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下準備と異変






「お邪魔さまー。ここってハナの部屋?あ、いたいた。相変わらず呑気だねアンタ。本なんか読んでて、カレー作り始めるんじゃないの?」




 はい?




「…仕込みは明日の朝からする予定だけど…」


「明日ぅ?なーんだ。トストンの王様も来てるし、早いとこ始めるんだと思ってたケド。異世界の調理法とか見てみようとしたけど無駄骨だったか」




 えーと?




「…どちら様?」


「は?なに?人の顔忘れたわけ?薄情だねーあれだけ会ってたってのに」




 いやいや。私の記憶が確かなら、間違いなく一人思い出す人物がおりますが。






「…………………イオンくん?」






 キャラ違いすぎませんか?

 私の疑問の目に彼は少年らしくない大人びた笑みを見せた。ぐはっこれはこれで!




「なんかハナ相手に畏まるのも馬鹿らしい気がしてさ。ま、ボクの地を知ってるのはアスナだけだし…なに?こんなんで残念だった?」


「いや、美味し…じゃない。別に自然体で構わないけど、馬鹿らしいってのが気になるわ。それよりお姉さんであるミアさんは地じゃないの?」


「……姉さんはいいんだよ。猫被りなボクが好きだろうし。しっかしアンタ本当に規格外だね。普通こんな猫被りされたら怒るか呆れるかだよ。なんで喜ぶのさ」




 うぎゃ、バレた。

 別に二重人格が好きなわけじゃない。ツンデレ要素が好きなのさ!クーデレ、天然、腹黒とかも好きだけど。いやいや私の趣向はどうでもいいか。




「素で対応してもらった方が近い感じがしない?仲良くしたい相手なら尚更。まぁ…仲良くしたいから見せたくないって人もいるけどね」




 どうでもいい相手だから素を見せた…というわけではないだろう。イオン君の神官への執着は本物だ。私から情報を引き出したいのは嘘じゃない。だから今の段階でどう接したらいいか、と考えた結果なんだと思う。

 まー私がどういった反応するか見たかったのもあるかもだけど。




「…一応ボクでも、猫被ってれば疲れるからね。気を抜ける間抜けの前だし、そうしてるけど…仲良くなったとか勘違いするなよ?ボクは異世界の知識が聞きたいだけなんだからな」


「うんうん、分かってるよ」


「……全然分かってなさそうだね」




 ニコニコと頷いたら半眼で返された。流石アスナの弟子であってツンデレ二号だね!

 読んでいた本を閉じると私は立ち上がる。ラスナグが出ていってから落ち着かなくて読んでたんだけど、やっぱり集中出来ない。

 私も出来ること、しないとね。




「イオン君。カレーの準備を今からしようと思うんだけど、一緒に来ない?」




 カレーには興味あるみたいだし。どうかなー?と尋ねてみれば彼は少しだけ訝しげな表情をした後軽く頷いてみせた。




「明日の朝から仕込みするんでしょ?そんな手間かかる料理なの?」


「手間かければ美味しくなる料理だけど…一晩寝かせてどんな変化するか怖いから明日ちゃちゃっと作るつもり」




 ジャガイモとニンジンは特に。どんな変化が起きるか予想不可能過ぎる。

 材料とか確認したかったし、前日準備をしておいても損はない。行こう、と彼を促して廊下へ出た。





「…アスナが言ってたけど、なんか浚われたんだって?」





 世間話をするかのように隣に並んだ彼が言ってきた。

 私も合わせるようにして簡単に頷く。実際そこまで危ない目に逢ったわけではなかったし。




「異世界人は価値がある。それこそ女神と呼ばれるだけの…知識の宝がね。あれだけ言ったのにまだ自覚なかったんだ?」


「え?」


「それに知識だけじゃない。他に備わってるものがある。魔力の容量が桁違い…とかね。アンタはゼロみたいだけど」




 はい。私魔力全然ないみたいです。チートとかで使ってみたかったんだけどなぁ。

 でもイオン君の言い方だとまるで異世界人が私以外にいるって聞こえてくる。いるんだろうか?でも、ならなんでカレーを私に聞いてくるの?いつぞやの疑問の復活だ。

 …異世界ってカタゴリが、私の世界だけじゃないとか?




「…今度さ、神官のとこにある文献見せてもらっていい?」




 異世界のもの。それを見れば私の世界だけなのかそうでないのか分かるはず。提案してみたわけだが、イオン君は眉を寄せた。




「異世界の文献は魔力の強い神官しか触れられない。アンタじゃページさえめくれないよ」


「そ、そうなんだ…あれ?でも私トストンで文献触ったけど大丈夫だったよ?」


「交渉に見せるくらいなら、保護の魔術をかけてたんでしょ。物凄く魔力喰らうけど、一冊くらいなら出来るし」


「へぇ…じゃあさ、私が見るときイオン君に頼んでいい?触れないけど、私は読むことが出来るし」




 ギブアンドテイクってことで。

 駄目かなーと思ったけど「いいよ」と即返答。あら意外。




「ハナの口から異世界のこと聞くより文献読んで貰った方が知識になりそうだし」


「そ…んなことないとは言い切れない…」




 知識っておおっぴらに言うけど結構難しいよね。深く追及されても答えれないからなぁ…専門的ではなく上部だけならいくらでも話せそうだけど。

 私が情けない顔をしていれば彼は笑ってみせた。酷い。






「知ったかぶったり嘘を言ったりしないのは、アンタの長所かもね」






 おや。

 少しは認めてくれている部分があるってことか。だって嘘ついて痛い目みたばっかだしね…あーんとかあーんとかあーんとか。自分に返ってくるなら正直者でありたい。

 そんな世間話のようなものをしつつ辿り着いたのは予備の調理室。ここは今日と明日私の貸し切り状態だ。水と火の魔具も借りたので水道もコンロも困りません。前回の調理で使い方は覚えてるしねー。さてさて。


 出入口にいた騎士さんに頭を下げて室内に入る。用意して貰っておいた材料と調理器具は――…ここか。ジャガイモ、ニンジン、タマネギ…なんか三つとも厳重に紐に巻かれてるけど気にしない。肉は凍ったブロック肉があった。明日には解凍するだろう。なんの肉とか気にしないぞーハハハ。この世界の人にとってはジャガイモとかの方がネックだろうしね!


 お米もあるし…あれ?

 鍋をひっくり返してみる。ジャガイモを退かしてみる。あれれ?




「どうしたの?何か足りなかった?」




 明らかに何かを探し始めた私に不思議そうにするイオン君。その傾げ方ナイス。





「いや…カレーのルーがなくて」





 保冷庫から出して材料と一緒に置いておいて欲しいって言うの忘れてた。こりゃ取りに行かないとね。




「ルー?ああ、召喚時に持ってたってやつ?」


「そうそう。スパイス…調味料みたいなものだよ。あれがなきゃカレー作れないからね。イオン君は保冷庫の場所知ってる?」


「あー…地下にあるよ。着いてきて」




 やれやれ、と言わんばかりに歩き出した彼を追う。すいませんねぇまだ場所を把握してないんですのよ。

 しかし地下にあるのか。保冷っていうくらいだしやっぱヒンヤリしてるからかな…。



 ボンヤリと考えながら歩いていると、急に案内の足が止められた。

 慌てて私も足を止める。あ、危ない。追突するとこだった。




「…おかしい」


「へ?なにが?」




 彼の目線を追えば地下へ通じる階段があった。あれが保冷庫への道かな?別におかしなとこはないけど。




「何がおかしいの?」


「今回保冷庫にはジャガイモやらタマネギやら、危険物が多いからね。入り口に騎士を配置してたはずだけど…」




 うぐ。申し訳ない。だから調理室の前にも騎士さんいたのね…。

 でも騎士の姿なんて見当たらない。不思議と、この廊下もすれ違う人が一人もいない。




「休憩中とか?」


「騎士が仕事放って?休むなら代わりを置くでしょ。自国の城内でサボるバカはいない。それに二人体制だって姉さんが言ってたし…なにか、あった?」




 ブツブツと一人言って階段へと足早に向かってしまう。なんだ?なにかあったってどゆこと?


 意味が分からず、ただただ私は後を追った。






長くなってしまったのでちょっと分けます。

イオン君の本性はこんな感じです。生意気な少年です。

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