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決意を新たに






 好きだ。好きなんだ。ラスナグのことが。



 うわっこれ返事したら恋人になる、とか?イケメン彼氏の誕生だ。顔よし性格よし職業安定の有力物件!あれ?なんか違う?

 でも…あれだ。一番キたのはやっぱり…目だ。

 どうしようもなく甘やかす優しい空色の瞳。あれに見つめられると、凄くドキドキする。ああ、ほんとだね王様。目を見れば、分かってしまう。


 叱ってくれることも、怒ってくれたことも、心配してくれたのも笑ってくれるのも私に真っ直ぐくれたものだった。


 確信が持てた瞬間落ちた。どんだけ疑ってたんだ自分。

 こんな事は初めてだなぁ。時間とか関係なく好きだって思ったの。異世界効果?




「ハナ様、誤解だと分かって貰えましたか?」




 ふと言い合いを止めたラスナグが尋ねてくる。彼がショックと言った意味をようやく理解した。疑われるのは辛い事だ。私はそれをしてきた。

 されるのが嫌なくせに…でも変わってない目に安堵してしまう。




「うん。ごめんなさい」




 貴方は私を好きだって言葉にしてくれてない。でも、ちゃんと伝わったよ。


 届いたよ。




「ハナ様!昔はミア先輩一筋でしたが女神であるハナ様に惚れ込んでいるのは本当です!可愛らしい方だと最初は思っていただけですが…凄く、芯の強い方だと今は知っています!陛下のご厚意で使用人になった事、今ではとても感謝しています。どうかまだお側に置いてください!」




 突如必死に言ってくるフィノアに驚く。なんだなんだ?捨てられまいとすがり付いてくるみたいだ。そんなことはしないって。

 …もしかしてミアさんに酷く怒られたのかな?それで嫌われて騎士団辞めたとか…。ミアさん真面目そうだし、上司であるラスナグを蔑ろにされていい顔はしないだろう。あとニッチャンサッチャンも。ラブラブっぽかったからなぁ…。


 私は苦笑いを溢すと彼女の額に手を寄せる。そして軽くデコピンしてやった。




「きゃんっ…は、ハナ様?」


「罰だよ。もー過去のことグダグダ言うのは止めなさい。気持ちを切り替えるのは大変なことだけど、好きな相手の事は祝福出来るくらいのいい女になんなさい。…私の使用人なら、そうありなさい」




 目を白黒させている少女に笑って言ってやれば、せっかく引っ込んだ涙をダバダバと溢れさせしがみついてきた。おやおや。




「ハナざまぁ~~~!!」


「ぐ、その言い方はちょっとイヤ…」




 ザマァと言われているようで何とも…。

 よしよしと頭を撫でてやると彼女越しにラスナグと目が合った。


 なんとも優しい目だったので、なんか恥ずかしい。照れたように笑い返せば、何かに気付いたかのように驚きの表情を見せる。ん?どしたの?




「おい、騒がしいぞ。ここを何処だと…なんだこの状況は」


「アスナ」




 ノックなしで入室してきたのはアスナだった。急に出てこられた事に驚きながらも騒がしいと言われた事にひきつる。やっぱ筒抜け?あれだけ騒げば当然か。




「ごめんごめん。もう落ち着いたからさ」


「それでか?」




 私の胸元に顔を埋めてズビズビしている少女を見てアスナは問いかける。まぁ落ち着くのはもうちょい待ってやってくれ。

 私じゃらちが明かないと判断したのか、ラスナグに説明を求めるようにした所で彼は止まった。




「…ラスナグ、どうした?」




 怪訝そうな声に私も釣られてラスナグを見る。彼は片手で顔を覆うようにして俯いていた。

 えっ気分でも悪い?






「………………何でもありません」






 小さい返事。いやいや明らかに何かあったでしょうよ。フルフルと首を振る彼にアスナも眉間の皺を濃くする。大股で近寄ると顔を覗き込み……ため息をついた。え、どしたの?




「…勝手に盛り上がるのは結構だが、せめて陛下の問題が終わってからにしろ。鬱陶しい」


「悪い…」




 二人で納得したように話さないでくださーい。わけがわからん。首を傾げた所で俯いているラスナグの耳が見えた。赤い。凄く真っ赤だ。照れてるのか?何に?

 ラスナグもよく分かんないとこあるからなぁ…でも好きだー。




「おい、ハナ」


「へ?」


「文献を確認し、材料も揃ったんだろう?カレーを作るタイミングはお前に任せるが…帰国後なるべく早く済ませるようにしろ。食材が痛む」


「あーもう用意してくれてるんだね。難しくないからすぐ用意出来るけど…」




 あれ?


 今、アスナ私のことハナって言った?いつもお前とかおいとか亭主関白な彼が名前を?


 で…




「デレた…」


「は?でれ…なんだ?」


「いやいや、何でも?」




 デレた。デレたよこの子。なんでデレたのか今一分からないけど…なんだろう。野生のウサギがなついたような…萌えるわ。

 そうだね。私がこの世界に来た成果を見せつけないと。ちゃんとカレーを作って、陛下と王様をくっつけて、そうしたら……私から告白しよう。ちゃんと今ある気持ちを言葉にしよう。



 決意を新たに笑みを作る。泣きついたままのフィノアと一緒に勢いよくアスナへ向き直る。ちょっと引かれました。仕方ないでしょ、剥がれないもの。





「よっし!即帰って即作る!そしてツンデレ同士を見事くっつけてやる!!」





 まだどうやってくっつけるとか具体的には決めてないけど。なんとなくボンヤリとは…カレーを作るのは女神としての目標だけど、バカップルは私の目標だ。




「そう急ぐのであれば、トストン王も我が国まで同行して頂く方が早いですね。話を通してきます」




 意気込んだ所でラスナグが相槌をうつと部屋を出ていく。若干逃げていくようにも見えたけど気のせいか?

 私何かしただろうか。告白前に失恋フラグは立てないよう心がけなければ。




 頑張ろう。






まだ告白はしないそうです。

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