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最大の失態






 何故か。

 ラスナグに忠誠を誓われました。


 何故か。

 ラスナグに血を舐められました。


 何故か。

 色々垂れ流してると思うんですよ絶対にっ!!




 助けに来てくれて嬉しかったよ?嬉しかったし心配してくれたのも有難い。けど何で展開がこうも発展したの?!手は舐められるし!何度変な声が出そうになったか。いきなりは駄目だろうよ。こう…ちゃんと準備ってもんが…あああ頭の中ピンクだよもうっ!!


 しかも忠誠を誓われたし。ラスナグってばレナーガルの騎士だよね?何で私に誓ってるんだ?傍にいたいって浚われたの気にしてるんだろうか…いやいや、目を見れば分かります。責任だけじゃないよねー。色々フィルターかかってるよねー。




 でも…嫌じゃない。




 嫌なんかじゃないよ。好きな人にこんなストレートな言葉を貰って、喜ばない女が何処にいるっての。


 下手な告白より、これは嬉しい。






「うん。傍にいて?」






 そう返せば、何故か彼は泣きそうな顔をして再び私を抱き締めた。もっとこう、パアッと明るくなる笑顔を想像していただけに動揺する。でも強く強く抱き締めてくるから嫌がってはないよね。良かった。

 ゆっくりと手を伸ばして彼の大きな背中に回す。ありがとう、ラスナグ。大好きだ。



 あれ。今って告白のシュチュエーション?言うべき?言うべきなのこれ?流れに乗るべきか?

 よし折角だしいざ…と顔を上げれば壊された扉の横にアスナの姿がありました。アギャアアアア!いたんですか?!




「あ、ああああすなっ」


「…邪魔をするつもりは無かったが、今は状況が状況だ。後にして貰っていいか?」




 勿論です!


 引き剥がすようにしてラスナグの肩を掴み腕を突っ張る。彼は少しだけ悲しげな顔をしたがすぐに立ち上がり私も立たせてくれるとアスナに向き直る。ちょ、ちょっと残念とか思ってなんかいないんだからね!

 謎のツンデレ宣言を心の中で叫びながら頭を切り替えようと駆け寄る。




「まずは無事なようで良かった。フィノアやトストンの王も心配していたぞ。どういう経緯で浚われたんだ?犯人の顔は見たか?」


「えっと…敵襲があって、私は大人しく馬車の中で待機してたんだけど、一人になったとたん覆面の男が窓から侵入してきて気絶。目が覚めたらこの小屋に一人転がされてた…かな?」




 何しろ気付いたらあっという間の救出劇だ。

 犯人がよっぽど手際いいのか私が寝汚いのか…前者だと信じよう。




「そうか…では犯人から何か要求されたわけでもなくここに放置されたわけか。…この事は道中話そう。兵士をここに置く。今は安全に迅速に我が国に戻るぞ」




 テキパキと指示するアスナに感心しつつ頷けばラスナグも続くように頷けば小屋を出るようエスコートされる。アスナの傍を通過しようとした時、ポスリと頭に感触が。

 え?と元を辿ればアスナの顔。ああ、手でしたか。なになに?






「…泣いていなくて、安心した」






 デレ期キてるー!!!


 いやいやそんなおふざけではなく、本気で心配してくれたようだ。冷静な反面焦ってたのかなぁ…だとしても、嬉しい。




「うん。ありがとアスナ」




 二人とも、私の危機に駆け付けてくれる。いつも汗だくになって必死に…本当すいません。

 しかしアスナの言う通り何で私を浚ったんだろう?殺されてないし交渉とかもなかったし…何にも取られるものだって持ってな……




 …………………。




「どうしましたハナ様?顔色が悪いですが…」


「なんでもなぁい!平気平気!」




 反射的に答えて笑みを作るが内心は滝汗ものだ。

 ない。確かに持っていたのに。大事なものだから服の内ポケットに。








 トストン王から預かった陛下宛の小箱がなぁぁぁあい!!!








 これ大問題だよね?はっ小屋の中で転がった時に落としたとか?でもでもしっかりした箱だし落としたら気付く…まてよ。最初から…無かった?


 私が浚われて消えたものって…!


 犯人の狙いは、最初から箱だったのだ。でもおかしい。あの箱は公式の場ではなく王様に個人で渡された物。私だって秘密裏に陛下に届ける気だったから誰にも喋っていない。なんで、箱の存在を知ってるの?それにそれを奪って何の意味があるの?

 ……私の胃に穴を開けたいってか?



 ともかく箱がないことは事実だ。どうしよう…王様に多分中身は魔石の装飾品だから追跡をしてもらう?でもそうなったら奪われた事も話さないと駄目だろう。いやだー!ようやく心許して貰えたのにまた振り出しに戻るような展開っ!!

 かといって放っておける事態じゃないような…誰かに話して?いやいやでもでもっ。



 グルグルと思考が回る。しかし物事は好転するわけもなく、小屋を出て森を歩き襲撃のあった場所まで戻ってきた。




「ハナ様ぁあ!!」


「どぅわっ?!」




 相変わらずのタックル攻撃をフィノアから受け取る。…だよね。私が渋る彼女を馬車から降ろしたのも問題だった。きっと凄く責任を感じただろう。本当申し訳ない。




「ごめんねフィノア。私がもっと状況見て言わないと駄目だった。でも怪我なさそうで、良かったよ」




 ポロポロと涙を流していた美少女がボタボタと涙を溢し始め鼻水もズルズルと…おいおい。




「はなざまもぶじでよがっだぁぁあ~!!」


「あー…うん。よしよし」




 わんわん泣く少女は本当に子供のよう。何でここまで私になついてしまったんだか…逆に可哀想になってくるなぁ。

 ぎゅうぎゅうと抱きつかれているとトストン側の騎士と兵士が来た。事情聴取かなにかをするのかと思ったが、中心にはトストン王の姿。ごめん、今会いたくなかった!!




「無事で何よりだ、娘。浚われたと聞いた時は肝が冷えたぞ。犯人はそっちの騎士が始末したのか?」


「いえ。私も気失ってたので…気づけば救出されてました」


「では犯人を見ておらず、尚且つ狙いも分からず仕舞いか?」




 ここだ。ここで言うべきだ。

 貴方様から預かった大事な小箱を盗られましたとぉぉお!!






「…はい。申し訳ありません」






 私のチキンー!!!




「そうか。では詳しくはそこの騎士と神官長に聞くとしよう。まだ旅路は長い。今度はそちらにも危害を加えさせないとワシが誓おう。ゆっくり休むがいい」




 こんな…以前じゃ考えられない気遣いして貰ってるのに「大事な預かりもの盗られちゃったーごめんね★」なんて言えるはずないじゃん!どうすんのさ自分っ!


 カレー作ってハッピーエンドの前にバットエンドの道しか見えない未来に目眩がした。





犯人の狙いは小箱だったようです。頑張れ主人公。

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