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起訴状

 シェーファー検事はとても冷たい眼差しで片手にもつ起訴状を読み上げる。


「検察側は12月7日、クラウディア・ラインラインを起訴します。計画的な犯行、極めて悪質な動機から被告の罪状は第一級殺人罪になります」


 第一級殺人罪。つまり、無罪にならなければ死刑か、終身刑。どちらにせよ有罪が確定すれば彼女の人生は終了だ。


「被告の氏名はクラウディア・ラインラント、18歳、住所不定、国籍は――ありません」


 ん?国籍がない、厄介だな。


 普通の国なら、外国籍の人間が国内で犯罪をおかした場合、犯罪者の国籍国との国際条約に基づいて犯罪者の引渡しなどが行われる。


 もっともグリムベルドは他のいかなる国とも犯罪者の引渡し条約を結んでいないため、たとえ軽犯罪者であっても外国に引き渡さないし、海外の司法で裁かせたりしない。国内で起こった犯罪はすべて国内で裁くのが原則だ。


 ただし、どのような刑罰を受けるかはその国籍の法律に委ねることにしている。


 例えば死刑のない国の人間がグリムベルドで第一級殺人を犯した場合、たとえ有罪が確定しても罪状はその被告の国籍国の司法が適用されるため、被告が死刑宣告を受けることはない。


 だが、無国籍の場合は事情が異なる。


 シェーファー検事は続けて言う。

「被告にグリムベルドの国籍はありません。ただ憲法の法のもとの平等の原則、および外国人犯罪者特別法にのっとり、被告を特例によりグリムベルドの国籍者とみなして司法手続きを行います」



 起訴状を机の上に叩きつけ、シェーファー検事は被告を見下ろすように言う。


「どこにも逃がさないってことよ、お嬢さん」

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