営業スマイルを浮かべながら、首をかしげる。


「フリーの傭兵といってもいつも暇なわけではありませんから。もしかしたら一週間くらいかかるかもしれません。応募があればこちらの連絡先宛に電話がくると思いますよ」


 ――他をあたった方が良いかもしれない。


 まだ調査は始まったばかりだというのに、ひどく疲れた気分になった。


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