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背負ってしまった責任

*この話には主人公の勝手な解釈部分があります。ご注意ください。





「キョウワコク?」




 初めて聞く単語にサイシャが首を傾げる。まぁ馴染みないだろうねぇ。私も知識としては曖昧な部分があるけど、捏造するつもりです。大丈夫!誰も知らないんだし!




「そう、共和国。国同士が集まった国家だよ。私の世界では小さな国と国が合わさって共和国って呼ばれてて、大きな国際会議には共和国として代表が参加したりしてるの」




 と、いうことにしておこう。




「共和国であれば国がなくなることはないし、お互い国王だけど共和国の代表が公に出ればいい。まぁでっかい規模の領主になるみたいなものかな。それなら政治も変わりないし、陛下達もくっついて問題ない!」


「問題ない…とは言いにくい気がしますね。つまりは国との交渉沙汰のみを代表に押し付ける、というわけですか。負担を減らし公務に余裕を持たせるのはいい案ですね。しかし結婚に踏み切らせるにはまだ弱いと思いますが…」




 そうなのよね。結局は二人が先頭になって政を行う必要があるからあんまり意味がないように思える。

 だがしかし。ここからは私のオリジナルだ。





「共和国になることで国境を共有化するの。税金は今まで通りだけど、物価や流通の税は両国内であればかからない。農作物が盛んなレナーガルと鉱物が特産なトストン。互いの利益もあるし民の生活も豊かになる。国民を第一に考える陛下には十分な提案でしょ?」





 さらにさらに。





「国境に住居…城みたいに立派なものじゃなくてもいいけど、共通の居場所を作るの。代表はそこで実務をこなすし互いの王も出来れば自国ではなくてそこで執務をしてもらいたい。共和国として、情報の行き来は大事ですからね」


「都合の良い同居話ですか」


「そうなのよ都合の良いことに。元々両国仲がいいわけだし、自分達の王様が一緒に政をしていれば国民の指示も上がるでしょーよ」





 後々に小さな問題は出てくるだろうけど、陛下達なら解決出来るであろう手腕だし。

 配下に一言も相談せず決めちゃったのは申し訳なく思っている。でも陛下が私の案に乗ってくれたわけだし、強い反発はない…はずだ。




「…えーと。私の勝手な話で陛下と国の未来を左右してごめんなさい?」


「中身のない謝罪は逆に失礼ですよ。しかし…共和国ですか。良い案ですね」


「乗ってくれるの?」


「我が王も、恐らく肯定する内容ですからね。国に豊かさをもたらし、尚且女王陛下も手に入る。…当分ピンクの空気に触れさせられると思うと気が重いですが」




 それは我慢して。


 まぁ何十年も待って待って手に入った幸せだろうからなぁ。ピンクも人一倍…怖いね確かに。

 想像でゲンナリしてきたところで影が差した。はて?




「やはり、貴女は面白いですね」


「はあ、ども…て、近い近い」


「やはり私は貴女を手元に置きたい気持ちがあるようです」


「は?いやだから近いっ!なんでそんな話になるのっ?!」




 今陛下達の話してたはずだよね?!逃げようにもガッツリ両手掴まれてて無理です。

 手元に置きたいって、ま、まさか結婚とか?いやいやまさか。でも恋愛感情なくてもサイシャなら結婚に踏み切るとかしそうだ。




「お断りしますっ!って前にも言ったよね?!あれ?言ったっけ…ともかくお断り!!」


「だんだんよくなってきますから、ね?」


「なにその悪役セリフ?!それに私はっ」




 両手を無理矢理引き離す。相手を見て一気に口にした。







「私はラスナグのことが好きなんだからっ!!」







 だからそーいった変な口説き文句モドキは受け付けな……はて。

 何故に彼は私の背後を見てニヤニヤしているんでしょうか…?





「だ、そうですよ?いやいや愛されてますね~」





 ニヤニヤ顔のまま明るく声を出すサイシャが怖い。何より背後が怖い。しかし見ないわけにも…!

覚悟を決めてゆっくりと振り返る。

 そこには案の定の……






「…た、だいま…戻り、ました……」






 顔を真っ赤にしたラスナグがおりました。


 NOooooooooOU!!!



 瞬時に私の顔も真っ赤に染まる。サイシャの奴ラスナグが来てるって分かってて芝居打ちやがったな?!




「あのっその、えーっと…その、ご、ごめんね?遠くまで行かせたくせに何もなくて…」


「いえ、自分が行かせてほしいと願った事ですから構いません。それより今の言葉は…」




 はいー誤魔化されてくれませんでしたー。

 公開告白日和か今日は?こんなはずでは…いい雰囲気で二人きりの時に言いたかったのに。


 チラリと相手の様子を見る。真っ赤な顔で目は泳いでおり、口元を手で押さえて落ち着かない様子。止めてくれキュンとする。

 そして気付いた。着ている服は土で汚れていて髪もボサボサ。陛下の前にも関わらず…慌てて帰ってきてくれたんだ。






「…おかえりなさい、ラスナグ」






 自然と言葉が出た。穏やかな声音に彼も落ち着きを取り戻したらしい。嬉しそうに微笑み「はい」と頷いてくれる。




「何やら、色々と上手くいったようですね。何があったんですか?」


「ああ、それはね、話せば長くなるんだけど」


「長くする前にお前はするべき事をしろ」




 横槍を入れてきたのはアスナ。いつの間に。

 するべき事?




「…私達はカレーの試食で集まったはずだが?」




 忘れてました。


 鍋に入れっぱなしのカレー。もう王様達バカップル計画は遂行したのであまり意味のないものになったが、これを作るのに苦労したのは忘れられない。

 是非とも食べてもらわねば。

 そして…後でラスナグの返事を聞こう。一応こ、告白?みたいなものだったし…。



 祝福ムードの彼らを席に着かせ私はカレーを一人一人よそっていく。皆の反応は…複雑そうだな。




「チョコレートのような色だな」


「嗅いだことのない匂いですね」


「確かに文献と瓜二つだ。色までは分からなかったがこのような…材料は?」


「食べたら教えます。ちゃんと毒味はしていますので大丈夫ですよ。どーぞ、冷めないうちに召し上がってください」




 材料を先伸ばしにした私をアスナが睨んだが…いいじゃん。愛しの陛下は知ってるんだし、毒もないって言われたんだから。

 皆がそれぞれ恐る恐るカレーを口に運ぶ。はてさて反応はー?






「!?口の中が熱い…!!」


「喉が痛いぞ?!」


「旨いが、この感覚は一体…」






 不思議そうな顔をしてるのが七割。悶絶が三割か。悪いね、私の持ってきたルー辛口なんだよ。

 甘いものしか食べたことない世界の人にとっては強烈だろう。あ、そっか。




「みんな「辛い」の感覚を知らないから、不思議そうな顔をしてるんだね」




 未知の味覚だねそりゃ。私としてはここから辛味の味付け文化を繰り広げてもらいたい。切実に。




「変わった味ですが…美味しいです」




 ラスナグがにこやかに感想を言ってくれる。癒されるわ。




「これが異世界の…女神のカレーか。見事だ。我の難問、クリアだ娘よ」


「ありがとうございます」


「…礼を言うならワシの方だ」




 泣きそうな、優しい目を一瞬だけ見せてくれた王様。

 嬉しいけど、隣の女王陛下三割の人だから。水あげるとか助けてあげて。




「素晴らしい素晴らしい…!カレー…辛味とはなんと素晴らしいものなんでしょう!これは議会を立ち上げて世界に…いや、共和国にするのなら辛味を特産品にした事業を立ち上げましょう」




 そしてサイシャが目を爛々と輝かせている。辛いの好きなんだ。良かったねぇ。

 感激したのだろう。再び私のもとへ来た彼は再び私の手を取った。




「さぁこれから忙しくなりますよ?両国の政に直接意見を言うことはないにしろ掛橋的存在になるんですから。何より辛味の食材研究も進めなくてはなりませんね」




 んん?

 確かに大変になるだろうけど…何故に私を真っ直ぐ見ておっしゃるんでしょうか?




「え、えーと…私召喚された目的果たしたよね?一ヶ月後には帰るんだよね?」


「おや。愛しの彼を置いて帰還するんですか?それに、言い出したのは貴女です。改革の責任はとって頂かないと」




 あれ?

 なんか雲行きが怪しくなって…。



 ラスナグは改革の話を知らないので私の「帰る」宣言に悲しげな表情を浮かべるだけだ。いや、なんとかこの世界にまた来れるように相談しようとか考えてたんだよ?どっちか選べと言われたら本当困るけどさ…今はどっちの世界も大事だし。

 改革の話を恐らく聞いていただろうアスナへとヘルプの目を向ければため息をつかれた。





「両国の王が認め改革の方針をしっかり持っているのはお前だけだ。…諦めて、責任を取れ」





 え、嘘でしょ?!






共和国についての解釈は本文中に書いてある通り捏造です。ごめんなさい。次回で最終話です。

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