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心配性と素敵な首輪





「しかしゴロツキ相手にニンジンを出したのは驚きました。何処で手にいれたんですか?」




 アスナと合流しようという事になって(イオン君は放置らしい)町中を二人で歩く。持ってくれた鉢植えを眺めながらラスナグが尋ねてきた。

 私はコルセットが若干伸びてしまったのが気になって仕方ない。

 指を入れて弄りながら問いに答えた。




「イオン君に買って貰ったの。カレーに使う材料だから…まぁこんな危険な代物だとは思ってもいなかったんだけどね。抜くと麻痺するんだっけ?」


「カレーに、ですか…」




 ラスナグの顔がひきつる。

 この世界の人にとってどんだけカレーはデンジャラスな料理になるんだろうか。




「薬とかに使うんだよね?どんな効果があるの?」


「そうですね。滋養強化や、精力剤として使われます。あとハナ様、ゴロツキが逃げたのは、貴女が女性だからですよ」


「え?」




 なんかあるの?





「下手に女性がニンジンを抜くと、その叫び声を聞いた男は…不能になってしまうという噂がありますから」


「ああ…」




 そりゃ必死に逃げるはずだわ。


 店の兄ちゃんとイオン君が焦ったのはそのせいもあったんだろうなぁ…。

 でもまてよ?




「世の女性が痴漢対策でニンジン持ち歩いたらいいんでない?」


「世の男達が一歩も出歩けなくなりますよ。それにニンジンは高価な上数も少ないので一般には普及しないでしょう」




 残念。ニンジン同盟とか作ったら面白そうなのに。

 しかし数が少ないのか。ニンジンのお菓子とか普通にありそうなのに。

 そういえば…ニンジンは栽培が難しい野菜だってテレビで見たことがあるよーな。




「ニンジンって栽培してる農家とかないの?」


「そうですね…比較的に少ないですが、いるにはいます。買い手が薬師くらいしかいないので、儲けも少ないですから」


「そっか。じゃあ私がニンジンのお菓子でも作れば普及するかなぁ」


「お菓子、ですか?」




 中学生の頃、調理自習でキャロットケーキを焼いた事がある。レシピも若干あやふやだが、作れないこともない。多分。

 普通のケーキよりヘルシーだし、見た目が鮮やかだからいいんでないかな?





「お城帰ったら作ってみるよ。そしたらラスナグが試食第一号~…っと、食べたくないならいいんだけど…」





 滋養強化…なら変なものじゃないよね?精力剤ってのはこの際気にしないとして。




「俺が食べてもいいんですか?」


「勿論!まぁ失敗するかもだけど…」


「食べたいです」




 早い答えに私は目を瞬かせる。

 異世界料理だから、珍味が好きなタイプ?




「いいの?」


「ええ。楽しみにしてますね」




 う。いい笑顔で言われた。こりゃ下手なもの作れないなぁ…。


 少しだけ言った事に後悔しながら歩いていると、アスナの姿が見えた。

 大変不機嫌にこちらへと歩いて来ております。逃げたい。




「……合流出来たようだな」


「う、うん。えーっと…アスナ、怒ってる?」


「当てずっぽうに町中を走り出す馬鹿に怒っても仕方ないだろう」




 怒ってんじゃん。

 どうやって静めるべきかと考えていると目の前に差し出されたのは小さな紙袋。よくアクセサリーショップとかで見るくらいの大きさ。

 それをアスナが苦い表情で差し出している。なんだ?毒薬か?




「なに?これ?」


「…お前が勝手に行動するパターンが多いからな。苦渋の策だ」




 受け取れ、と言わんばかりに突き出してきたので思わず貰っちゃったけど…開けていいの?

 困った、とばかりに袋を見ていると「開けてみてください」とラスナグから声がかかった。

 彼は中身を知っているらしい。


 まぁいいか。よいせ、と簡単に封は切れて逆さまにして中身を手のひらに落とす。





「わ!綺麗…」





 中からコロリと出てきたのは色の違うピアスだった。

 シンプルだけど鎖が細く繊細で模様を描くように先に付いている石に絡み付いている。綺麗な深紅の石に、綺麗な淡い青の石。左右違う色の石なんてまたまたお洒落な…。




「気に入って貰えました?」


「うん、凄い綺麗…って、これ私に?」


「お前以外に誰がいる。明らかに女性ものだろう」




 いや、そーなんだけどさ…。

 何で急にアクセサリーなんてプレゼント?そんなキャラじゃないだろうアスナは。どっちかっていうとラスナグが…ん?でもさっきから評価を気にしてるのはラスナグのような?




「これは魔石だ」


「マセキ?」


「この世界で人は魔力が有りそれぞれ違う事は説明したな?」




 ああ、それは聞いた。強さとかも人それぞれだって。

 頷いて覚えていると伝えると、彼は再び説明に入った。




「この石は魔石だ。私とラスナグの魔力を、固めてピアスにしたもの」


「二人の?」


「ええ。個人で作る魔石は目印にもなるんです。自分の魔力を辿れば、見つけられます」




 つまりコレって迷子札?


 アスナの言った苦渋の策って…私がいなくなった後の予防策として魔石を渡すって事かい。しかも二人分。

 綺麗なピアスと二人の顔を見比べる。なんだかんだで心配性だ。



 自然と、笑顔になる。






「ありがとう。大事にするね」






 大切に胸元に抱き込む。ああ、でも私ピアスホールがないや。開けないといけないけど…この世界ってピアッサーはないよねぇ。マジックか何かで印つけて冷してピンでプスリ…出来るかなこれ。


 そういえばアスナはピアスをつけてたな。どうやって開けたのか聞いてみようと顔を上げたら、何故か驚きの表情を浮かべていた。なんだ?




「…嫌がらないのか」


「へ?何で嫌がる必要があるの?」


「居場所を特定させる為の手段だぞ?首輪をつけられたようなものだ。普通は嫌がる」




 これ嫌がらせだったの?


 てか首輪って…何だかマニアックな響きだなぁ。手の中にあるピアスに再び視線を落とす。

 別に、迷子対策だけの為なら紐に通すとか、小袋に入れて渡すだけで十分だ。わざわざこんな、女性ものの綺麗なピアスにする必要なんかない。


 ちゃんと私の事を考えてくれてる心遣いが暖かい。




「こんな綺麗な首輪なら、喜んで」




 ふふふ、ちょっとばかり驚いた顔の後にアスナがどう返していいか分からない表情をしてる。面白いなぁツンデレめ。

 ニヤニヤしていたら気づいたアスナがチョップをくれた。痛いっ!何でだ!




「アスナ。照れ隠しにハナ様を叩くな。言った通りだろ?喜ばないはずがないって」


「…コイツがマゾなだけじゃないのか?」


「私はマゾじゃないですぅ!サドですぅ!」


「余計悪いっ」




 ギャアギャアと騒ぎながら、私達は観光を続ける事となった。



 ピアスを大事に抱えながら。






ニンジン不能伝説はデマらしいですよ。麻痺した部分が偶然そういった結果だった事があったらしいですよ。どうでもいい設定。

迷子札、ゲットしました。

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