5/119
面会(4)
金がなければ稼ぐしかない。たとえやりたくない仕事でも、だ。
人で賑わう繁華街を抜けると大きな交差点にあたる。そこを左手に曲がり、さらに100メートルほど歩くと、薄寂れた雑居ビルがずらりと並ぶ通り道になる。
どれも似たような雑居ビルであるにも関わらず、一つだけやけに洒落た外観の八階建てのビルがあり、名前はスーパーゴールデンイーストビルディングというらしく、前々からこのビルのオーナーのネーミングセンスは少しおかしいと思っていた。
そのビルの階段を最上階まで登ると、『ニコニコ法律事務所』というこれはこれですごく怪しい名前の文字が印刷されたプレートが貼られた扉があった。
結局、また戻ってしまった。もう二度と会わないと決めていたはずなのに。
僕が扉を三回ほどノックすると、扉の奥から「どうぞ」とやけに透き通るような声が返ってきた。