出された答え
ポテチですが…大好評でした。
流石庶民のお菓子。味も絶賛されたけど、何より食感が楽しいそうです。ビスケットとはまた違うのがいいみたい。喜んで貰えて何より。
みんなで刈ってきたジャガイモだよ~って告げたら皆白くなって固まっちゃったけど。はっはっは。食べてしまえばこっちのもんさね。
「いやー好評で何より何より」
「良かったですね、ハナ様。異世界のお菓子が受け付けられて」
意気揚々と訓練場を後にする私に付き添うラスナグ。
ミアさんはあのあと何故か真っ赤な顔でニッチャンサッチャンに連れ添われて戻ってきたので大事をとって部屋に戻ってもらった。うん、何があったとか考えない。
ので、ミアさんの後を引き継ぐようにして彼が私の横にいる。モヤモヤはまだあるけど、今じゃ気にならない程度。あんなに悩んでたのがバカみたいに普通に接している。
「ラスナグも気に入ったみたいだし、良かったよ」
「はい。また食べたいです」
「レシピ作ろうか?」
「それもいいですけど…」
苦笑いを浮かべる彼に首を傾げる。食べたいんじゃなかったの?
まぁ確かに手に入れにくい材料だしね。レシピがあっても作れないか。ジャガイモも栽培出来ればなー。
「…また異世界の料理を作る事があれば、食べさせてください」
「いいよ。この世界の人にも受け入れられそうだし、私も作りたい料理があるからね」
普通に焼き魚とかいいなー醤油はないから、塩焼きしか選択がないけど。
ラスナグがこっちの食に興味を持ってくれるのは有難い。また試作して騎士団に持っていこう。
「ハナ様」
「んー?」
自分の思考に耽っていたせいで反応が遅れた。急に触れられた熱に思わず跳ねる。
な、なにっ?!!
「ピアスホール、開けられたんですね」
「へっ?!あ、う、うん…」
開けてないの知ってたのか。それでいてピアスをプレゼントするとは…どういうことだ。
いやいやそれよりも!人の耳を触らないでほしいんですけど?!壊れ物を構うようにゆっくりと縁を指でなぞられる。ううぅ、ゾワゾワするっ。
「ら、ラスナグ…」
「このピアスホールは誰に開けて貰ったんですか?」
「フィノアが…痛くなかったよ?」
「フィノア、ですか。でしたら手慣れているでしょうね。安心しました」
ふと、彼の表情が優しくなる。言葉通り安心したんだろう。…やっぱりフィノアと付き合ってたのかな?身内ではないし、幼なじみってわけでもなさそーだし。
…聞いても、いいだろうか。でもフィノアの時と同じで誤魔化されたらちょっとショックかも。
とりあえず耳は触るの止めようか。ラスナグの大きな手を掴むと下へと降ろす。剣ダコだろうか。硬いけど、暖かい。
何となくニギニギと手を握った後離した。
「…ハナ様?」
私の様子がおかしいのが心配なのか、怪訝そうに名前を呼ばれる。…お似合いなんだから、黙ってなくてもいいんだけどなぁ。付き合っててショックとかそんなんじゃなくて、言ってくれないのが淋しい。仲良くなったと、思ってるから。
でもなぁ、実は私がこの世界に来てまだ一週間くらいしか経過してないんだよね。時間が必要なのかなぁ。
…それならそれで、する事は決まるわけだけど。
「ラスナグ」
「はい?」
「前の…言ってた事。トストンについて行きたいって言ってたよね?」
私の言葉に少し驚きながらも「はい」と強く頷く姿。良かった、冗談ですとか言われたら凹むとこだったわ。
「私はラスナグを連れて行かない。連れていくのは、フィノアとアスナにする」
そうだよ。あんな告白まがいのことを言われて混乱してるんだ。だから頭の中を冷やすには、こうするのが一番。ラスナグもなんか私の事勘違いしてる気がするしね。
女神フィルター?わたしゃただの女ですとも。
「…理由を聞いても、いいですか?」
「隣国での危険性はほぼなし。騎士の出番は、自国あってこそでしょう?それにね!分かってるとは思うけどイケメンにあんなこと言われて冷静でいられるほど出来た女じゃないから!」
「い、いけめん?」
気にするな!
私が逆ギレのごとく伝えた言葉に彼は少しだけ眉を寄せたかと思うと深々と息を吐いた。そして、困ったように笑う。うん、よく見る顔。
「意識させたかった、というのはありましたけど…こういった展開は正直悲しいです」
「意識してる証拠でしょ。ラスナグは私にどうしてほしかったわけ?」
「そうですね……甘えてほしい、かな」
「え?これ以上どうやって?」
互いに目を丸くする。キョトン、が恐らく正解の効果音。
するといきなりラスナグが吹き出した。えっ何?今何処かにツボあった??
「全く…貴女は規格外すぎる…」
それはどういった意味で?
嫌味…をラスナグが言うのもおかしいし、誉め言葉としては受け取りにくい。複雑な顔をしていれば、穏やかな青の瞳とかち合った。
「一言一言が、響くんです。ハナ様の言葉は、ココに届く。―――…それがどんなに無意識でも、」
無視出来ない、と。
胸元に手を当てた彼の瞳は真っ直ぐで。
「待ちましょう。貴女が帰ってくるのを。答えを、出すのを」
い、や、いやいやいや。
私隣国から帰ってきたらラスナグに結論出すなんて一言も言ってない!冷静になるとは思ってるけども!私は彼の言葉や態度に毎度混乱する。慌てる。でも不快なんかじゃなくて。
「――…俺の答えは、もう出たようだから」
え。
答えって…なんでまたそんな眩しいものを見る目を向けるの?!なんで花が舞いそうな雰囲気出してんの?!!
これは答えを聞かなくても分かる。分かりやすすぎる。なんだこのピンクの空気。私は感化されない、されないぞ!
ジリジリと自然足が下がっていく。彼は見ているだけで追ってはこない。踵を返すとダッシュで廊下を駆け抜けた。
顔が熱い。
熱くて熱くて仕方ない。
「~~あー…もうっ!!」
せっかく距離を置いたのに。
縮められてちゃ意味がない。
ラスナグのターン。完全に落ちましたね(笑)暫く彼はお休みです。隣国へ向かいます。