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タマネギと共に訪れたもの






「タマネギ、で合っていましたか?また随分と物騒なもので調理しますね」


「いやぁ、合ってるし物騒じゃないけど……」




 タマネギを大量に詰めたカゴを持ち、ニコニコしながら目の前にいる…ラスナグ。



 あっれぇ?ここトストンじゃなかったっけ?



 タマネギ料理を作ることになった私だったが、肝心の材料が手元に届くのに時間がかかるとの事。仕方ないので一日は観光に潰れたわけだが…まぁ珍しいものがいっぱいで楽しかったけど、フィノアのテンションが凄くて疲れた。そんな際どい下着誰が着るかっ!と何度も叫んだ記憶がある。

 アスナはやることがあるって言って付き合ってくれなかったけど、異常があれば強く念じて呼べって言ってくれた。ピアスさえつけていれば、すぐ見つけられるからって。

 ……これ、言われて嬉しくないはずがない。


 そんなこんなで翌日の朝。部屋をノックして現れたのは、なんとラスナグ。ほんとに何で?




「ラスナグ、なんでトストンに?」


「タマネギが必要ということなので…我が国の森で自生しているのがあるので、持ってきました」


「危ない食材とか言いながら三種類全部レナーガルで揃ってるよね…」




 色々と虚しさが募る。タマネギを受け取ろうとしたけど、重いから運びますと言われたので並んで歩き出す。




「でも、なんでラスナグが持ってきてくれたの?隊長なんだし、国でやること沢山じゃない?」


「団長に留守は任せてあるし、今は特に重要な任務はない。俺が抜けたくらいで躓く隊ではないですからね。それに、ハナ様に会いにいく口実になります」




 うぐ…そ、それは本当は持ってくるはずの人を押し退けたってことか…?

 帰ったらラスナグに返事するって言ったのに。こんなフライングで登場されても困るというか…うん困る。

 なんと答えていいやらとモヤモヤしているうちに調理場に到着した。まだ朝早いので誰もいない。台の上に籠を置いた彼がクルリと振り返る。悩んでいる私に、そっと手が伸びた。

 …正しくは、左耳に。




「アスナのピアスですね」


「あ…」


「俺のは…つけたくない?」




 ぎゃああああ!!!


 なんですかその困ったような悲しいような顔!反則だろおぉぉ?!

 一気に顔が火照る。いやいやいや!つけたくないとかじゃなくて!





「だ、だだだだって!只でさえ好意持ってますって言われたのに!ピアスまでしちゃったらラスナグのことしか考えられなくなっちゃうでしょお?!」





 カレーの為に、バカップル計画の為に頑張ってるのに。なんで自分の恋愛沙汰に翻弄されなきゃならんのか。

 私の言葉に何故かラスナグは物凄く嬉しそうな顔で言ってのける。





「俺はいつも、ハナ様の事を考えてますよ?」





 う、嘘つけー!!

 国に遣える騎士がずっと人のこと考えてられるはずないでしょーが!


 そう反論したいのに私の口からは声が漏れず、ただただ金魚のようにパクパクと動くだけ。ああ…これが世に言う言葉が出ないってやつか…無駄に冷静な部分で思う。




「…ここに」




 右耳に触れていた指がそっと動く。縁をなぞるような動きに思わず肩が震えた。ちょ、だからその目は止めてっ!ラブコメ反対!






「ハナ様の側に、俺の欠片を置いてほしい」






 ………気を失いたい。


 熱烈過ぎる。私は胸元にあった小袋からピアスを取り出すと、触れている彼の手を押し退け素早く装着した。




「これでいい?」




 ふて腐れるように言えば、まぁ見事な笑みで頷かれましたとも。冷静に考える私の期間何処行った…。




「ハナ様、タマネギの手配は上手く……」




 そして扉から現れたのはメイドのフィノア。

 硬直している目線の先にはラスナグの姿。まぁ、いるとは思わないよね。




「なっ?!な、なんで…シャルフ様が?!」


「こんにちは、フィノア」




 硬直が解けて叫んだ彼女にサラリと返事をする男。

 ん?今名前で呼ばなかったか?




「タマネギを届けにきたんだ。俺がいたら邪魔か?」


「邪魔、では、ない…ですが…」


「なら、いいだろう?」


「よくないです!わたしはっまだ貴方の事を許せません!!」




 …許さない?


 なんだか穏やかな会話じゃなくなってきた気がする。苦笑いするラスナグに睨み付けるフィノア。やっぱり、これって泥沼恋愛沙汰じゃないか?

 付き合ってて、何かトラブルがあって別れたとか。実際はまだ二人とも好き同士で…でもでもラスナグ私のこと好きっぽいし…。

 ……やっぱ、二股?




「そんな女性に免疫あるとは思えないけど…いやでもリミッター解除後のは半端ない押しだし…いやいやでもでも」


「お前は何をブツブツ言ってるんだ?」


「うひゃ?!」




 突然の声に飛び上がる。驚いて振り返れば、同じように驚いた様子のアスナが立っていた。い、いつの間に?




「なんて声出すんだお前は…それに何故ラスナグがいる?」


「へぁ?あ、なんかタマネギ届けてくれたみたい」


「わざわざか。私は早く自国に帰りたいというのに隊長自ら動くとはな、呆れたものだ」




 実際呆れた目をラスナグに向けている彼に私は苦笑いを浮かべるしか出来ない。多分私のせいですっていうのは自惚れかと言われるだろうか。




「おや、朝から賑やかですね」




 そして部下らしき人達を引き連れてきたのはサイシャ。おはよ、と簡単に挨拶。ラスナグとフィノアの口論(一方的)を見て楽しげに口元が上がっている。

 そして私の耳元へ視線が動いた。うぅ…。




「どちらが本命なんですか?」


「ぶふっ?!」




 それってラスナグかアスナって事?!両耳を慌てて押さえ込み睨み上げる。関係ありません!


 えぇと、メンバー揃ったよね?予想外メンバーはもうスルー。当初の予定通り、タマネギを調理開始しますっ!






多数メンバーでタマネギ調理開始です。ラスナグ参戦。どんどん黒い…。

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