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面会(1)
封建主義的というわけでもなければ貴族主義というわけでもないグリムベルドという国家は、近代科学と魔法がほどよく折り合う法治国家だ。
かつてこの世界には世界を掌握しようと企んでいた悪の大魔王がいたらしい。
いたらしいというのはそれが既に過去の出来ごとで、50年以上も昔の話だからだ。
長寿長命な亜人種にとってその程度の歳月はまだまだ記憶に新しい出来ごとなのかもしれないが、ただの人間である僕らにとってそれは非常に長い時間であり、もはや歴史の一部である。
現実感など到底抱けるものではない。
今や戦争を知りたければ、人の記憶よりも図書館の書籍をあたった方が確実に多くを知ることができるくらいだ。
そして僕は今、図書館にいる。それは文字通り、その過去の戦争について学ぶために、だ。
それにしても、なぜこんなことをしているのだろう、とふと疑問に思った。
事の発端は今朝――
僕がいつも通りロックハート法律事務所、つまり僕が所長を勤める弁護士事務所の扉を開けたときから始まっていた。