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スキル【エサ】発動~全モンスターが俺についてくる~  作者: 雨宮 徹


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最終話 世界を旅する、俺の料理

 ボルクスの一件から数日後、俺たちの屋台はさらに有名になった。あの元悪党が、人前で号泣しながら俺の料理を絶賛したことで、屋台は「魂の救済所」と呼ばれるようになったらしい。


「リョウ様、ボルクスさんが更生して、いまは市場の倉庫係として真面目に働いていますよ!」


 ルナが嬉しそうに報告してきた。


「人間にも効くんだな、俺の『エサ』は」


「効く、というより……影響を与えすぎるのです」


 アリスが冷たく訂正する。彼女は、市場で買った見慣れない魚の干物を、熱心に品定めしていた。明らかに、俺の料理の素材にしようとしている。


「さて、リョウ」


 アリスは魚を置き、真剣な目で俺を見た。


「私の監査期間は、今日で終わりだ。神界へ報告書を提出する」


 その言葉に、ルナの顔が青ざめる。


「えっ、契約解除は……」


「解除はしない。不可能だからだ」


 アリスは淡々と答えた。


「貴様のスキル【エサ】は、神格存在の『魂の渇望』を満たすことで契約を成立させる、前例のない特殊な『契約』スキルとして認定する。神界の規律を破ったのはルナのミスだが、この契約を覆す手段は、今のところ存在しない」


 アリスは一つ、ため息をついた。

「報告書にはこう書く。『リョウの契約は、ルナへの指導およびスキル監査を継続するという名目で、一時的に保留する』と」


「指導役、続ける気か?」


「当然だ。この契約が神界に与える影響を、最後まで見届ける義務がある。そして何より……」


 アリスは、そっと口元を隠した。


「貴様の料理が、神界の味に飽き飽きした私の唯一の楽しみになったからだ。指導役として、貴様が食欲という原始的な欲望から逸脱しないよう、厳しく見張らせてもらう」


 要するに、これからも飯を食わせろ、ということだ。素直じゃない監査官の言葉に、俺は思わず笑ってしまった。


「わかったよ。指導役。飯は毎日作ってやるさ」


 俺は屋台を締め、ルナ、アリス、そして足元にいるスライムのスイーツと並んで、交易都市ベルデの夜空を見上げた。


「リョウさん。これから、どうしますか? もう、村にも帰れません」


 ルナが不安そうに訊いてきた。


 俺は、懐から取り出した調理器具を撫でる。プロの魂が詰まった、俺の商売道具だ。


 俺は火事で死んだ。情けない終わり方だった。

 だが、この異世界で、俺はもう一度、火を扱うことを恐れず、誰かのために料理を作っている。神や、モンスターや、寂しい人間の心を、腹ではなく、魂から満たせる唯一の料理人として。


「そうだな」


 俺は、ルナとアリスの顔を見つめた。


「俺はプロの料理人だ。この都市だけじゃ満足できない」


 俺の心の中には、まだ見ぬ食材、まだ知らぬ調理法、そして、まだ満たされていない誰かの魂が存在している。


「俺のスキルは【エサ】だ。なら、この世界を旅して、あらゆる種族、あらゆる存在の『魂の好物』を見つけ出してやる」


 そう。俺の異世界での役割は、『世界中を旅して、皆を笑顔にするエサ係』 なのだ。


「交易都市ベルデを拠点にして、一旦ギルドに登録する。そして、世界一の料理人になるために、食材を探す旅に出るぞ。ルナ、アリス、着いてこい」


 「ご主人様、最高です!」とルナが飛び跳ねる。


 「やれやれ。手間のかかる契約者だ」とアリスは冷たく言いながらも、その目にはどこか高揚感が宿っていた。


 スライムのスイーツは、俺の足元で、ぷるん! と、力強く、賛同するように揺れた。


 ――こうして、元プロの料理人である俺は、二柱の神と一匹のスライムを連れ、世界中の食材を探す旅に出ることを決意した。


 次は、どんな珍しいモンスターを、どんな最高の料理でテイムすることになるだろうか。


 俺のおかしな冒険は、まだ、始まったばかりだ。

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