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恋愛フラグ!





「つ、疲れた…」


「お疲れ様でした」


「…………」




 ヘチャリと神殿の床にへたり込む。大理石か何かかな。ヒンヤリとして気持ちいい。

 イオン君が開けたはずの穴は無くなっている。誰かが直してくれたのか。


 疲れきった私と慣れた様子のラスナグと喋るのも億劫なアスナ。

 みんなで町を一回りしてから帰ってきたわけだが…。




「お、恐るべし民パワー…」




 まさかあんな事になるとは。

 時は数時間前に遡る。











**











 私は露店を冷やかしながら歩いていて、香ばしそうな匂いに釣られたらラスナグが買ってくれた。肉の串焼きだ。やっぱり甘いけど、美味しい。

 と、ハグハグ食べながら本来の目的を思い出す。バカップル計画の為にまずは話をしなければ。

 串焼きを焼いているおっちゃんに私は聞いて見ることにした。




「すいません、ちょいとお聞きしたい事があるんですけど…」


「ん?何だい嬢ちゃん?」




 にこやかに対応してくれる。んー…どうやって聞いたらいいもんか。




「えっとですね。トストンとこの国の関係を聞きたくて」


「関係?何だか堅苦しい言い方をする嬢ちゃんだなぁ。トストンはいい国だろう、オレもよく向こうに…って、隊長さんじゃねぇか。しかも神官長様も!」




 おや。ラスナグとアスナは顔見知りらしい。というより有名人?ラスナグは「どうも」と笑顔で会釈し て、アスナは完全無視。…いいのか神官長。




「騎士さんと神官長様に付き添われるとは嬢ちゃん城のお偉いさんか!」


「え。いやその…」


「トストンといや、陛下の想い人の王様がいるなぁ!そこんとこの調査かい?みんなぁー!別嬪なお偉いさんが聞きたい事があるってよー!!」


「ちょ、ま…」


「なんだって?別嬪さん?」


「お偉いさんだなんて、何か困りごと?」


「うちの野菜持ってきなー!城で食ってくれー!」


「陛下の話?なになにようやくお目出度い話?」


「おめでたいと言えば最近娘が…」


「騎士団に土産を…」


「神官も大変…」




 ワイワイガヤガヤ。






 ………………………。






 勿論収集つかなかくなった現場。なんとか抜け出して来たわけだけど…なんだ。近所の集まりか。

 のどかな国とは聞いてたけど、ここまでとは…。




「……とりあえず、誰もが陛下とトストン王の仲は応援していると」


「反対する必要はありませんからね」


「野次馬的なものだろうな」




 うん。完全に面白がってるよね。


 質問攻めやら色々やらで本当疲れた。脱力して体を動かせば痛みが走る。

 う…本格的に打ったとこ痛くなってきたなぁ。

 部屋に戻って見てみた方がよさそうだ。こんな場所服を脱がないと分からないし。




「ニンジンはアスナが預かってくれる?イオン君に抜いて貰う予定なんだ」


「…鉢に植えたまま城内に持ち込むのは危険だからな。引き受けよう」


「ありがと。それじゃ今日は解散ってことで。また付き合ってね?」




 嫌そうな顔を作ったアスナにバイバイと手を振って城に向かう。ラスナグも、せっかく仕事休んで付き合って貰ったのになんだかなぁ…。ニンジンケーキ美味く焼いてプレゼントするくらいしかないしなぁ…記憶、掘り起こしてメモでもしておかなければ。


 ウンウン一人唸っているのが悪かった。見事疎かになった足元が蹴躓く。あ、と思った時にはバランスを崩していて。


 あ、と思った時にはラスナグに抱え込まれていた。




「………」


「大丈夫ですか?やっぱり疲れているんですね。今日はもう休んで…ハナ様?」


「………」




 私は返事をする事が出来ない。

 だってラスナグが持ってる場所、思いっきり打ち付けた場所ですよ。


 息を飲む気配を感じ取ったのか、不振そうに彼が覗き込む。

 真っ青な顔の私を見て見開かれた瞳。やっぱりあ、と思った時には抱き上げられていて。





「っ怪我をしていたなら先に言ってください!」





 気分が悪い、ではなく怪我だと気付く辺りが流石というか。

 振動を与えないように走り出した彼になんとか声をかける。重傷なわけではない、ピンポイントで打ち身を触られたから咄嗟に声が出なかっただけで。




「ら、ラスナグ、大丈夫だから」


「そんな青い顔で何を言ってるんですか!」


「いや、ちょっとドジって脇腹を打っただけでね?刺激しなきゃ痛みなんてないわけで…」


「刺激されれば、痛いのでしょう?」




 そら打ち身だからね。

 会話を続けようとした私は息を飲む。なんせラスナグが脇腹を触ってきたから。強く、ではなく触れる程度。でもさっきの痛みを思い出して息を止めてしまった。


 彼は足を完全に止めると、私の目を真っ直ぐ見た。





「我慢をしても、意味はないです」


「………」


「心配をかけたくないなら、痛いものは痛いと言ってください」





 ……こうやって、心配を、迷惑をかける前に訴えろって?


 また難しい事を言う。私はゆっくりと息を吐くとふて腐れるように呟いてみせた。




「…痛い」


「よく出来ました」




 まるで幼い子供に言うようにするものだから、ムッとして顔を上げた。

 ら、近くには優しげに微笑むラスナグの顔。


 ぶっは。美形って…!!




「王城にも医者はいます。治療して貰ってください」


「ラスナグが診てくれればいーじゃん。手の時みたいに」


「患部を見ずに治療するのは難しいんですよ」




 まぁ脱がすわけにはいかないわな。流石に私も自重してからかったりはしない。

 大人しくなった私を抱いて再び歩き出す。そうだよ、自重するにはしても降ろして貰っていいんでないかい?




「ラスナグ、重傷でもないんだから降ろしてよ」


「駄目です」


「いや、だって重いでしょ」


「柔な作りはしていません。それに、ハナ様は軽いですよ。騎士とは比べ物になりません」


「騎士と比べられてもね」




 そりゃ負傷した相手を支える機会はあるだろうよ。でも私と比べるのおかしくない?

 甲冑着た男の体重より重かったら私は泣くぞ。ん?もしかしてミアさんかな?それはそれで複雑…。




「…ハナ様は、気付くとすぐ怪我を負いますね」


「う」


「だから、目が離せない。…トストンへ行く時、俺も連れていってくれませんか?」


「え?」




 何でまた。確かに誰か付いてきて貰おうと考えてたけどさ。

 わざわざ面倒な事を引き受けなくていいのになぁ…。




「…責任とか考えちゃってる?」


「考えてない、と言ったら嘘になりますね。それ以上に俺がハナ様の傍にいたいんです」




 え。






「…惹かれているんですよ。ですから、傍に居させてください」






 ……………え?






ラスナグが傾いてきました。完全に落ちたわけではないですが、意識はし始めました。

読んでくださりありがとうございます!

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