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ツンデレ王との会話





「…異人である小娘か。王であるワシに何用だ」




 丁寧に挨拶したおかげか。些か柔らかい言葉が返ってきた。


 最初が肝心肝心。


 王様らしいダンディなおじ様。渋専なら真っ先に食いつかれそうな顔をじっと見つめる。とりあえず失礼にならない程度に。

 鋭い眼光もツンデレと思うと差ほど気にならない。目を逸らさず問われた事に答える事にした。




「まだ私はこの世界に来て日が浅いので、この国レナーガルの事しか学んでおりません。ですので是非とも貴国の話を聞かせて頂きたいのです」




 相手を知るならまず周りから。

 王様であるなら特にね。あと変なしきたりとかあっても困るから聞いておきたい。



 真摯に言ってみせればトストン王は少し無言の後に「いいだろう」と言ってくれた。よっしゃ、合格ラインだった。




「我が国トストンはレナーガルと同じ大きさの領土を持つ小国だ。鉱山を多く持ち様々な貴金属を加工する技術を持つ。交易が盛んで主な輸出品も、品質高い鉱石だ」




 成程。鉱石は確かに各国欲しがるだろうなぁ。装飾品、武器、家庭器具。使わない所はないだろう。

 儲けてそうだなと頭の中で考えつつ、質問を続けている。




「ではトストンは各国との繋がりが強い国、という事ですか?」


「そうだ。…といいたい所だがホルエバルというデカイ島国とはやり取りしていない。あれは何処の国とも交流を持たない独立国家だからな。精霊との繋がりが強く魔術の怪しい研究をしている未知の国…と呼ばれておる」




 忌々しいと言わんばかりに吐き捨てられた。そのホルエバルって国と何かあったんだろうか…うん、顔が怖いことになってるしスルーしようそうしよう。




「では、レナーガルとは交易をしているのですね」


「…そうなるな」



「やはり、装飾品が多いのですか?王は女性ですし」


「何故あやつにやらねばならない。我がしているのは交易!国と国とのやり取りだ。この国は農業が盛んで鍬や鎌を農作物と換えているだけだっ」




 うわーい、話しきる前に被ってきたー。


 強い口調で言ってるけど目の端でチラチラと女王陛下を窺っている。ツンデレって凄い。






「…あいつは、我が贈ったものは一切身に付けんからな」






 ん?


 半分遠い目をしていた私の耳に聞こえたのは小さな言葉。なんだ、贈ってんじゃん。それとも付き合ってたっていう遠い昔?

 でも身に付けてないだなんて…それは少し可哀想だな。好きな人から貰ったものなら喜ぶはず。着けてないのには理由があるんじゃなかろーか?



 彼女の衣装は確かに王としてはきらびやかだけど、女性としては地味なほうだ。宝石類は胸元にあるブローチくらい。耳には何も着けてないし、頭だって纏めてあるけど飾っているのは綺麗な紐と羽根だけ。似合うだろうから着飾ればいいのに。

 …待てよ?普段から貰った装飾品を身に付けない彼女が艶やかに着飾って彼の前に来たら結構破壊力があったりする?


 そしてイイ雰囲気のまま密室に閉じ込めればキスくらい交わして告白までもつれ込むんじゃ…まぁそんな簡単にはいかないだろうけど、険悪にはならないだろう。

 後はあれだな。二人がくっつく事による国問題。継ぐ人がいないってのも解決しないと。選挙とか?裏工作するような人間は私に探りようがないし。難しくなってきたなー。


 一人ウンウン考え込んでいたら意識を飛ばしていたらしい。気づけばトストン王が愚痴を溢していた。




「大体あやつは王として自覚はあるようだが女としての自覚が無さすぎる。普通に着飾ればいいものを重いだの似合わないだのと…似合うものしか贈らんというのに、我のセンスを何だと思ってるのか…」





 あーだこーだ。聞いていても解る。王様メロメロだやっぱ。

 一人語っている王様から目を逸らし背後で様子を窺っていたサイシャを見る。うん、満面の笑顔で返された。日常茶飯事ということか。そりゃさっさとくっ付けと言いたくなるよねぇ。


 後は女王陛下の気持ちも知りたい。口論の様子からして、嫌ってるわけじゃないと思うけどなぁ。


 後は…




「トストン王。話を戻して申し訳ないのですが…カレーについての書物がそちらにあると窺っております。一度拝見させては頂けないでしょうか?」




 大丈夫だとは思うけど、カレーが別物と判断されちゃ不味いのだ。辛いってだけならいいんだけど、実際カレーとカレーライスなら私の世界でも形状が違う。細かく分けるなら別物だ。


 まぁ確認と同時にトストンの国をブラリ旅も悪くないかなぁーというのが私の思考。しかし話を中断させたのは悪かったかな。王様眉間に皺寄ってるよ。




「…我が判断すると言っても、信用ならんか?」


「そういった意味ではありません。例えばアイスクリームに種類があるように、私の世界にもカレーというものが何種類も存在します。トストン王が「カレー」であると頷けるものを作るよう、私はここに喚ばれました。でしたら最善を尽くすことが、私の務めなのです」




 笑顔でとりあえず。無難な答えになったかな?

 暫く悩んだ様子を見せた王様は、しっかりと頷いてくれた。





「よかろう。我が国に招待しよう異界の娘よ」





 頷いてくれたはいいが、何ですかその悪い笑顔は。企んでますって顔に書いてあるようなものだ。

 私は笑顔を返しながらもサイシャを横目で確認する。うん、向こうもイイ笑顔。嫌な予感しかしないので誰かレナーガルの人についてきてもらおうそうしよう。



 とりあえず約束を取り付けた後は無難な話を一つ二つ交わして離れた。

 あー猫被るのも疲れるもんだなぁ。


 女王側に戻ろうとした所で立ち塞がる壁。…何用ですか胡散臭い笑みのサイシャルーアさん。


 彼は誰もが見惚れそうな笑みを浮かべたと思うと私の方へ屈み込んできた。

 なんだ、と身構える前に耳に触れる柔らかな熱。






「…合格です」






 何が。



 いや、それ以上に耳に息を吹きかけないで貰えませんかね?!あと触れたのって唇?!低ボイスがエロいエロい!!

 知らない男にやられれば気持ち悪いに違いないが、美形だ。顔が良ければ何やっても許されると思うなよ!!…説得力ないくらい顔は真っ赤だろうけど。これ前にも誰かに思わなかったか?


 そんな私の表情に満足げな様子で彼は踵を返すと王の元へ戻っていった。くくく悔しいぃぃい!!

 してやられた気分で憤慨していると、急に体が傾いだ。



 躓いたわけじゃない。腕を捕まれて後ろに引っ張られたのだ。



 ヒールの高い靴で正直これはキツい。

 よろめきながらも何とか踏みとどまり後ろを見れば、探していた人がいた。




「ラス…」




 ラスナグ、と最後まで名前を言いたかったんだけど。

 今まで見たことないくらい顔が険しい事になってたので止まってしまった。



 ど、どしたの?






読んでくださりありがとうございます!

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