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神殿の嵐

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「町に出たい?」


「はい」




 朝早くから勤しんでいる女王陛下の元へ顔パスで通して貰った。

 歓迎会の時に顔を覚えられたらしく、今じゃ廊下を歩くだけで色んな人から声をかけられる。有難いやら恥ずかしいやら…。そして歓迎会の事はあんまり思い出したくない。

 嘘ついたのは確かに悪かったけどさ…二人して女の子を追い詰めるってどうかと思うよ。




「それは構わないけど…ハナ、あなたトストンへ向かう約束をしていなかった?」


「勿論行きますけど、それより先にこの国の町を見たいんです。よければ市場を。どんな食材をどんな調理をするのか、カレーを作る前に知りたいので」




 半分本当。



 半分はちょっとした情報収集だ。カップル成立の作戦の為に民の人達から見た王様ってのを知りたい。

 …あと甘くない食べ物とか。探したい。絶対この数日で体重増えたし。


 ふむ、と陛下は考える様子を見せてからにこやかに頷いた。




「そうね。前に言った通り観光してほしいと思ってるわ。私はこの国を誇りに思っているの。ハナにも是非好きになってほしい」


「陛下…」


「ふふ、外出に許可を求める必要はないのよ?私は確かに貴女に頼み事をしたけれど、拘束するつもりはないの。カレーに専念してくれるのは嬉しいわ。でもそればかりでは疲れてしまうし、自分の為に時間を使いなさい」




 カレーを作る事さえ守れば自由にしてくれて構わない。

 寛大のようでプレッシャーのようで、だけど優しく微笑む陛下は子を見るように穏やかだ。

 なので私も遠慮なく甘えさせて貰う事にしたのだった。











**











 お駄賃として貰った数枚の硬貨。いくらの価値があるかとか深く考えずに隣で微笑んでいるラスナグにパスする。私が持ってると落としそうなんだよね。値段言われても分からないし。


 まだこの世界に詳しくない私に陛下はラスナグというお供をつけてくれた。

 ふふふ、歓迎会以来だねぇラスナグ。今度は機嫌を損ねる事はしないと心に誓うよ。



 目立たないよう市民向けの服をソフィアに用意してもらい、ラスナグも私服に着替えて城の入り口で待ち合わせにした。

 私はよくありそうな藍色のワンピースに上からコルセットのようなものを装着する。

 これ、さりげなくビーズとか糸で模様が描かれてて可愛い。ソフィアに言えば、最近市民のお洒落の流行だそうだ。へぇー趣味いいなぁ。

 長い髪は一纏めにして飾り紐で縛って貰った。うん、見た目は市民だけど生地はいいの使ってるなー有難いけど。



 さて。ラスナグを待たせても悪いので急ぐ事にしよう。

 お金は彼が持ってるし特に何も持たず城を抜ける。そして門の所に佇む彼に声を……




「………」


「ああ、ハナ様。早かったですね。そういった格好も似合ってますよ。…急に固まって、何か忘れ物ですか?」


「美形って罪だね」


「は?」




 私服のラスナグはいつもの騎士服や礼服のキッチリとしたものではなく、ラフなものだ。

 皮の上着に緩いズボン。でもだらしなくなくて、私と似た藍色の服を着込んでいる。腰に着けた剣も自然に見える…なんだこのイケメン。




「なんでもないよ。付き合わせちゃってごめんね、今日はよろしく」


「こちらこそよろしくお願いします。ああ、町に出る前に寄りたい場所があるんですが、いいですか?」


「構わないけど…何処行くの?」




 はて。彼が道案内するように先に歩き出したのでついていく。門を抜け向かった先は…お城の隣?






「わあ!」






 そこには城に大きさこそ劣るものの、立派な建物があった。

 装飾が派手じゃないんだけど、豪華。まるで遺跡みたいに繊細。


 イメージ的には、イギリスとかにありそうな立派な教会だ。




「ここは?」


「神官達が集う神殿です。我が国の神殿では一番大きなものですよ」




 おお、神殿か!


 てことは何か奉られてるんだろうか。宗教なんかはまだ聞いてないから分からないけど…神官。アスナもここにいるんだろうか?

 彼が躊躇なく解放されている大きな扉に入ったので後に続く。



 室内は外観通り柱が多く天井が高い。ステンドグラスから透けて通る光が降り注いで幻想的だ。

 神殿らしい神聖な雰囲気の空間に圧倒されていると、視線を感じた。



 物凄く…感じた。


 天井から目の前に視線を戻せば、キラキラと目を輝かせている子供が一人。

 誰ですか?





「女神様!ようこそ神殿にいらっしゃいました!」





 ニパッと効果音を付けたくなるような輝かしい笑顔。少年の髪は金色で、真ん丸な焦げ茶の瞳が可愛らしい。髪の一部が茶色だし、土の精霊がついているのだろう。

 しかしこんな小さい子歓迎会にいなかったし、顔見知りでもない。

 女神って言ったし、私が異世界人である事は知っているらしい。


 私の腰ほどしかない身長に合わせるように屈み込むとゆっくり問いかけてみた。




「こんにちは。初めまして…だよね?私はハナ=ミズキ。君は?」


「初めまして!ボクはイオン=ラゴナッティと申します!神官見習いですっ!」




 元気一杯に返ってきた。

 イオン君かぁ…可愛いなぁ。ん?ラゴナッティ?何処かで聞いたような…




「ミアの弟君ですよ」


「ああ!ミアさんの!」




 ラスナグの言葉で思い出した。そうだよ美女騎士で戦闘バーサーカーのミアさん。

 確かに弟がいるって言ってた。年の離れた姉弟なんだなぁ。十歳くらいか?


 魔力が強いって言ってた。だから神官になるのかな?この年で見習いって凄いんじゃないだろうか。




「女神様は今日何のご用で?あ!もしかして神殿に興味を?!ボクが案内しますっ!」




 もう、なんというか、耳がピーンと立ってて尻尾がブンブン振ってそうな光景だ。神官見習いって言うくらいだし、女神に対して憧れるものがあるのかもしれない。いやいや私は女神じゃないし。

 どう説明するべきか。悩んだ所で「おい」と低い声がかかった。




「案内など出来るはずないだろう。お前はまだ今日のノルマを達成していない」


「アスナ?」




 イオン君の後ろから現れたのはアスナだった。神殿に彼がいるのは分かる。神官長だからね。

 組み合わせが不思議なだけで…少年とだと人さらいに見える。




「でも神官長。神官見習いは信者の案内をするのが一般の仕事です!」


「こいつは信者ではないし、何よりお前は神官見習いでもない。いいから修行に戻れ。こいつらを呼んだのは私だ」




 用があるってアスナに呼ばれてたのか。


 でも神官見習いじゃないって?じゃあ何で彼は名乗って、しかも神殿にいるんだ?

 疑問を視線に混ぜてアスナを見れば、溜め息混じりに説明してくれた。




「イオンは私が育てている魔術師見習いだ。が、神官の方に興味があるらしくてな…勝手に神殿に行くわ資料を盗み見するわ見習いを名乗るわで手を焼いている」


「神官長が悪いんですよ!神官長と魔術長を兼任しているんですから好きな方を選ばせてくださいっ!」


「お前は…私より魔力潜在能力が高い。これは決まっていた事だろう?」




 頭が痛いとばかりにアスナが額に手を当てる。

 へー候補者を育ててるって言ってたけど、イオン君だったのか。反発はしてるみたいだけど、イオン君の目にはちゃんと尊敬の色が見える。ちゃんと良い師弟関係を築いてるみたいだ。


 アスナは彼を強制退出させようとしたけど、素早く私の後ろに隠れてしまった。お、お?






「ボクだって女神様とお話したいんですよ!神官長やシャルフ隊長ばっかりズルいです!」






 そう言った瞬間。


 私の足元が消えた。



 は?






「え、ちょ…うそおぉぉぉぉおお?!!」


「ハナ様?!」


「?!おいっ…」




 重力に逆らう事なく真っ逆さまに落ちていく。

 手抜き工事か神殿?!死ぬぅ!!



 闇に包まれる前に、小さな笑い声が届いた気がした。






メインは大体出揃いました。一番厄介なイオン君登場。

そろそろ登場人物紹介を入れたいです。。

読んでくださりありがとうございます(深々)

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