表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/57

異世界の食事事情





 夕飯を一緒に食べようとは約束したけども…


 こんな豪勢だとは聞いてません。

 いや、王族と食べるならこんな風なのが一般かもしれないけど。



 自分の格好を見下ろし溜め息をつく。真っ白なイブニングドレスは可愛い。可愛いけども…なんか納得いかない。

 背中ほどあった黒髪は見事結い上げられ色んな装飾品をつけられて些か重い。靴もヒールが高くて歩きにくい。私あんまり高いの履いた事がないから慣れてないんだよ。このドレスも胸元と背中が大胆に開いてるし…く、もっと私がモデル体型だったら堂々と行くのに。


 太ってはいないけど痩せてもいない。つまりは平凡。その平凡な体を先程までガシャガシャと大きな風呂で洗われたのだ。

 羞恥心芽生える前に服を剥ぎ取られ数人がかりで湯に入れられ擦りあげられて…まぁ、地獄だった。異世界トリップの洗礼ってこんなにキツイものだったのね…。



 半場遠い目をしつつ案内してくれたメイドさんが巨大な扉を仰々しく開けてくれた。

 先には召喚された時の部屋より多少狭いだけの立派な部屋と、これまた長いテーブル。天井にはオペラ座かと言わんばかりのシャンデリアが飾られている。


 ……完全に場違いだ。





「ハナ。良かった、よく似合ってるわ」





 先に席についていた女王陛下がにこやかに迎えてくれる。どうやらこの服は彼女が選んだものらしい。

 可愛いけど私には勿体ないものだ。とりあえず「ありがとうございます」とお礼は言っておく。

 座る席に促された所で先程別れたばかりのラスナグの姿。豪華な椅子を引いてもらい腰をかけろとばかりに礼をされる。うう、むず痒い。


 よいせ、と高めの椅子に腰をかけた時目が合った。






「とても可愛いですよ。似合っています」






 そう言って微笑まれた。

 …タラシか兄ちゃん!


 思わず赤面してしまい視線を逸らす。何だか女王様ニヤニヤしてませんか!

 ああぁ…こんなストレートに言われる事なんて滅多にないもんだから…。


 一人悶絶したい状況の中二人しか食べる人がいない晩餐会が緩やかに開始された。どうやらラスナグがいる理由は給仕をしてくれるかららしい。

 いいのかな…と思いながら陛下を見ると、彼女も後ろにいる騎士さんに給仕されていた。茶色のツンツンと逆立った短い髪。その一部が赤く染まっており、瞳も赤だ。アスナと一緒で火属性の人らしい。彼と違って、少し色が薄い。


 渋いおじ様タイプのガッチリとした体型の男はまさに体育会系といってもいい。ラスナグと同じ隊長さんだろうか。年は大分上っぽいけど。

 私の視線に気付いた陛下が彼を紹介してくれた。




「彼はティマ=マルサード。我が国の騎士団団長で、一番隊の隊長を勤めているの。でも最近は私の従者みたいな事をしてくれてるわ」




 ふふ、と上品に笑った陛下。その後ろでティマと呼ばれた団長さんがペコリと私に向かって頭を下げる。下げ返したのは咄嗟に。真顔でお辞儀されたらねぇ…。

 騎士団は真面目な人が多いようだ。



 そんなやり取りをしてる間にまず一品目が運ばれてきた。

 ラスナグの手で目の前に置かれる。コーンポタージュっぽいスープだ。




「無礼講でいきましょう。今日の料理は我が国で採れたものばかりを使ったフルコースなの。味わってほしいわ」


「はい。いただきまーすっ」




 フワリと立ち上る湯気。香る匂いは食欲をそそるもの。

 異世界となると食事の心配もあったから、これは嬉しい。


 スプーンを持ちスープを掬う。トロトロとした黄色のスープは本当コーンポタージュそっくりだ。味はどうかな?

 音を立てないよう口に運ぶ。ぱくり、と一口食べて…





「…っおいしい!」





 あまりの美味しさに感激した。凄い!これ味もポタージュに似てるけど、それより味も濃厚で甘い!舌触りもよくて…もしやこれ、こっちの世界のが料理法上か?!




「美味しい?良かった。それはトウモロコシのスープなの。私の大好物」


「トウモロコシ…って、あの黄色の粒々のですか?」


「そう!よく知ってるのねぇ」




 私の世界と一緒の名前。味もほぼ一緒だし…有難い。カレー作りもスムーズにいきそうだ。

 材料言って何ソレとかだと大変だし。見た目も味も一緒のが作る身として嬉しい限りだ。


 ホクホク顔でスープを全て平らげると空の皿はすぐ退かされ、次の皿が置かれた。可愛らしい前菜の盛り合わせだ。

 遠慮なく食べさせて貰う。口に入れるとどれも甘くて美味しい。




「…………?」




 美味しいのだ。

 食べきった皿を引かれ、新しい皿が。メインディッシュっぽい肉の切り身が綺麗に並べられている。


 パクリと食べる。牛肉と似た味がする。牛がいるなら牛乳もあるかもしれない。

 これも、甘くて…美味しい。


 若干食事のペースを落としてるうちにパンと、また違う副メインっぽい料理が運ばれてきた。美味しそうな魚のパイ包み。綺麗に盛り付けられ芸術品のようだ。…恐る恐る口へと運ぶ。


 とても、美味しい。











 ………甘過ぎて。


 何でこんなフルコース甘味?!因みにパンも飲み物も激甘だったよ大変美味しいけどね!

 甘いものは好きだ。でもこんなに続けば胃の方がおかしくなる。塩辛いものが食べたい…。


 完全に食事の手を止めて陛下の方を見てみる。わぁ、完食済み。




「えっと…ラスナグ」


「何ですか?」




 コッソリと横に立つラスナグに声をかけるとすぐ返事をくれた。

 変な質問だったら陛下だと色々まずいかもしれないので彼に聞いてみる。





「この料理の…フルコースの味付けって、この世界で一般的?」


「勿論です。シェフ達が腕によりをかけて作った素材を生かした料理ですが…気に入りませんでしたか?」


「美味しいよ。美味しい…んだけど、何で全部甘いの?」


「?それが普通ですよ」





 ……………………。



 カレーの重要性よくわかった!!






トリップ先は甘い甘い世界でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ