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我が儘はどっち?






「それだけ意見言えるなら私なんかに主張しなくても陛下に言いなさいよ!」


「言ったとも」




 言ったんかい!




「陛下は私の言葉に深く賛同してくださった。だからこそ、己の気持ちを押し止め今回の事で関係を断つ事を決心してくださった。それを、貴殿が無駄にしようとしているのだ」




 陛下が、決めた?


 自分の気持ちを押し込めることに?トストン王は言っていた。目が語っているって。彼女はまだ好きなのに。

 統治者としては最適な判断かもしれない。でもそんなの…私は納得出来ない。


 したくない。私も陛下達のように恋に落ちた。気持ちはまだ伝えてないけど、互いに大切に思う気持ちはある。それを無駄だって言うの?






「陛下に、個人の幸せは必要ないってあなたは告げたの?」






 そう私が口にした瞬間、ほんの少しだ。少しだったけど、傷付いたような表情を彼が浮かべた。

 なんでそんな顔するのさ。




「…他のことは叶えて差し上げられる。国のことだ。貴殿が口を挟む問題ではない」


「ならなんでっ!」


「いくら言っても無駄だよ。こいつ、ただ単に怖いだけなんだから」




 今まで蹲っていたイオンがハッキリと呟いた。苦しそうにしながら、ゴロリと体を仰向けにする。  だ、大丈夫なの?


 ティマさんは彼の存在に今気付いたかのように見下ろしている。





「昔っからこの騎士団長さんは陛下一筋でね。陛下がまだハナくらいの時から忠誠を誓ってる。だからこそ、陛下も最も信頼してる。もしもだ、今回トストン王と陛下の仲が発展したら…その信頼も変化するかもしれない」



「…黙れ」



「それが怖いのさ。自分の全てを捧げた相手が自分を見なくなることが何より嫌だって。変化を恐れてるって。馬鹿じゃない?そんなこと考えて変な行動とって、それこそ嫌われて当然…」



「黙れと言っている」





 剣が再び降り下ろされる。

 なんでそんな挑発じみた事言っちゃうかなイオン君らしいけど!慌てて庇うよう動き出すが間に合わない。


 これ以上暴力なんて奮われたらイオン君だって死んでしまうかもしれない。もう止めてってば!






「黙るのは、そっちだよ!」






 そのまま打たれるはずだった彼の地面が光る。するとティマさんの立っていた地面が消えた。そうか、魔術!

 すぐさま反応して後方に飛んで避けられてしまったが、距離は出来た。震えながら立ち上がろうとする彼に慌てて駆け寄って支える。




「イオン君大丈夫?!」


「いてて…大丈夫に見えたらアンタは鬼だね。くっそまだグラグラする…」




 頭か首を攻撃されたのかな。私が支えていなければ立てない状態だ。

 ティマさんは空いた地面の向こう側で私達をじっと見ている。超怖い。



 イオン君が言ってたこと、私がアスナに言ったことに似てる。彼は国を思ってこんなことしてるのかと思ったけど違うんだ。






「陛下のこと、好きなんだね」






 それなら、分かる。

 私の言葉に彼は強く首を横に振った。





「好きなどと…生ぬるい。あの方は私の全て。確かに、彼の言う通り関係が崩れる事を恐れている。だがそれ以上に…幸せになれる保証などない。好いた男と添い遂げようと、あの方がどれほど国に身を捧げてきたか私は見てきた。…古くから、両親から受け継がれた歴史を変えていいものか」


「いいに決まってる」





 キッパリと言ってやる。

 これには驚いたようで目を見開かれた。変えていいさ。






「変わっていない歴史なんてない。それに、国が吸収されたとしてもあの二人だもの。民を大事にしてくれる。過去の歴史だって、無くなったりしないよ。ねぇティマさん。イオン君の言った通り認めた通りただ自分が怖いだけでしょう?」






 分かるんだ。

 私だって、怖かった。今だって、ラスナグから向けられる感情が自分と同じものなのか疑ってる。相手のことを求めれば求めるほど、怖い。


 だけど、ね。






「逃げるな」






 ちゃんとその人を見て。

 私を見てくれた青の瞳は、確かなものをくれたから。





「自分が怖いからって、変化を否定しないで。陛下はあなたを捨てるような人じゃない。見なくなる人じゃない。あなたが一番陛下を否定してるんだよ。彼女を見てないんだよ。逃げてばっかで向き合ってない」





 私にも言えることだ。

 でも、もう否定しない。逃げない。



 ちゃんと変わっていく関係を受け止めるよ。






「止まらず自分が変わる努力をして、それでも間違ってると思ったら私に直接言いなさいよっ!弱虫っ!」






 イオン君に怪我させて、ラスナグ行かせちゃって、王様の大事な贈り物盗んで。

 私だって責任あるよ。あるけど、今は言ってやりたかった。



 だから調子に乗ったと気付いた時には刃が迫っていて、咄嗟にイオン君を庇うように抱き締めた。

 異世界で死んだら祟って出てやるー!!











「相手を挑発してどうする」











 思わず強く瞑った目蓋に光が映る。あれ?痛くない?

 それに今の声って…




「…遅いよ」




 イオン君が疲れたように、安心したように呟いた。

 そっと目を開けば、真っ黒な背中が前にあった。




「あす、な?」


「お前は何かと騒動を起こすな」




 少しだけ振り返り苦笑いを溢すと、あやすように頭をポンポンと軽く叩かれた。

 もう大丈夫。



 そう言ってくれた気がした。






アスナ登場。しかし主人公調子に乗るというより口が軽い(笑)

もうちょっと続きます。

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