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勇者大量召喚による弊害について

作者: 鍋の地
掲載日:2025/12/18

『勇者召喚』が可能になり、『勇者大量召喚』が行われた。

だが、弊害もあり。

「やはり、誰も来ないね」

「はい」

「これでよかったのか、それは誰にも分からない。神様も、いなくなってしまったし。

まさか、世界が、こんなにも簡単に平和になるなんてね」

「すみません、神父様」

「いや、いいんだよ。

確かに、神様を信じる人はいなくなり、教会もなくなることになってしまった。

でも、世界は平和になったのだから」


静かな聖堂。そこにも、かつては信者がいた。

今は、神父と、シスターの少女のみ。


「それじゃあ、最後に、祈ろうか。神様はいる、そう思って」


『勇者召喚』

それが可能になり起こった、

『勇者大量召喚』


「勇者召喚できるのなら大量に召喚しようぜ! で、勇者たちに魔王を倒してもらおう!」

各国の王様は思った。

単純な話。召喚できるのなら1人だけじゃなく、たくさん召喚しよう。


勇者は大量に召喚され(全員が成功とはいかなかったが)、魔王はあっけなく捕縛され。

「…ずるくない?」

それを最期の言葉にし、ギロチンで処刑され。


「魔王がいなくなった! 世界が平和だ!」

人類は歓喜。


だが、『勇者大量召喚』による、弊害もあり。


神様を信じる人がいなくなってしまった。教会、なくていいんじゃね? と、皆が思うようになってしまった。


「だって、勇者がいるじゃん。勇者が一番偉い、神は要らない」

世間の思想が、それに。




「さて。

僕は、色々頑張るけど、君は、決まってるの?」

2人で祈った後。聖堂で、神父は聞く。

20代後半の神父。小さい頃から神のためだけに生きてきた。

「慣れた?」

心配そうに、神父は少女に聞く。

少女は、笑顔で、

「実は、もう決めているんです。いい所に行きます、これから。神父様が憧れるような所に」

満面の笑み。どこか、狂気じみたような。

「…そうか」

寂しそうな表情を神父はする。

「そうか。

じゃあ、鍵は、渡しておこうかな。

うん。僕にも行く勇気があればよかったな」


聖堂から出て、


「じゃあ、神父様、さようなら」

「今までありがとうね。

召喚されなければ、いや、何でもない。

本当に、ありがとうございました。君の考えだものね」




「ふう」

神父が去った後、彼女は聖堂に戻り、鍵を閉める。

誰にも邪魔されないように。

もっとも、神様がいなくなったこの世界では、聖堂に寄る人はいないだろうが。


「失敗の私には、行く所はない。

ここで死ぬしかないんだ。

神様を信じて、神様のいる所に行く。無宗教だったのに、この異世界で変わったな、私」


『勇者大量召喚』は行われた。

だが、失敗もあった。


『チート能力なし』

そんな、失敗。


『成功した勇者』は、優遇され、魔王を倒した。神様のいなくなった世界で、神様が受けていた扱いをされるだろう。


だが、


『失敗した勇者』は、役立たずだと追い出され、文字も言葉もわからないから買い物すらできず、最悪餓死。


「私は、無宗教だった。

でも、あの神父に、文字と言葉を教えてもらった。

そして、あの人は、神を信じていた。

だから、私は、死ぬまで神に祈る。好きな人が信じていた、だから私も信じる、それだけなんだ」


『失敗の勇者』は、微笑んで口にした。




数日後。

「そろそろ、なんだろうなあ。

お腹、空いたな。眠気もすごいし。

ああ、そろそろか。

数ヶ月前は普通の女子高生だったのに」


最期に、


「神様、あなたは本当にいるのですよね?

私、あの人が行きたかった所に、行ってもいいんですよね?」




ありがとうございました。

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