表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/57

戦闘リミッター





「みっみみみみあさん何かがっ!」


「ジャガイモです!」




 あれが?!


 あれと言いつつもまだ土から出てきた蔦しか見ていない。

 確かにジャガイモって蔦が長いけど…おかしいな。私が今見た蔦らしきものは直径十センチくらいある太さのものだったはず。




「…ひとつ聞きますが、ジャガイモって魔物どのくらいの大きさが一般的なんですか?」


「大体が5フィブ。最大で10フィブくらいです」


「ごめんなさい。フィブってどのくらい…?」


「ああ、申し訳ありません。ハナ様の腰辺りまでで1フィブになります」




 メートルと同じくらいってことか。最大10メートルって何。それって美味しいの?

 うん諦めよう。諦めるしかないでしょうこれは。魔物って聞いた時点で本気で拒否するかカレーの材料誤魔化せば良かった!!


 ミアさんは律儀に私の問いかけに答えながら剣を油断なく構えてみせる。私は言われていた通り背中にくっついておいた。

 平凡かつ平均な私は運動神経が抜群に良いわけでもなく格闘技を習っていたわけでもない。こういう時お荷物だよね。




「ハナ様!!」




 そんな事を考えている間にも事態は変わっていく。

 土の中にいた蔦が顔を出してきたのだ。先程見た大きい蔦がこれまた何十本も。ひえぇぇえ!


 ヤマタノオロチか!と思わず突っ込みたくなる。地面が揺れるのでバランスを崩した瞬間体に巻き付くものがあった。マズイ、と思った時にはミアさんの叫び声が聞こえていた。





「ぎゃ、~~~っ!!!」





 あの太い蔦が腰に巻きついたのだ。悲鳴を上げようとした所で勢いよく宙へと持ち上げられる。

 締め付けられた痛みと急激な浮遊感に声が出ない。


 や、ヤバい。これ地面に叩きつけられたら終わりじゃないか?ジャガイモでゲームオーバーとか洒落にならん!

 必死にもがけば緩むどころか絞められる。ぐえぇ、圧死する。誰か助けて!


 脳内で助けを呼んだ時だった。ふと圧迫が緩み、体が急速に落下する。




「え」




 ワンテンポ遅れて声が出た。間近に迫る地面に目が離せない。


 ゲームオーバーですか?






「うぶっ?!」






 見開かれた目に飛び込んできたのは白。そして闇。

 衝撃に息が一瞬止まったけど、痛みは殆どなかった。


 何より地面にはない熱が自身を包み込む。






「…遅れてすいません」


「ラスナグ?!」






 驚いた。私を抱き抱えるようにしてヒーローの如く現れたのはラスナグ隊長だった。

 抜かれた剣と落ちている蔦を見てどうやら切って落としてキャッチという凄技を披露してくれたのだと理解する。た、助かった!




「ありがとラスナグ!死ぬかと、死ぬかとっ!」


「無事で良かったですよ。ジャガイモ発見の連絡を監察部隊から受けて向かえばハナ様達がいたので」




 危機一髪ってやつだね!


 目立った怪我もない私の姿を確認して自分の背に追いやる。ウネウネと蔦を動かすジャガイモに再びラスナグが向き直った。

 …はて。ミアさんは何処へ消えた?




「ハナ様!」


「うわぁ?!ビックリした!!」




 いきなり目の前に現れたミアさんに壮絶に驚いた。気配ありませんでしたよ?!




「申し訳ありません…私がついていながら危ない目に…隊長もお手を煩わせてしまって」


「あ、大丈夫ですよ。怪我もないですから」


「ハナ様がこう言ってくれてる。ご厚意に甘えておくといい。ミア、君は存分に暴れてこい」




 ラスナグに暴れてこいと告げられた瞬間、ミアさんの目が鋭く光った。

 暴れてこいってあんな大きな獲物に一人で行かせるつもりなんだろうか。あと他の隊の人は何処に?


 そういった疑問を口にする前に事は起きた。ウネウネと地面から生えていた数本の蔦が根元からスッパリと切れたのだ。

 太い蔦がボトンッと大きな音を立てて転がる。何が起こったのか分からず唖然としていると、すぐ側に立っていたミアさんが「フフフ…」と不気味な声を上げた。




「ミアさ」



「アーハッハッハ!ひれ伏せ愚か者!我が前に立ち塞がるならば今のように切り刻んでやろう!なに、地獄など生ぬるい。生きている事を後悔せよ!」




 …どなた?


 まるで人が変わったように目を爛々と輝かせジャガイモに叫んでいるのは間違いなくミアさんだ。え、えええー?女騎士の凛々しさは何処へやら。暴君みたいになってるんですけど?

 説明を求めるようにラスナグを見れば、彼は困ったように苦笑いを浮かべ、




「彼女、戦闘狂なんです。リミッター外れると性格変わります」




 なんともそのままな説明を返した。

 隊長から戦闘よし、という許可を貰い外れたらしい。実に愉しそうに剣を振り回すミアさんは高笑いをしながらスッパスッパと襲いかかる蔦を切り捨てていく。強い…けど怖い。


 ジャガイモもされるがままともいかず反撃を開始する。地響きを立てながら地面から全身を飛び出させた。蔦の大きさからして結構あるとか思ってたけど、やっぱりあるのね。

 ジャガイモはバラバラに動かしていた蔦をミアさん一人に絞りこむ。二三本纏めて上下左右に配置しランダム感覚で彼女に襲い掛かる。切り落としてもジャガイモの蔦は減らない。かなり多いな蔦の数。


 いつまでも続くように見えた攻防戦。でもミアさんに敵を絞ったかに見えたジャガイモは、しっかり私達も敵と見なしていたようで。



 地面から突如生えた蔦が足を掴む。再びの感触に悲鳴を上げるとラスナグがすぐ気付いた。




「ハナ様っ!」




 助けてくれようとする人に人がすがるのは当然の摂理だと思うんです。


 伸ばされた手を必死に掴んだ。






ウネウネ戦。ここから更新は不定期とさせて頂きます。すいません、PCから離れる機会が多いので…週一は更新したいです、はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ