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バカップル計画発令





 雄叫びのようにいい放ったにも拘わらず、私の声に口論が止まる事はなかった。

 無視すんなーっ!




「落ち着け。お前が憤慨することないだろう」


「だって!カレーだって結構大変なんだよ?!」




 主に材料が。


 暴れる私をアスナが押さえつけながら諭す。いやいやいや、文句の一つでも言ってやんなきゃこの怒りは収まらないって。




「お前には被害が及ばないようにしているし、客人扱いだ。元の世界にも戻れるし観光するとまでお前は言ってのけた。一つ料理をするだけの立場で何を怒る?」


「ぐっ…そう言われると弱いけど…でもっ」




 私の異世界召喚理由がただの痴話喧嘩なんてー!!




「そもそも両想いならさっさとくっつけばいいじゃん!」


「権力者というのは柵が多いのですよ。因みに国民は全て知っていますので、温かく見守っております」




 なんでだ。


 だからか、私を見る目が優しいというか生暖かかったのは…。

 にこにこと話してくれるサイシャルーアにさえイラリとするわ。




「今まで二人をくっつけようとした人はいなかったわけ?」


「人の恋路に手を出すものは馬にも蹴られます。体よく返り討ちですね」




 いい迷惑だ。


 しかし三十年…三十年か。怒りは消えて呆れになる。

 頑固というか…よく周りは耐えてるな。それとも若い頃の二人を知ってるから見守ってる?国民も味方…こりゃ色々聞く必要があるな。




「…サイシャルーアは二人がくっつくのに反対しないの?」


「王の決めた事でしたら」


「アスナは?」


「陛下の心のままに」




 うし、決めた。

 この迷惑なバカップル、無事にゴールインさせてみせようじゃないの!!






「決めた!私カレーを完成させた暁には王様達をくっつけてみせる!」


「おお、流石女神と呼ばれるお方。頼もしいお言葉です」






 拍手をくれたのはサイシャルーアのみ。

 アスナは呆れたような目をしていた。無理だと思ってるのか?やってやろうじゃん。


 しかし私達の会話を聞いていたのか周りがざわつき始めた。どうやら二人の世界と化している陛下S以外は両国に壁はないらしい。違う色の鎧同士がコソコソと話し合っている。




 女神様が両陛下をくっ付けてくださるってさ。

 女神様って縁結びに強いのか?

 成功するに100!お前らは?

 俺は失敗に100ー。

 あ、オレは200で!




 賭けまで始まったよ。

 しかも失敗する方が多そうだ。失礼だな!

 アスナとサイシャルーアも周りの声が聞こえているのだろう。苦笑いと苦い顔でこれまた咎める事もなさそう。いいけどさ…なんか他人事のように構えているお二人さん。




「手伝ってよね?」


「「…え?」」




 私だけの問題じゃないでしょう。寧ろ無関係よ私。

 それにこんな二人に詳しい奴いないわけだし、権力者を味方につけるのは良い事だ。相手は最高権力者だけど。




「カレー作りと同時進行なら時間ないし、国にいざこざがないなら協力してくれるのは当たり前じゃない?どうせやるなら徹底的に。任せっきりは許さないわよ」




 巻き込みますとも。

 私の発言に言い返そうとしたのか口を開けたアスナだったが、思うことがあったらしい。何も話さず口を閉ざした。サイシャルーアは困ったように笑みを作る。




「強かですね、女神様は」


「女は強しってね。異世界に来てカレー作るだけってのは居たたまれないしちょうどいいわ。あと、これ私の歓迎会なんでしょ?いつ始まるの?」




 さっきから視界の端に映る料理の数々が気になって仕方ないのよね。甘いんだろうけど…甘いんだろうなぁ…。

 私の視線に気付いた二人が共に王の元へ向かう。あの間に入り込むとは…手慣れたものだな。

 お互い腹心とも言える臣下に注意されたからだろうか。先程までとは違い上に立つ者のオーラを纏いながら立ち上がる。


 女王と隣国の王はワインらしき液体が入ったグラスを持ち上げクロスさせる。そして声高々に「我々の国に祝杯を!」と乾杯してみせた。

 …あのグラスいつ持った?二人とも。




「女神様、どの料理から食されますか?」


「えっ?!私そんな料理見てました?!」


「見ていたどころかガン見だ、馬鹿」




 にこやかなサイシャルーアが取り分け皿を持ちながら尋ねてくる。顔に出てたのか。

 アスナの毒舌をスルーしながら並べられた料理を順に見る。照れる前に食べる。そう、それがいい。

 周りにいた騎士達も雑談したり料理をつついたりと騒がしくなる。私の方をチラチラ見てくるけど近付いてはこない。左右を固めている男二人。…質問責めに遭わないのは、主に二人のお陰か。



 貴族が少なそうなのも配慮なのか、それとも思惑なのかは知らないけど私もそれを利用しよう。煩く言われないうちに本人確認ーっと。




「サイシャ…ルーアさん。お宅の国王陛下に挨拶したいんだけど…ですけど?」

「敬語はいりません。あとサイシャで構いませんよ。では、ご案内しましょう」




 長い名前であることは理解してたんだなー。じゃあ遠慮なくサイシャでいいか。敬語も言われた通り止めておく。身分的にアスナと同じくらいみたいだし、こっちだけ敬語なのも何だか違和感あるしね。

 料理は名残惜しいが挨拶が大事。サイシャが皿をアスナに押し付けると私の手を取った。優雅に歩き出すのに着いていく。ごめんよアスナ。



 しかし見事に周りは騎士ばかりだ。貴族なんかほとんどいないのに…ラスナグは、いないな。


 本当はずっと気になってた。いつもなら一番に顔を見せてくれるのに何処にもいない。隊長さんだから、何かの任務についてるのかな?





「…誰かお探しですか?」


「へ?」


「先程からキョロキョロなさっておいでですので」





 うわぁ。態度に出ていたらしい。

 やっぱりにこやかな彼の顔に苦笑いを返すと「女神様は分かりやすい方なんですね」とコメントをしにくい感想が出た。誉めてないよねソレ。




「ふふふ…これは、久々に楽しくなりそうです」


「あのね…私はサイシャを楽しませようと思って百面相してるわけじゃないのよ?」


「理解しています。だからこそ、ですよ。さぁ…貴女の手腕を見せてください。貴女が私の想像を越える方でしたら惜しみ無く力をお貸しします」




 この狸め。


 恭しく連れてこられた隣国の王様を前に、私は綺麗に礼をとり頭を下げた。





「お初に御目にかかります。私はレナーガルに召喚されましたハナ=ミズキと申します。本日はお会いできて光栄ですわ、トストン王」





 私だって、やるときはやってやるんだから。






読んでくださりありがとうございます。

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