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証言台(7) 弁護側反論

「魔法によってCDは外部よりプロテクトされていた。だから誰にも編集できないと?」


 僕の質問に対し、検事は「その通りです」と答える。


「ですが、防御の魔法なら、解除することもできるのでは?解除できないほどの強力な魔法でもかけられていたのですか?」

「警備会社が施した防御魔法はそれほど強力なものではありません。だから、やろうと思えば市販の解除用の魔法道具でも、CDの防御魔法を除去できます」


 検事は続ける。「ですが、証拠となったCDの防御魔法はいずれも解除はされていません」


「なぜ、そう言えるのですか?低レベルな魔法ならば、解除専門の魔法道具を使用すれば誰でも防御魔法を解除できます」

「お忘れですか、弁護士さん」


 シェーファー検事は一度威嚇するように鋭い眼差しでこちらを睨み返した後、口元にうっすらと笑みを浮かべる。


「今回提出された証拠品にはいずれも魔導心理研究所による魔法解析が行われました。その結果、CDには解除系の魔法の痕跡は見つかりませんでした。あるのは防御魔法のみ」


 ふぅと検事はため息をつく。「もう魔法がすべての時代ではないのですよ、弁護士さん」


「魔法を使用すれば必ずその痕跡は残ります。それもハッキリと鮮明にね。魔法を使用して完全犯罪をしようなんて輩はね、新しい時代の壁にでもぶつかって豚箱にでも入っていればいいのよ」


 裁判長は両目を閉じてうんうんと深く頷いた。


 きっとこの裁判長も今まで何度も魔法による完全犯罪の場に立ち会ってきたのだろう。


 魔法による犯罪の立証はとても難しい。どれだけ辛苦を注いで凶悪な犯人を捕まえたとしても証拠不十分で起訴すらされないのが、近年の司法が抱える闇だった。


 ――だが、魔法解析か。


 どうやら魔導心理研究所は検察と警察にとって相当強力な武器のようだ。


 僕は別に、犯罪者を肯定する気はない。捕まった方がいいだろうと思うし、その役に立つ捜査手法が発見されたのならば、歓迎すべきだ。


 ――魔法解析は役に立つ。どうにかして利用できないだろうか?


「魔法解析の結果、CDにはいかなる魔法も使用されなかった。それで間違いないのですよね?」

「しつこいわね。そういってるでしょ?どう?これでもまだ違法捜査を疑うの?」


 シェーファー検事は裁判長を見る。「裁判長、我々はいついかなるときも公正明大をモットーに、正しい捜査手法にのっとって犯罪者を取り締まっています。違法捜査?とんでもありませんわ」


「ふむ」裁判長はどこかホッとしたような表情で、フサフサの白い髭をなでながら言う。「確かにそのようですね」


「念の為にうかがいますが、魔法解析はいつのタイミングで行われますか?映像のチェックを行ってからですか?それとも行う前ですか?」


 検事は一瞬無表情になったが、すぐにこちらの意図に気づいたのか、口元に笑みを浮かべる。


「魔法解析は二度行われます。まず証拠品を回収したときと、裁判所に提出する前です。解析の結果はどちらも同じでした。魔法解析をした後に何者かが不正をしないように、検察側は常に万全の体制を敷いています」


 と、なぜか勝ち誇ったようにケイトは胸を張った。


 ――別に、引っ掛けるつもりはなかったのだが。


 だが、いろいろと良いことがわかった。


 魔法解析、監視カメラの矛盾、そしてなによりも気になるのが映像内におけるクラウディアの不自然な行動。


「では、もう一度監視カメラの映像を見ましょう。今度は被告にもチェックしてもらいます」


 僕は証言台にいるクラウディアを見やる。彼女はもう泣いていなかった。ただ顔を赤くし、困ったような表情を浮かべてこちらを見ているだけだった。


 なんだか、どうしていいのかわからずに途方にくれてしまった子猫でも見ているような気分だった。

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