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面会(15)

 必要な情報はナターシャ所長からだいたい聞いた。


 わからない点はまだまだ多かったが、これ以上聞けることはなさそうだったので、最近のお笑い芸人は誰々が面白いといった話や所長の兄が変なビジネスに手を出そうとしているといった至極どうでもいいようなことを小一時間ほど話した後にニコニコ法律事務所から出た。


 事務所の外は既に暗かった。高くそびえる山脈の後ろへと夕日は沈み、街灯はポツポツと灯りを照らし始める。


 風が吹いたので思わず身震いをした。このまま事務所に帰ろうかと思ったが、帰っても誰もいないことを思い出したので、図書館に寄ることにした。


 まだ図書館はギリギリ空いている時間だ。


 ナターシャ所長から図書館までの道のりは短く、歩いて30分もすると神殿のような佇まいの図書館を見つけることができた。


 図書館の玄関に近づくと自動ドアが開き、中から生暖かい風が押し寄せる。僕はすぐにホールへと入ると、後ろから扉が閉まる音が聞こえた。


 図書館は年に数回の頻度で訪れる。学生の頃から利用しているから10年以上の付き合いなのだが、時代に関係なくいつまで経っても図書館は図書館のままだった。


 唯一変わった点があるとすれば、以前までは中年の司書がいたはずなのが、本棚を整理している司書はどう見ても10代ほどの女の子だった。


「すいません」

「はい、どうされましたか?」


 あどけない表情をしている司書は棚に本を無理やり押し込むと、こちらを振り向く。白いポロシャツの上にチェック柄のエプロンを着ている彼女の胸元には図書館勤務の人だけが付ける銀色のバッジがあった。


 髪を後ろで束ねた彼女の顔にはそばかすがあり、幼く見えた。


「近代史の本を探しているんですが、どこにあるかわかりますか?」

「歴史書をお探しですか?2階の南側にありますよ。ご案内しましょうか?」

「いえ、大丈夫です。慣れてるので」


 司書の脇には大量の本があり、忙しそうだったので固辞した。


 軽く会釈をし、僕は2階に行った。

 



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