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お試しクッキング





「レッツクッキング~」




 ドンドンパフパフー。とりあえず脳内でラッパを鳴らしてみた。


 私の手元にはジャガイモとニンジンが転がっている。そして背後にはミアさん。

 言葉にした通り、今から料理を開始致します。何でミアさんがいるのかってのは、食材が危険な為に一人誰か騎士をつけなさいって陛下に言われたからだ。

 本当はラスナグを薦められたけど女性の方が何かといいかなーっと。べ、別に気まずいからとか思ったりなんかしてないんだからね!

 …自分でツンデレやるって痛い……。




「ハナ様。用意はこれだけでよろしいですか?」


「あ、はい。オッケーですよ。ごめんなさいミアさん…騎士の仕事もあるのに付き合わせちゃて…」


「構いませんよ。ハナ様のお手伝いが出来て嬉しいです」




 天使だ…戦闘入るとアレだけど。

 用意して貰った調理機具と調味料を前に私は勢いづく。美味しいもの作って彼女にも食べてもらうんだ!


 今回作ろうと思ってるのは、キャロットケーキとポテチです。ポテチは念願の塩辛い食べ物だから気合い入ってます。まぁ食べ過ぎたら甘いものと同レベルのカロリーなんだけども…。

 さて。まずはキャロットケーキに取り掛かろう。調理室は私の貸し切りである。だから手伝ってくれるのは彼女だけだし、さっさと動かないとね。



 手にしたニンジンを複雑に思いながら水で洗い皮を剥く。ゾリゾリとすりおろしていくわけだが…普通だな。悲鳴でも上がるかと思ったけど、特に問題は起きない。

 ミアさんもニンジンの扱いについては特に何も言わなかったしね。ただ抜くのと生産が大変…ってことなんだろうなぁ。

 すり終えたニンジンを布でくるみ水分を出す。混ぜて振るって貰っておいた小麦粉やら砂糖やらのボールに投入。よく混ぜ合わせたら型に入れて…もう焼くだけか。良かった、後は焼き加減に注意するだけだね。


 こっちの世界のオーブンは使い方が分からないのでミアさんにタッチ。温度とか細かいことは料理長さんから事前にアドバイスを受けているので問題ない。熱を調節する魔具も借りられたし、安心安心。


 さて…問題はポテチだ。キャロットケーキはまだケーキという部類だから受け入れられたし料理長さんもアドバイスをくれた。ポテチは甘くないし、塩辛いお菓子はこの世界にない。はたして受け入れられるのか…魔物の卵だしなぁ。

 受け入れられなくても、私が食べたいから作るけど。



 一つ一つが大きいので輪切りとなると巨大なポテチになってしまう。揚げるのに問題がある上顔がベタつきそうだ。嫌すぎる。

 薄くスライスした後サイコロ目に切ってみようか。四角いポテチになるけど、それはそれで面白いし。


 とりあえずよく水洗いして芽を取ろう。決めた所で重いソレを抱えて流し台に持っていく。勢いよく水を出して……




 …震えてないか?




 大きなジャガイモは水が当たるのが気持ちいいのか嫌なのか、プルプルと震えている。

 いやいや、気のせいかもしれない。


 土を落とす為にワシワシと擦ってやる。プルプルプルプル…。

 卵…卵でも普通震えないって。割ったら何か出てきたりする?エイリアンとか出ない?




「……ミアさん」


「何でしょう?」


「私、もしかしてとんでもないもの食材にしようとしてます?」


「…普通はしないものですね」




 ですよねー。私もこっちの世界出身なら食べようとは思わない。

 でもジャガイモは必須だからね、どうでも調理しないといけない。


 震えるジャガイモを何とか攻略して再びまな板の上へ。

 包丁を握り、いざ芽をくり貫く為に…




 近づけたら避けられました。




「…………」




 近付ける。ヒョイと避ける。




「…………」




 近付ける。ヒョイ。




「…………」




 ヒョイ。




「…………」




 ヒョイヒョイヒョイ。




 腹が立つ…!


 卵なら卵らしく大人しくしてろって話だよ!埒があかない!

 無理矢理押さえつけてやろうもんなら暴れる為、私の手が危うい。ええい、なんとか大人しくさせないと…っ!




「ハナ様っ!身を沈めてっ!!」


「っ?!」




 鋭い声に反射的に屈んだ。瞬間、頭上を何かが通過する。すると震えていたジャガイモがピタリと停止している。そして…真っ二つに割れた。

 そりゃもう見事な切り口で。中身はデンプンでした…安心した。


 見ればミアさんがゆっくりと剣を納めた所で。凄い早業。流石だ惚れる。





「フ…つまらぬものを切ってしまった…」





 微妙にリミッターが外れていたらしい。言わなきゃいい台詞を言い終えてミアさんは少しだけ顔を赤く染めながら「失礼しました」と下がった。やっぱり照れ所が分からない。




「いえ、作業しやすくなりました。ありがとうございます」




 ひとまず動かなくなったジャガイモでオッケーといこう。半分になったジャガイモを薄くスライスしていく。温めておいた油にジャボン。色がついてきた位に素早く取り上げて塩をまぶせば…



 出来上がり!!



 さてさて味見。まだ少し熱いソレを摘まむと口へ運んだ。パキリ、と小気味いい音。






「…っポテチだ…!!」






 まさかポテチで涙を流す時がくるとは…。

 味も食感もポテチそのもの。ああ、塩辛い食べ物がこの世界で食べられる時がくるなんて…いや、塩揉みくらいは作るつもりだけど。


 感涙しながらパリパリパリパリ食べていると、ミアさんと目が合った。なんだか心配そうな表情。

 私はポテチの皿を持つと彼女へ近付く。そして差し出してみた。




「ミアさんも食べますか?」




 美味しいですよ~という態度で見せたのに、引き吊ってるのは何故ですか?

 しかし私が勧めたからか、覚悟を決めたように「では…一つ頂きます」と手に取った。

 そしてそのまま――…パクリ。



 パリパリ…もぐもぐ。




「……美味しい、です」




 よっしゃ!!


 彼女は心底驚いたというようにポテチを見つめている。




「やっぱりこういった塩辛いお菓子ってこの世界にはないんですか?」


「そう…ですね。少なくとも私は初めて口にしました」




 そっか。でもミアさんが美味しいって評価してくれたなら受け入れて貰えそうだ。

 さて、キャロットケーキも焼けた所で本日の予定第二段といきますか。





「ミアさん。騎士団の訓練場に案内して貰えませんか?」





 差し入れ持参で、モヤモヤと対決としましょう!






ハナはポテチとキャロットケーキをGETした。

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