勇者大量召喚による弊害について
『勇者召喚』が可能になり、『勇者大量召喚』が行われた。
だが、弊害もあり。
「やはり、誰も来ないね」
「はい」
「これでよかったのか、それは誰にも分からない。神様も、いなくなってしまったし。
まさか、世界が、こんなにも簡単に平和になるなんてね」
「すみません、神父様」
「いや、いいんだよ。
確かに、神様を信じる人はいなくなり、教会もなくなることになってしまった。
でも、世界は平和になったのだから」
静かな聖堂。そこにも、かつては信者がいた。
今は、神父と、シスターの少女のみ。
「それじゃあ、最後に、祈ろうか。神様はいる、そう思って」
『勇者召喚』
それが可能になり起こった、
『勇者大量召喚』
「勇者召喚できるのなら大量に召喚しようぜ! で、勇者たちに魔王を倒してもらおう!」
各国の王様は思った。
単純な話。召喚できるのなら1人だけじゃなく、たくさん召喚しよう。
勇者は大量に召喚され(全員が成功とはいかなかったが)、魔王はあっけなく捕縛され。
「…ずるくない?」
それを最期の言葉にし、ギロチンで処刑され。
「魔王がいなくなった! 世界が平和だ!」
人類は歓喜。
だが、『勇者大量召喚』による、弊害もあり。
神様を信じる人がいなくなってしまった。教会、なくていいんじゃね? と、皆が思うようになってしまった。
「だって、勇者がいるじゃん。勇者が一番偉い、神は要らない」
世間の思想が、それに。
「さて。
僕は、色々頑張るけど、君は、決まってるの?」
2人で祈った後。聖堂で、神父は聞く。
20代後半の神父。小さい頃から神のためだけに生きてきた。
「慣れた?」
心配そうに、神父は少女に聞く。
少女は、笑顔で、
「実は、もう決めているんです。いい所に行きます、これから。神父様が憧れるような所に」
満面の笑み。どこか、狂気じみたような。
「…そうか」
寂しそうな表情を神父はする。
「そうか。
じゃあ、鍵は、渡しておこうかな。
うん。僕にも行く勇気があればよかったな」
聖堂から出て、
「じゃあ、神父様、さようなら」
「今までありがとうね。
召喚されなければ、いや、何でもない。
本当に、ありがとうございました。君の考えだものね」
「ふう」
神父が去った後、彼女は聖堂に戻り、鍵を閉める。
誰にも邪魔されないように。
もっとも、神様がいなくなったこの世界では、聖堂に寄る人はいないだろうが。
「失敗の私には、行く所はない。
ここで死ぬしかないんだ。
神様を信じて、神様のいる所に行く。無宗教だったのに、この異世界で変わったな、私」
『勇者大量召喚』は行われた。
だが、失敗もあった。
『チート能力なし』
そんな、失敗。
『成功した勇者』は、優遇され、魔王を倒した。神様のいなくなった世界で、神様が受けていた扱いをされるだろう。
だが、
『失敗した勇者』は、役立たずだと追い出され、文字も言葉もわからないから買い物すらできず、最悪餓死。
「私は、無宗教だった。
でも、あの神父に、文字と言葉を教えてもらった。
そして、あの人は、神を信じていた。
だから、私は、死ぬまで神に祈る。好きな人が信じていた、だから私も信じる、それだけなんだ」
『失敗の勇者』は、微笑んで口にした。
数日後。
「そろそろ、なんだろうなあ。
お腹、空いたな。眠気もすごいし。
ああ、そろそろか。
数ヶ月前は普通の女子高生だったのに」
最期に、
「神様、あなたは本当にいるのですよね?
私、あの人が行きたかった所に、行ってもいいんですよね?」
ありがとうございました。




