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城の中での攻防





 ファンタジーにうきうきで召喚されたらカレー作ってくれって頼まれた。何だこの展開。

 カレーが国を救うの?救っちゃうの?!


 女神と呼ばれたテンションが下がる。というか無理だ。続けられない女神ポジション。

 カレー作るくらいはまぁ…いいけど。折角の異世界だ。楽しみたい。





「別にカレー作るくらい構わないけど…」


「!ありがとうございます!!」





 私が了承の言葉を出せば青メッシュの兄ちゃんは喜び場が湧いた。今まで姿勢を正していた人達が一斉に立ち上がり歓声を上げる。


 いきなりの事に思わずビビった私に気付いた青メッシュの兄ちゃんが横に並び庇うような体勢を取る。おお、背が高い!私、彼の胸元に顔があるよ!





「申し訳ありません。皆、女神の慈悲に感激しているのです」


「はぁ…あ、一言。残念な事言うようだけど、私は女神じゃないよ?確かに別世界の人間だしカレーの作り方知ってるけどそんな神々しいものじゃないから」





 女神呼びも何やら悲しくなってきたので注意すれば、彼は目をパチパチとさせた。

 周りは興奮状態の為聞こえていない。



「そう…なのですか?カレーは神々が口にするものと聞いたものですから…」


「私の世界じゃ一般的な食べ物だし。夢破っちゃって申し訳ないけど、おんなじ人間だよ。私は水樹 花。あ、こっちの世界だと逆かな?ハナ=ミズキです。…このネタで何度からかわれたか…まぁいいか。おにーさんは?」



 そういや他人は紹介されたけとお兄さんの名前は聞いてないよ。

 礼儀として名乗った私に対して一瞬戸惑いの表情を浮かべた彼はにこやかに微笑んだ。




「俺の名前はラスナグ=シャルフと言います。よろしくお願いします、ハナ様」


「人間同士様なんてつけなくていいのに…じゃあカレー作ったら私世界戻っちゃうの?暫く観光とかしていい?」


「観光ですか?こちらの都合で呼び出しておいてなんですが…元の世界へ戻らなくていいのですか?」


「元の世界に早いとこ帰らないと帰れなくなる規制とかあるの?」




 それならもうちょっと考えるけど。




「いえ…ただ、召喚の儀には色々条件を揃えなけばならないので、早くてもひと月はこの世界に滞在して頂きたいと思っております」


「成程。ならいいんじゃない?」




 どうやら月1で決まるらしい。向こうの世界の影響とかも頭よぎったけど、行方不明とかの扱いにはならないだろう。

 なんせうちの両親は娘が半年連絡取らなくても気にしない人達だし、大学も無断で1ヶ月休んだ事もあるしね。またかと思われるくらいか。単位が少し不安だけどな!






「…面白い方ですね」






 クスリと彼が笑う。優しい顔をした人が自然な笑みを浮かべる程綺麗なものはない。


 いい兄ちゃんだ、目の保養と思っていた所で腕を引かれた。後ろに引かれたものだから、誰かと振り向けば先程紹介された目が鋭いアスナ=リヒル…赤メッシュの兄ちゃんだった。




「こいつが女神だろうとただの異世界人だろうとどうでもいい。客人として扱えばいいだろう。カレーについて色々話さねばならん。周りが勝手に盛り上がっているうちに陛下の元へ連れていくぞ。煩くて叶わん」


「そうだな…この興奮状態だととハナ様も危険か。では案内します」




 客人扱い、というわりには乱暴な仕草で腕を引かれる。おお、なんというか王道な!嫌われパターンか?最後にはデレるパターンだな。


 確か…アスナだっけ。先頭をラスナグ、次にアスナ、そしてアスナに引きずられるようにして私が広間から退出していく。

 おお、廊下も豪華だ。




「ここってお城なの?」


「城以外に何に見える」




 おや。返事がツンだ。

 アスナの言葉遣いに苦笑いしながらラスナグが説明を追加してくれた。




「ここは城であり我らが王で在らせられるラビスラル陛下のお住まいです。我が国レナーガルは農業を主に国益とした小さな国でして、気候も温かく平和なものです」


「へぇ~。でも、カレー作らないと危険なんでしょ?平和じゃないんじゃ?」


「それを今から説明しに陛下の元へお前を連れているんだろう」




 引きずるまま当然のように話される。


 召喚したのは確かに公式の場だったけど、見た目普通の人と変わりないし本人も女神説を否定したもんだから胡散臭満載かとは私も思うけど…ツンだとは分かってるけど。



 こうもね?人と視線を合わせず自分の都合で動く奴を見るとね?



 グッと引きずられるままに歩いていた足を踏ん張る。停止した私と一緒に勿論腕を引っ張っていたアスナも止まった。




「なんだ…」


「天誅っ!」








 ドカッ!








 そして振り返った彼の頭にジャンピングしてチョップを食らわせた。背が高いんだよ!


 綺麗に入ったものだからグラリと彼は体を揺らす。が、踏みとどまり目付きの悪い目で私を睨み付ける。怖いっ!魔王って絶対こんな顔だよ!そして握られてる腕がギリギリあり得ない音してるんだけど!




「痛いっ!力緩めてよ!てか離せっ!」


「こっちも痛いわ!何なんだ貴様は!」





「煩いっ!あんたがどう考えても悪いでしょーが!女の腕無理に引っ張って事情も知らない奴に悪態ついてこっちを見ようともしない!男として、いや人間として最悪でしょーよ!」





 言ってやったぜ!




手が早い主人公。

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