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アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 78話 思い出の味

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。




池図女学院部室棟、あーかい部部室。






「結局、おふくろの味が何なのかわからなかった……。」




あさぎは白ちゃんとおふくろの味について語り明かした挙句、答えが見つけられず項垂れていた。




「そんなに焦らなくたって、ゆっくりおふくろになっていけば良いじゃない。」


「『ゆっくりおふくろになる』って何ですか?」


「……ごめん、勢いで言ったけど意味わかんないわね。」


「参ったなあ……。」


「生まれそう?」


「子どもが生まれるからとかじゃないんですよ。」


「の割には、な〜んか焦ってるように見えるけど。」


「……。」




あさぎは俯いて顎を触り、黙って考え込むような仕草をした。




「白ちゃん先生になら、良いか……?」


「何の話?」


「……ええっと、笑わないでくださいね?」


「あったりまえよ!」


「じゃあ話しますけど


「ちょっと待った。」


「はい?」


「……先に笑っといて良い?」


「…………、は?」


「面白い話なら先に笑い倒しておいた方が最後まで真面目に聞けるかなって。」


「落語じゃないんですけど


「ええっ!?」


「……。」


「…………いや、2人きりになるやちょくちょく落語かましてくるあさぎちゃんも悪いから……!」


「それもそうか……。」


「で?真面目な話なんでしょ?……ちゃんと聞くわよ。これでも養護教諭なんだから♪」




白ちゃんはパイプ椅子に深く座り直した。




「そういえば養護教諭でしたね。」


「一言多いんじゃ……!」




あさぎも白ちゃんを真似てパイプ椅子に深く座り直した。




「えっと、もうすぐおか……、母の誕生日なので、何か喜んでもらえるような料理でも作ろうかと……///」




あさぎは手のひらを使って自分の襟足を掴むと目を伏せて頬を赤くした。




「それで『おふくろの味』……。」




白ちゃんは納得して深く頷いたが、少しの沈黙を経て間抜けな声を出した。




「へ?それなら娘の味でしょ?……逆じゃない?」


「だからその、作りたいのは私の味じゃないんです。」


「ふ〜ん?……深くは聞かないけど、私に聞くよりひいろちゃんやきはだちゃんに聞いた方が役に立つんじゃない?私なんかこんなんだし。」




白ちゃんは缶ビールを喉に流し込むジェスチャーをしてみせた。




「白ちゃん先生に聞きたいのは、作る側じゃなくて、食べる側としてというか……。」


「あ〜、なるほど。…………『なるほど』?私におふくろなんていたかしら……?」


「いるんですよ。」




白ちゃんは腕を組んでうんうん唸ると、踏ん切りがついたのか、背筋を伸ばして再びあさぎと向き合った。




「よし!なんであさぎちゃんが白久雪(しろひさゆき)の味を再現したいのかはわかんないけど、私で良ければ協力するわ♪」


「……やっぱり、まだ嫌いなんですか?雪さんのこと。」


「『まだ』も何も、私は未来永劫!白久雪を許すつもりはないわよ。」


「……。」


「ああ、ごめんごめん!ちゃんと協力はするから、ね?」


「……モーラ姉は、許しましたけど。」


「あの子はなんだかんだ懐が深いし、世渡り上手だからねえ。」




白ちゃんは窓の外のどこか遠くを見つめて深いため息をついた。




「……ま!それはそれとして、白久雪の味といえばなんだったかしらねえ……?」


「よく出て来たメニューとかあります?」


「白飯。」


「……。」


「ああ!?ごめんごめん、ちゃんと思い出すから……!」




白ちゃんはこめかみに指を突き立てギュッと目を瞑りしばし唸った。




「……ダメだ、無難なやつしか出てこない!?」


「無難なのでいいんですよ、おふくろの味なんですから。」


「そう?じゃあ無難なのだと……、お味噌汁は白味噌多めの合わせ味噌で、カツオ……じゃないわね。昆布の出汁が効いてて、豆腐は絹。小指の爪くらいの大きさのサイコロ型に切ってたと思うわ♪」


「うわ、めちゃくちゃ具体的……。」


「なんでちょっと引いてんのよ。」


「いや、その…………嫌いとか言ってるくせにめちゃくちゃ大好きじゃないですか。」


「嫌いなヤツが作っても美味いもんは美味いの……!ムカつくけど。」


「雪さんに聞かせたら狂喜乱舞しますよ?」


「あの絶対零度の雪女が狂喜乱舞!?……あさぎちゃん、面白い話にますます磨きがかかってきたわね♪」


「……。」


「ああ嘘嘘!そんな悲しそうな顔しないでって!?」


「……他に。」


「へ?」


「他、無いんですか……!」


「怒らなくても良いじゃない……。ええっと、」




白ちゃんは再びこめかみに指を突き立てギュッと目を瞑りしばし唸った。




「……卵焼きは出汁、たぶんみりん追加してる。めちゃくちゃうっす〜く焼いて転がしまくってる……ええっと、そうそう!京都の湯葉みたいな感じだったわね。緩くてフワッとした焼き加減だったわ♪」


「大好きじゃないですか。」


「飯だけはね……!」


「きはだに言わせたらガッツリ胃袋掴まれてて草ぁ!なヤツですよ。」


「た、確かに今考えればなんで店開かなかったのか不思議なレベルね……。」


「メインディッシュとかはあったんですか?」


「メインねえ……、」




白ちゃんは背中を丸めてよりいっそう唸った。




「今のところ白米と味噌汁と卵焼きなんですけど。」


「確かにちょっと寂しいわよね……。」


「ほら、頑張って思い出してください!」


「う〜ん…………、ダメね。」


「ここまで引くほど詳細に思い出してたのに!?」


「よく出てくるのは思い出せるんだけど、メインディッシュはコロコロ変わってたから味付けまではちょっと……。」


「子どもたちを飽きさせないようにめちゃくちゃ献立考えてくれてるヤツじゃないですか。」




あさぎの襟足が片方だけ、風もないのにヒラリと微かに揺れた。




「…………ただの気まぐれでしょ。」


「そうですかねえ……。」




あさぎの反対側の襟足がまた微かに揺れた。




「……。」




あさぎが落としていた視線をふと戻すと、険しい顔であさぎの顔を真っ直ぐ見つめる白ちゃんと目が合った。




「……どうしました?」


「ごめん、ちょっと話逸れるんだけど……。」


「なんでしょう?」




白ちゃんはおもむろにあさぎの襟足を揉みしだいた。




「……あの?」


「…………、やっぱりただの髪よね?」


「髪の毛じゃないのが頭から生えてたらホラーですよ。」


「そうよねえ……。たま〜に、あさぎちゃんの襟足が虫の触覚みたいに動いてる気がするんだけど……気のせいかしら?」


「きっ、気のせいですって!?ほら、こんな形状だし、頭の揺れが増幅されてるんですよたぶん……!」


「ふ〜ん……。」


「それよりもおふくろの味!思い出してください。」


「はいはい……。」




白ちゃんは再びこめかみに指を突き立てギュッと目を瞑りしばし唸った。




「……………………、やっぱダメ。覚えてる限りおんなじのが出て来た記憶が全く無い。」


「献立何千通りあるんですか……!?」


「……あの数学教師様ならチョチョイと導き出すんでしょうね。」




白ちゃんは頬杖をついて考えることを諦めた。




「諦めないでくださいよ!?普段のご飯がダメなら特別な日のヤツとか、ありませんか……!?」


「……な〜んでそんなに白久雪の味にこだわるのかわかんないけど、あとはモーラに聞くか、白久雪に直接聞けば?」


「う"……、そ、それはちょっと……。」


「はっは〜ん?」




白ちゃんは頬杖をついたままニヤニヤと口角を上げた。




「な、なんですか……。」


「さては、喧嘩でもしたなあ〜?」


「それは断じてないです。」


「まったまたあ〜、『お母さんの誕生日』にかこつけて仲直りしたい……なんて、あさぎちゃんも可愛いとこあるじゃない♪」


「仲直りできない人にだけは言われたくないです。」


「それは関係ないでしょう!?そもそも喧嘩なんてしてないし……!」


「さ〜あ、どうでしょう意地っ張りな白久せんせ?」




あさぎもニヤニヤと口角を上げて煽り返した。




「はぁ……。あさぎちゃんは良いお母さんに恵まれたからそんなことが言えるのよ……。」


「それはそうですね。」


「少しは謙遜せい。」


「だって私は、仲直りの口実なんか無くたって、お母さんの誕生日を心の底から祝福できますから。」


「……わかったわ。さっきのは取り消す、ごめんなさい。」


「わかればよろしい♪」


「なんで上から…………、あ。」


「?」


「……違うか。」


「いや話してくださいよ、気になるんですけど。」


「う〜ん……、おふくろの味って訳じゃないんだけど。」


「もうこの際何でも良いです。」


「そう?……じゃあ話すけど、『特別な日』で思い出したことがあって、


「おお……!」


「毎年クリスマスに出て来たケーキが、なんか不思議な味だったのよね〜。」


「え、まさかケーキまで手作り……!?」


「そんなわけないでしょ、普通に考えて。」


「良いから詳細を。」


「めっちゃ食いつくわね……!?まあ不思議な味って言っても、イチゴだったりチョコだったり、これも成人するまで一度たりとも被りはなかったんだけどね。」


「ケーキだけで20種以上……!?」


「すんごいわよねえ……。まったく、毎年どこまで買いに行ってたのやら。」


「お得意先があったんですか?」


「さあ?『買って来た』とは言ってたけど、どこで買ったかは頑なに教えてくれなかったわ。」


「手作り確定じゃないですか。」


「そんなことないわよ。家で食べる手作りケーキをわざわざフィルム巻いて箱詰めまでする馬鹿はいないでしょ?」


「…………、」


「なんで目ぇ逸らすの?」


「いや、不器用だなあと……。」


「不器用だったら湯葉みたいな卵焼き焼けないでしょ。認めたくないけど、白久雪は何でも器用にやってのける完璧超人様よ。……腹立たしい程にね。」




白ちゃんは立ち上がると大きく伸びをした。




「さあてと?私が知ってることは全部話したし、そろそろ解放してもらうわね。」


「え?」


「今日はケーキ買って帰ろーっと♪」




白ちゃんは荷物を手に取りドアノブに手をかけた。




「……あの!」


「なに?急に大声出しちゃって。」


「雪さんが買ってきてたケーキの味、まだ聞いてないです。」


「……ああ、そういえばそんな話だったわね。毎年違ったから原材料まではわかんないけど、スポンジからきな粉っぽい香りがしたのは覚えてるわ。……あと、ちょっと噛みごたえがあったかも。」


「大豆と……粉?」


「最後に食べたのなんて学生以来だから、確かなことは言えないけどね?……さ、ケーキケーキ♪」




白ちゃんは浮き足だって部室を後にした。




「ケーキかあ……。」




取り残されたあさぎはパイプ椅子の背もたれに全体重を預けて天井を仰いだ。




「おにぎりとはわけが違うよなあ……、はあ。」




しばらくボーッとした後、あさぎはテーブルに肘をついてスマホのトークアプリPINEを起動した。




「相談できる人、いるかなあ……。」




深いため息をつくと、あさぎもやがて立ち上がって部室を後にした。








あさぎ、きはだ(2)




あさぎ:起きてる?


きはだ:寝てる


あさぎ:ぐっどもーにんぐ


きはだ:あいむ、すりいぴんぐ


あさぎ:きはだ料理好きだったよね


きはだ:なんだい薮からスティックに


あさぎ:う〜ん、まあ……秘密の相談的な?


きはだ:くるしゅうない、話せ


あさぎ:ケーキ作れる?


きはだ:強盗か殺人すれば


あさぎ:刑期じゃなくて


きはだ:ま〜たまた難しいものを……

きはだ:お菓子はミリグラムの世界なんだよぉ?


きはだ:目分量でえいやっ!ってできる普段のご飯とは違うのさ


あさぎ:それだけ知ってれば充分か……


きはだ:お〜い聞いてるぅ?


あさぎ:師匠!私にケーキの作り方を教えてくださいっ!


きはだ:ど〜うどう、まずは落ち着いて訳を話すんだあさぎちゃん

きはだ:和歌で

あさぎ:おふくろの 思い出の味 再現し

あさぎ:生誕祝う 娘の真心


きはだ:振っといて なんなんだけど 少し引く

きはだ:文系オタク 渾身の返歌


あさぎ:やれと言われて 付き合ったのに

あさぎ:うわぁはあまりに あんまりだ


きはだ:唐突な都々(どどいつ)


あさぎ:聞いたからには 逃しはせんぞ

あさぎ:ケーキご教授 するまでは


きはだ:じゃあ今度のお休みにでもあさぎちゃん家で


あさぎ:うちはだめ おとなりいでて バレてつむ

あさぎ:わがともだちに ゆけるひはいつ


きはだ:はいはいうちでやりたいのね

きはだ:次のお休み1人だからそこで


あさぎ:さすがきはだ


きはだ:材料は用意してねぇ?


あさぎ:はい師匠!


きはだ:……突っ込まないからねぇ?

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