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食材の話




 半分以上残してしまった朝食に謝罪しつつも本日は約束していた厨房にお邪魔しております。

スッキリと片付けられコックも一人もおりません。…貸切状態?




「ラスナグ。もしかしなくとも私の為に場所取った?」


「ここは予備の厨房なんですよ。流石に城の第一厨房はバタバタしていて見せられませんから」




 成程。それなら良かった。

  流石に働く人の手を止めてまで見学したいとは思ってない。でもちょっと調理してる人達の様子は覗きたかった。どんだけ砂糖入れてるの?




「…まぁその問題は置いといて、あれだ。コンロってやっぱり魔法を使って火を起こすの?」


「そうですね。必ず各調理場に三人以上火の加護を持つ調理人がいます」


「へぇぇ~省エネだね、羨ましいや。あ、水道はあるんだ」




 下水道とかはちゃんとないとだもんね。火より水回りがあるほうが有難いか。

 一人納得しながら歩く。冷蔵庫っぽいものはあるって昨日フィノアが言ってたからいいとして、後は調理器具と調味料。


 調味料はカレー粉があるわけだからあんまり必要ないかもしれないけど、私の食生活の為。自給自足ライフの為に確認しとかないと。




「味噌と醤油なんてものはない、よねぇ…」


「ミソとショーユ…それは何かの呪文ですか?」




 ええ。塩分という強い味方ですとも。

 日本文化だから仕方ないか。




「お、油っぽいの発見。塩もあるね。砂糖に砂糖に砂糖…どんなけだよ。胡椒もあるし、うん」




 これなら大丈夫かな。




「ハナ様、それは蜂蜜です。油はこっちに」


「そう…蜂蜜常備なのね。想像だけでかえって良かったのかも…。鍋とか包丁とかはあるよね?」


「はい。こちらに」




 調理器具は変わらない。普通の鍋と包丁だ。

 確認終了とばかりに頷けば今度は謁見室に連れてこられた。材料などの事は女王の前でしてほしいとのこと。一流のものを用意してくれるらしい。大規模だなぁ。


 長い廊下を歩き辿り着いた場所はあの私が召喚された大きな部屋。仰々しく扉を開かれれば女王陛下とアスナ。そしてサイドを固める大臣っぽい人の束。

 な、なんだコリャ。




「おはよう、ハナ。よく眠れたかしら?」




 にこやかに陛下が挨拶してくれてラスナグに促され部屋へと入る。突き刺さる視線に足が止まりそうになったが、何とか突き進む。

 とりあえず正面の調度いい場所で止まって返事をした。




「はい、よく休めました。素敵な部屋をありがとうございます」


「気に入ってくれたのなら何よりだわ」




 気に入るというよりビビりましたが。

 気付くと隣にいたラスナグの姿がない。と、足元で膝まずいていた。


 そうだったー!気軽に挨拶なんか返しちゃったけど私も膝まずくべきだった?!でも一応敬語だしセーフ?セーフでいい??

 注目を浴びる中どうしていいか分からず立ったままでいると陛下は気にする様子もなくニコニコと話を続ける。




「それで、ハナがよければ今日からカレー作りに励んで貰いたいの。神々の作る料理だから、材料も珍しいものかもしれないでしょう?だから皆の知恵も借りようと思って、今日はこんなに大勢なのよ。ふふ、女神を一目見てみたいって野次馬気分の人もいるようだけど」




 私が戸惑いを浮かべたのを彼女は感じ取ってくれていたみたいだ。

 成程、知恵を…そして私見たさか。ごめん、女神なんて呼び方されるほど美人とは言い難い。若しくは政治に使えそうだとか企む人間が多いのだろうか?


 改めて周りに腰かけているお偉いさんを見てみる。誰もが…何だか暖かい目をしているのは気のせいでしょうか?

 陛下と同じくらいの年齢層が多い。腹黒い人が多いんじゃないかという勝手な想像をしていたが、何でそんな孫を見るような目で見てくるんだろう。まさか皆私が女神だと信じてるとか?いやでも…ラスナグやアスナだって半信半疑…でもなく異世界人だって思ってくれてるし。


 よく分からないけど、陛下が緊張するなと気を使ってくれたのは分かる。だからこのスタイルで行くことにした。




「分かりました。私でよければご協力させて頂きます」




 開き直りで高らかに言ってみせると、おおっというちょっとしたざわめきが起きた。

 気にしない、気にしないぞ。




「用意して頂きたいのは五つ。ご飯…お米ですね」


「稲の、ね。それならこの国で栽培しているわ。最高級のを用意しましょう」




 お米を作ってるのか。もしかしたら和菓子類いもあるかもしれないなぁ…塩煎餅とかいいかも。






「次は、ジャガイモ…」


「ジャガイモ?!」






 び…っくりした。


 いきなり彼女が叫んだものだから喋りを止めてしまった。顔色が真っ白で深く座っていた玉座から半分立ち上がってしまっている。


 え、ジャガイモがどうかしたんでしょうか?


 女王だけじゃない。周りも驚愕の表情でざわめきを増している。

 ラスナグでさえ唖然と私を見上げてきた。




「あの、森の守護者と呼ばれる魔物が食材なの…?!」




 ………ジャガイモ、ですが?


 なに、その変な肩書き。魔物ってどういう事だ。

 嫌な予感しかしない。



今度は静まり返ってしまった空間に私もただ頷くしかなかった。






次回、ジャガイモ編です。

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