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嘘つきの洗礼

更新遅くてすいません;

今年もよろしくお願いします!




 ラスナグの格好は女王陛下の横に立っているティマさんと同じ白の礼服。

 これがまたいつもの騎士服とも違って格好いい。


 それをじっくり眺めたい所だけれど、何やら空気が張り詰めているようなので無理っぽい。

 彼は私の腕を掴んで引き寄せて、顔を覗き込んでいる状態で停止。

 私もそれに合わせて見上げているわけだが…この体勢、つ、辛いんですけど…!




「ら、ラスナグっ私辛いんですがっ!」


「-…承知しました」




 いつもより硬い声が返ってきたと思った瞬間、私の体は浮いていた。…浮いた?

 なっ何で私ラスナグに抱き上げられてんの?!




「え?ええ??ちょ、ラスナグ?!」


「体が辛いんでしょう?休憩室までお運びします」




 辛いは辛いがあれは手を離してくれれば問題は無かったわけだが!!



 しっかりと回された手がほどかれる気配はない。いきなり放されても私が落下するだけだけどさ。

 唖然と私がしている間に彼はスタスタとホールを横切り廊下へ。

 待て待て待て!私まだ一口も料理を食べてないっ!






「ラスナグ!!」


「っ、」






 思わず、というより勢いで。叱りつけるかのように大声で名前を呼んでしまった。

 私も驚いたけどラスナグも驚いたみたいで、目をパチクリさせて足を止めた。よ、よし。止まった。


 驚きを表情に出さないようにして彼を真っ直ぐ見る。強気で言ったのなら強気のままで。

 いや、注目浴びちゃったからね。ここで弱気になったからカッコ悪いでしょう!






「降ろして」






 まるで私が王様のように言ってのける。

 その言葉に従うように、彼はゆっくりと降ろしてくれた。それで私は満足したわけだがラスナグの姿が消えた。…え、何処へ?


 周りが静かになっている。何だか嫌な予感がして…周りの視線を辿ってみた。

 ら、いましたラスナグ。


 私の前で膝まずいてる彼の姿。



 …どうしてそうなった?!




「申し訳、ありません。出過ぎた真似を致しました」


「え、いやっ、分かってくれればいいからっ!」




 叱られに項垂れる彼に慌てて私も目線を合わせるようにしゃがみ込む。

 いや、叱ったつもりはないよ。ちょっと強気に言っただけだよ。




「私の話はちゃんと聞いて。ラスナグも。どうしてほしいか、言って?ちゃんと聞くから」


「……ハナ様」




 子供に諭すような言葉になってしまった。でも彼は特に反論もないようで反省していますと言いたげな…捨てられた子犬の表情で見上げてくる。

 可愛いとか思ってしまうのはダメだろうか。




「ほら、立って!私の為のパーティーなんだから主役が抜けたら駄目でしょ。そういえばラスナグ何処にいたの?開始直後はいなかったよね?」




 腕を引っ張り立たせれば今度は見下ろされる。なんだかなぁ…ただの小娘にいちいち頭下げるのも騎士って大変なんだなぁ。

 公式の場では私も気をつけて話さないと。一応女神設定なんだし。

 トストン組をクリアしたせいで油断したわ。




「俺は城外の警備担当なので指示を出していました。参加が遅くなり申し訳ありません」


「いやいやお仕事優先で構いませんとも!お疲れ様。なら、お腹すいてない?美味しそうなの沢山あるから、一緒に食べようよ」




 忙しかったのか。そんな中参加してくれようとするのは騎士の鑑だねぇ。よし、労ってしんぜよう。


 私は並べられている料理に近付くと可愛らしく一口サイズにされ楊枝で取る美味しそうな肉料理を目にする。それを一つ掴むと後ろにいるラスナグに向き直った。





「はい、あーん」





 背の高い彼の口元に笑顔で差し出せば、一瞬にして顔が赤く染まる。

 おや、初々しい。こりゃ私が服を脱がせるイタズラを仕掛けた時と同じコースか…ってまた怒らせちゃうじゃん!




「貴女という人は…」




 ヤバい、と顔をひきつらせた私に彼は何か言いかけたけど諦めた様子で口を開き、



 パクりと、


 食べてくれた。



 ふと指先に触れた柔らかなもの。それはきっと、唇だろう。

 今度は私が真っ赤になった。




「お、美味しい?」




 誤魔化すように慌てて聞けば、彼はやっぱり困ったように微笑んだ。




「美味しいですよ」


「よ、よかった!じゃあ食べよう沢山食べようっ!」




 何だか見てられなくて慌てて料理へと顔を戻す。

 皿を掴みいざ盛ろうとした所で、それを優しく取り上げられた。




「どれを食べますか?」




 どうやら給仕をしてくれるらしい。

 照れるんですが。姫だっこやら膝まづくやら…どうしたものか。




「おい」


「ひぇっ!」




 急に声をかけられ体が跳ねる。

 見れば呆れた表情を浮かべながらアスナが横にいた。き、気付かなかった…。




「目立っている事に気付け。イチャつくなら他所でやれ」


「は?」




 彼の言葉に変な声が出た。目立ってる?そりゃ…私主役ですから。


 イチャついているつもりはなかった。が、確かに先程までの行動を思い返すとバカップルに他ならない。…王様同士をバカップルにするつもりが私がなってどーすんだ。合コンのノリみたいになってたけど。




「目立ってた?」


「凄くな」


「ならアスナも。はい、あーん」


「は?」




 巻き込んでやろう。


 私の世界じゃ常識、みたいに振る舞えば問題ないわけだし。

 因みに私は恥ずかしくない。年の離れた弟がいるのでこういったやり取りは珍しくないのだ。

 美味しいものは分かち合いたい。ので、よく一緒に食べに行く友達とかにもついしてしまう。その時の反応は三つに絞られる。喜んで飛び付くか、ラスナグみたいに戸惑いながらも食べてくれるか…引くかだ。


 予想通り、アスナは引いたようだ。




「ほらほら、これ美味しいよ?口開けてよ」


「何故私が食べさせられないとならないっ!誰にでもやるな、迷惑を考え…もがっ?!!」


「はいはーい。口に含んだまま喋らなーい」




 文句というより叱りつける彼の口に突っ込んでやった。

 結構大きめのやつを喉奥へ入れたので噎せそうになっている。吐かないで飲み込んで!やっといてなんだけど!




「ハナ様。ハナ様の世界では、このように食べ物を食べさせる風習でもあるんですか?」




 案の定ラスナグが質問してくる。

 私は強く頷いてみせた。




「美味しいものは分かち合おうっていうことだよ。まぁ行儀は悪いんだけど…ほら、美味しかったものとか楽しかったこととか色んな人に知って貰いたいでしょ?」




 嘘だけどね!


 分かち合うのは悪いことじゃないし、私の世界の常識なんて知らない彼らには大丈夫だろう。

 …とか考えたのが悪かったんだ。




「成程。では…ハナ様」


「ん?」


「口を開けてください。はい、どうぞ」




 笑顔で彼が先程私が食べさせた同じものを差し出してきた。

 え、まさかの趣向返し?




「え、あ、ちょ…」


「俺は美味しいと感じたので、どうぞ。分け合いましょう?」




 にこにこと笑って迫ってくる。実は怒ってたのかいラスナグ君。

 やるのはいいけどやられるのは慣れてないし、美形にされるのは恥ずかしい。



 ジリジリと下がっていくと、背中に何か当たった。

 その当たったものがガッシリと私を拘束する。


 何で?!って、アスナ?!




「何で逃げる?お前の世界の風習なんだろう?」


「え、いや、そのぉー…」




 目が据わってますよ!しまった、口に突っ込みすぎたのか。

 両脇に腕を通されがっちりホールド。目の前には笑顔で差し出された美味しそうな料理。






「はい、あーん」






 …………。




「ごめんなさい」




 嘘なんてつくもんじゃない。






爽やか世話焼きっぽいラスナグの性格だったはずが、若干黒い方に向かってる気がします…。おかしい、な?;

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